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障害者雇用で知っておくべき基礎知識5選(1)障害者基本法とは

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2021.2.18

ここでは障害者雇用に初めて挑戦する人事担当者のために分かりやすく、(1)障害者基本法(2)障害者雇用促進法(3)障害者総合支援法(4)障害者差別解消法(5)障害者権利条約の5つに絞り障害者雇用に関連する知識を法律と実態を照らし合わせながら紹介していきたいと思います。

今回は(1)障害者基本法について解説したいと思います。

執筆:中塚 翔大 Shota Nakatsuka

障害者の定義

まず日本における「障害者」の定義は何でしょうか?

〈障害者の定義〉

障害者基本法では、障害者の定義(第2条)において以下としている。
『身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。』


障害者権利条約では、目的規定(第1条)において、以下としている。
『障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な障害を有する者であって、 様々な障壁との相互作用により他の者と平等に社会に完全かつ効果的に参加することを妨げられることのあるものを含む。』


意外と明確な定義を知らない人も多いのですが、
障害者の定義は、以下2つに該当する場合に言います。

  • 長期的な身体障害、知的障害、精神障害(発達障害含む)、その他の心身の機能障害がある者
  • 障害や社会的障壁により、日常生活または社会生活・経済活動において継続的に制限を受ける者

各法律により障害者のその対象範囲は異なりますが、前提としての定義は知っておくと考え方や社内での説明において混乱せずに済むかもしれません。

医学モデルと社会モデル

また、近年、障害の「医学モデル(個人モデル)」「社会モデル」という2つの視点で障害を捉えるケースもあります。

■医学モデル(個人モデル)
障害や社会的障壁による不利益・困難の原因は、障害、疾病、外傷、その他の健康状態により直接生じた個人の心身機能に原因があるという考え方です。個人の心身機能に原因を置くため、医療による治療やリハビリなど軸は個人となります。
そのため、『障害』の『害』の字は個人を差別すると言われ『障がい』と表記するケースが増えています。

■社会モデル
障害や社会的障壁による不利益・困難の原因は、障害の無い人を前提に作り出された社会(モノ、環境、人的環境等)に原因があるという考え方です。そのため、社会が作り出した障壁を取り除くのは社会の責務であるとして軸は社会全体となります。  
この場合、『障害』の『害』の字は社会の害となるため、そのまま『障害』と表記しています。

障害者雇用を捉える視点により、言葉の活用方法も異なるため、この点も抑えておくと良いでしょう。

それでは、いよいよ具体的なポイントに絞り法律を見ていくことにしましょう。

(1)障害者基本法

障害者基本法では、障害の有無は関係なく、全ての国民は平等に基本的人権を有し尊重されるとしています。

そして、障害者の自立及び社会参加の支援などに関する基本原則を定め、国や地方公共団体などの責務を明確化するとともに、総合的かつ計画的に支援施策を推進することを目的に共生社会の実現を目指すことを目的としています。

障害者雇用に取り組む人事担当者は、まず障害者基本法の目的を理解すると共に以下2つの項目も抑えておくと良いでしょう。

全ての障害者は、社会の一員として社会、経済などあらゆる分野への参加機会と選択の機会が確保され、地域社会における共生を妨げられてはいけません。

また、手話を含む言語など意思疎通の手段及び情報の取得、利用のための手段について選択の機会の確保と拡大が求められています。

引用元:※第一章 総則(地域社会における共生等)第三条


国及び地方公共団体は、民間を含む全ての機関が障害者の雇用を促進できるように、障害者の優先雇用に必要な施策を講じなければいけません。

また、事業主は、障害者雇用において正当な評価と適切な雇用の機会を確保し、個々の特性に応じた適正な雇用管理と共に雇用の安定を図るよう努めなければならず、国及び地方公共団体は、この機会の確保のための設備・環境などに要する費用の経済的負担や施策を講じる必要があります。

引用元:※第二章 障害者の自立及び社会参加の支援等のための基本的施策(雇用の促進等)第十九条


いかがでしたでしょうか?

障害者雇用といっても、ただ採用すれば良いというものではありません。

障害の有無に限らず、機会の均等を図り、正当な評価と雇用の安定を目指し、社内の多様性を実現することは、誰にとっても働きやすい会社を作ることに繋がります。

その結果、従業員の満足度が上がり、組織・人材のイノベーションに繋がり、ステークホルダーに対する企業の市場価値を高めていきます。

障害者雇用に対する知識を学ぶだけでなく、目的や意義を社内へ浸透させるために、
次回は、障害者雇用の根幹をなす障害者雇用促進法を見ていくこととしましょう。

1985年生まれ。多様性を推進するプロジェクト『パラちゃんねる』の管理人。人材派遣・人材紹介など就職・転職支援に精通し、延べ1万人以上のキャリア支援の経験を持つ。耳で聞くラジオ、目で読むコラム、自由な出会いの求人サイトを運営し、障害のある方々含め多様性の浸透に向け活動を続けている。

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