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障害者雇用で知っておくべき基礎知識5選(2)障害者雇用促進法① ~障害者雇用率制度~

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2021.3.1

ここでは障害者雇用に初めて挑戦する人事担当者のために分かりやすく、(1)障害者基本法(2)障害者雇用促進法(3)障害者総合支援法(4)障害者差別解消法(5)障害者権利条約の5つに絞り障害者雇用に関連する知識を法律と実態を照らし合わせながら紹介していきたいと思います。

今回は前回の(1)障害者基本法に続き、(2)障害者雇用促進法の中でも根幹となる障害者雇用率制度について解説したいと思います。

執筆:中塚 翔大 Shota Nakatsuka

障害者雇用促進法は大きく分けて4つ

障害者雇用促進法は、障害者の均等な雇用機会の提供と待遇の確保含めた雇用の安定、能力を有効に発揮するための措置など職業生活において自立を促進することを目的としています。

大きく以下4つのカテゴリーで構成されています。

  • 職業生活における自立を図るための職業リハビリテーション
  • 障害者の雇用を義務とする障害者雇用率制度
  • 差別の禁止及び合理的配慮の提供
  • 障害者雇用の経済的側面のアプローチである障害者雇用納付金制度

ここでは特に人事担当者が知っておくべき障害者雇用率制度について解説したいと思います。

障害者雇用率制度とは

障害者雇用率制度は、障害者が一般労働者と同じ水準で常用労働者となり得る機会を確保することを目的に常用労働者の数に対する割合(障害者雇用率)を設定し、事業主等に障害者雇用率の達成義務を課しています。


障害者雇用率制度の概要


2021年3月1日以降、従業員数43.5人以上の組織に対しては、

【民間企業:2.3% 国、地方自治体:2.6% 都道府県等の教育委員会:2.5%】

の障害者雇用における法定雇用率が義務付けられています。

混乱しがちな点として、障害種別問わず雇えば良いというわけではなく、障害種別・度合い、就業形態によってカウント数が変化することにあります。

障害者雇用率制度に適用される障害者の範囲

1:身体障害者の範囲
身体障害者福祉法施行規則別表第5号の身体障害者程度等級表の1級から6級までに掲げる身体障害がある者および7級に掲げる障害が2つ以上重複している者。

原則として、身体障害者手帳によって確認が行われるが、手帳を所持していない場合は医師の診断書によって確認を行うとされています。
※身体障害者福祉法

障害の種類には、視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害、音声・言語機能障害、そしゃく機能障害、肢体不自由、心臓機能障害、じん臓機能障害、呼吸器機能障害、ぼうこう又は直腸機能障害、小腸機能障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害、肝臓機能障害があります。


2:知的障害者の範囲
児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医又は障害者職業センター(以下、「知的障害者判定機関」)によって知的障害があると判定された者。

原則として、療育手帳(都道府県により名称が異なる、東京都「愛の手帳」など)によって確認が行われるが、手帳を所持していない場合は知的障害者判定機関の判定書によって確認を行うとされています。


3:精神障害者の範囲
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている(発達障害も含む)、または、統合失調症、そううつ病又はてんかんにかかっていいて、症状が安定し、就労が可能な状態にある者。
※精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第45条第2項

原則として、精神障害者保健福祉手帳によって確認が行われるが、症状が安定し、就労が可能な状態にあるか否かの判断のため、主治医の診断書、意見書が必要な場合もあります。

手帳を所持しない場合も同様に主治医の診断書、意見書によって確認を行うとされています。


4:重度身体・知的障害者の範囲
重度身体障害者の範囲は、身体障害者福祉法施行規則別表第5号の身体障害者程度等級表の1級または2級に該当するか、3級に該当する障害を2つ以上重複して有することによって2級に相当する障害を有する者とされます。

重度知的障害者の範囲は、知的障害者判定機関により知的障害の程度が重いと判定された者とされます。

障害者実雇用率のカウント方法

実雇用率の算定において注意点としては、対象となる労働者は、無期・有期契約問わず、1年を超えて継続した就労が見込まれる者、または既に1年を超えて就労している者が含まれます。そのため、雇用形態問わず、契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなども対象になる点を予め留意しておきましょう。

障害者実雇用率を算定するためのカウント方法は、前述の障害者の適用範囲に該当し、その該当する労働者の就業条件によりカウント数が異なってきます。

  • 短時間以外の常用雇用労働者を1人としてカウントし、20時間以上30時間未満の短時間労働者は、1人を0.5人としてカウントします。
  • 重度身体障害者、重度知的障害者は1人を2人としてカウントし、短時間の場合は、1人とカウントします。

障害者雇用率制度の概要


「常用労働者」とは、1週間の労働時間が30時間以上の方、「短時間労働者」とは、1週間の労働時間が20時間以上30時間未満の方を指します。なお、それより1週間の労働時間が短いアルバイトやパートの方などはカウントしません。

ただし、精神障害者の短時間労働者でも以下の2点の両方を満たす方については1人あたり「0.5」人ではなく「1人」とみなします。

  • 新規雇入れから3年以内の方、または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方
  • 2023年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した方

障害者実雇用率を計算してみよう

法定雇用障害者数と実雇用率の計算式は以下の通り、

  • 法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数)=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率(2.3%)
  • 実雇用率=障害者である労働者数+障害者である短時間労働者数×0.5 / 労働者数+短時間労働者数×0.5

それでは、実際に具体例をもとに障害者実雇用率を計算してみましょう。


・民間企業
・常用労働者数100名、短時間労働者数100名
・30時間以上の身体障害者1名、20時間以上30時間未満の精神障害者3名

1:法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数)
(常用労働者数100名+短時間労働者数100名×0.5)×障害者雇用率2.3%=3.45
小数点以下の端数は切り捨てのため、障害者の雇用義務数は『3』となる。

2:実雇用率
(障害者である労働者数1名+障害者である短時間労働者数3名×0.5)/(常用労働者数100名+短時間労働者数100名×0.5)=1.66%


まとめ

いかがでしたでしょうか?

「企業は人なり」

法定雇用率は企業の障害者雇用を促進し、多様性のある社会を作るための起爆剤になり得ます。しかし、数字を使った計算式や目標設定は、達成することのみに囚われ、本質を見失うという危険性もあります。

数字に囚われた採用戦略は、短期的には法定雇用率達成という見栄えを獲得できるかもしれませんが、長期的には社内トラブルや離職率の増加を招き、企業の生産性の低下を招くきっかけとなりますので、まずは法律を理解し、本質を理解した上で、採用計画を立てるところから始めてみるのはいかがでしょうか。

1985年生まれ。多様性を推進するプロジェクト『パラちゃんねる』の管理人。人材派遣・人材紹介など就職・転職支援に精通し、延べ1万人以上のキャリア支援の経験を持つ。耳で聞くラジオ、目で読むコラム、自由な出会いの求人サイトを運営し、障害のある方々含め多様性の浸透に向け活動を続けている。

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