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障害者雇用で知っておくべき基礎知識5選(4)障害者差別解消法とは

~不当な差別的取り扱いの禁止および合理的配慮の提供~

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2021.5.15

ここでは障害者雇用に初めて挑戦する人事担当者のために分かりやすく、(1)障害者基本法(2)障害者雇用促進法(3)障害者総合支援法(4)障害者差別解消法(5)障害者権利条約の5つに絞り障害者雇用に関連する知識を法律と実態を照らし合わせながら紹介していきたいと思います。

前回は(3)障害者総合支援法について解説しました。今回は、(4)障害者差別解消法について解説したいと思います。

執筆:中塚 翔大 Shota Nakatsuka

障害者差別解消法とは

障害者差別解消法は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、障害の有無にかかわらず、個人としての尊厳にふさわしい日常生活または社会生活を営む権利があることを前提に、障害を理由とする差別の解消を推進し、誰もが分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指しています。

※正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律

参考資料:内閣府|障害者差別解消法リーフレット

この法律では、共生社会の実現を目指し社会への参加を制約している社会的障壁を取り除くことを目的に以下2点について定めています。

  • 不当な差別的取り扱いの禁止
  • 合理的配慮の提供

不当な差別的取り扱いの禁止

障害者差別解消法では、行政機関や事業者が障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由としてサービスの提供を拒否すること、サービスの提供に当たって場所や時間帯などを制限すること、障害のない人にはつけない条件をつけることなどが禁止されています。

仮に正当な理由があると判断した場合は、障害のある人にその理由を説明し、理解を得るように努めることが求められます。

行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

引用元:行政機関等における障害を理由とする差別の禁止 第七条


不当な取り扱いの具体例には、

  • 受付の対応を拒否する
  • 本人を無視して介助者や支援者、付添人にだけ話しかける
  • 障害者向け物件はないと言って対応しない
  • 保護者や介助者が一緒にいないとお店に入れない
  • 障害を理由とした労働契約の変更や終了を迫る

また、正当な理由に相当するか否かについては個別の事案ごとに障害者、事業者、第三者の権利利益(安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止など)および行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持などの具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要とされています。

▼障害者雇用促進法に定める障害者差別禁止指針はこちらをチェック

合理的配慮の提供

障害者差別解消法では、行政機関や事業者に対して、障害のある人から社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としていると意志が伝えられた時、負担が重すぎない範囲で対応することが求められています。

仮に過度な負担があると判断した場合は、障害のある人にその理由を説明し、その他の提案も含めて、話し合い理解を得るように努めることが求められます。

行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。

引用元:社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備 第五条


合理的配慮の具体例には、

  • 段差がある場合にスロープなどを使って補助する
  • 障害特性に応じて座席を決める
  • 意思を伝えあうために絵や写真のカードやタブレット端末などを使う
  • 筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーションを使う

また、過重な負担に相当するか否かについては個別の事案ごとに具体的場面や状況に応じて以下の要素を考慮した上で、総合的・客観的に判断することが必要とされています。

  • 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
  • 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
  • 費用・負担の程度
  • 事務・事業規模
  • 財政・財務状況

▼障害者雇用促進法に定める合理的配慮指針はこちらをチェック

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今まで対応していた行為が不当な取り扱いに含まれていたことに気づく方も多いのではないでしょうか。

会社のマニュアルに従っていた、前任者に言われた通りに対応していたなど従来の流れに疑いを持つことなく悪気なく対応されている方がほとんどかもしれません。

誰もが分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のためには、まずは障害者差別解消法を改めて確認いただき、社内規定・マニュアルの見直しから始めてみてはいかがでしょうか。

1985年生まれ。多様性を推進するプロジェクト『パラちゃんねる』の管理人。人材派遣・人材紹介など就職・転職支援に精通し、延べ1万人以上のキャリア支援の経験を持つ。耳で聞くラジオ、目で読むコラム、自由な出会いの求人サイトを運営し、障害のある方々含め多様性の浸透に向け活動を続けている。

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