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障害者雇用枠なのに「車いす不可」ばかりだった17年前の転職活動

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2021.12.16

高校卒業後、就職先が決定し、夢だった一人暮らしを開始しました。しかし、当時の職場が一年間の雇用契約だったので、次の仕事を見つけるため、就職活動が続きました。私は障害者雇用枠の求人を中心にチェックをして面接を受けようと思っていたのですが「車いす不可」の企業が多く驚いたことがありました。今回は、当時のことについて自分の気持ちをまとめてみようと思います。

執筆:佐々木 美紅 Miku Sasaki

私は脊髄性筋萎縮症という、生まれつきの病気のため、電動車いすで生活しています。

脊髄性筋萎縮症とは、体幹、腕、脚など全身の筋肉を動かす脊髄の細胞に異常があり、筋力が低下していく進行性の難病です。

養護学校を卒業してから初めて就いた仕事は契約期間が一年間と決まっていました。私は働き始めてすぐに転職活動を始めました。


ハローワークに行って障害者雇用の求人票をチェック

初めての職場の勤務時間は15時までだったため、仕事が終わってからハローワークに行き、求人票をチェックすることがありました。

私の勝手なイメージで「障害者の求人はあまり多くないだろう」と思っていたのですが、ハローワークに行くと100件ほどありました。

これなら、理想の仕事をすぐに見つけられるかもしれない!

期待に胸を膨らませて求人を見てみると、ほとんどが『車いす不可』と書かれて「障害者求人ってなんぞや?」と思ったのです。

気になった私は窓口で障害者雇用について聞いてみました。

「車いすだと面接すらしてくれないところもたくさんあるのですね。」

「ええ、職場に車いす用のお手洗いがなかったり、事務所の中が狭くて通路が通れなかったり、なかなか面接を受けられる会社が少ないのです。でも諦めずに頑張りましょう。」

担当してくれた方は、私のことを励ましてくれました。

今ではテレワークなど、車いすでも働ける環境が増えていますが、 私が就職活動をしていた17年前は、まだまだ少なかったように思います。

障害者求人というのなら、様々な病があることを想定してほしい。
しかし、物理的に厳しいのだから、仕方がないのかもしれない。
もし、車いすを使わない病気であれば、選択肢が広がったのかもしれない。

様々なことを想像しながら、悔しい気持ちになることもありました。

障害者雇用の合同面接会

その当時、障害者雇用の合同面接会に参加したことがありました。いわば、集団お見合いです。

合同面接会では、車いすユーザーでも面接を受けさせてくれる企業もありました。そこでは、5名の応募者がいる中で、電動車いすを使っているのは私1名だけ。その他は、ほとんど歩ける方ばかりでした。パッと見では、かなり障害の軽そうな方もいました。

(見た目だけで判断しているので、実際はどうだったかわかりませんが……。当時の私はそのように感じておりました)

私の面接は数十秒で終わってしまったのですが、障害の軽そうな方は何十分も話をしており、その時、せっかく「車いす可」の会社なのに、 私の障害が重いから話を聞いてくれないんだ。」と感じて、落ち込んでしまいました。

また、当時の私は、「自分はハンデのある体だから、なかなか採用してもらえないんだ」とマイナス思考に陥っていたように思います。

障害者雇用をしている企業でも建物のバリアフリーが整っているとは限りません。就職活動で上手くいかないことが続く中で、私は「自分が働く上で外せない条件は何か」を、改めて洗い出してみることにしました。

たとえば、下記のような条件です。

  • 車いす用のお手洗いがある
  • オフィス内が車いすで通れる幅である
  • パソコンの仕事を希望する

条件をクリアしている職場、仕事内容であれば、障害者枠でなくてもいいのではないか。条件をこの3つに絞れば、一般枠の求人にもあるかもしれない。

自分にも一般枠で働けるチャンスがあるのではないかと思うようになりました。

実際に一般枠での応募を試みたこともあったのですが「配慮ができない」との理由で面接を受けさせてもらえないことが多かったです。

もしかしたら、その時にもっと頑張っていれば、面接までこぎつけられる会社もあったかもしれません。私は「病気のせいでうまくいかない。もう、これ以上傷つきたくない」と、再び障害者雇用の求人に絞って仕事を探すことにしました。

できないことを嘆いても仕方がない

やっと私が働けそうな環境の仕事を見つけても、簡単には合格できませんでした。たくさんの方が応募して採用人数はたったの1~2名。企業からの不採用通知が届くたびに胸が痛くなりました。

この時ばかりは、自分が車いすに乗っていることに劣等感を覚えました。もし障害があったとしても歩くことができたら仕事の選択肢が広がるだろうに。

しかし落ち込んでいても仕方がないので、次から次と面接を受けました。

面接に落ち続けて11ヶ月が経過し、仕事の契約期間は残り一か月まで迫っていました。私は「早く仕事を見つけなければ。体が動くうちは少しでもできることをやりたい。絶対に就職先を見つけたい!」という強い気持ちが湧き上がっていました。

そして、ついに採用してくれる会社を見つけたのです。

まとめ

私は障害者求人でも「車いす不可」の文字を目にして、「自分の体がハンデになって就職活動がうまくいかない」と思い込んでいました。今振り返ってみると、不採用の理由が障害だけだったのかはわかりません。

採用通知を受け取った時、自分の心は変わっていたと思います。「絶対に働きたい」という強い気持ちで面接に挑んでいました。

できないことを嘆くのではなくて、やれることを精一杯頑張れるほうが、いいかもしれない!そんな気持ちになっていました。

当時は、自分のやりたいこととできることがどこまで一致しているのか、うまく理解できていなかったのかもしれません。企業の障害者雇用の状況も今とは違いました。今のほうが間口が広がっていると聞き、あのときの気持ちで今の障害者雇用に臨んでいたらどうだったのだろうと思うこともあります。

現在の私は、病気が進行してしまい、一般就労で働くのは厳しい状態です。しかし、自分のできることを探して、ここにたどり着きました。文章を通じて社会とつながれていることに、心から感謝しています。

インターネットが発達した時代なので、これからも自分の身体と相談しながら、社会の役に立てるようなことをしていきたいと考えています。

脊髄性筋委縮症のため、電動車椅子。コミュニティFMラジオで番組を担当。十三年務めた旅行会社で、通勤とテレワークを経験。障害者の就労、恋愛、結婚、アルコール依存症の母と過ごした日々などを、発信。体は動かないが世界とつながりたい。NHK障害福祉賞優秀賞。ライターとして執筆にも力を入れている。

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