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マイノリティを、そして人を「理解する」ということ。

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2021.12.22

発達障害の有病率はいろいろな説がありますが、だいたい数%前後と言われています。本来ならば職場に一人か二人、いてもおかしくありません。

それでも、わたし自身が発達障害に気づいて意識しだしてから、リアルで会う人の中に発達障害の人を見たことがありません。

執筆:いりえ(北橋 玲実)

ここ数年で発達障害そのものの認知度は少しずつ深まっているように感じます。テレビでもSNSでも、この単語自体は以前より取り上げられやすくなったように感じます。

一方で、空気や暗黙の了解を理解できない人に対して「あれは発達障害だ」と言ってみたり、周囲の迷惑をかえりみず感情の赴くままに他人を振り回す人に対しても「アイツはアスペ」とか言ってしまう。

このように、発達障害という言葉ばかりが独り歩きし、「障害」という名称を濫用して他人を蔑視するときのラベルとして用いられる例も見受けられます。

ひと口に発達障害とは言えど、さらには発達障害にふくまれるASD(自閉症スペクトラム)という疾患が同じだとしても、その人の特性や課題は本当に様々です。

障害手帳の等級もばらつきがありますから、日常生活にどの程度の「障害」や本人の困りごとが出ているかどうかは本当に様々です。

わたし自身が発達障害の方向けのサービスを運営していることもありますが、同じ「ASD」をお持ちの方でも、「他人の気持ちよりも自分が言いたいことをまとめるほうに頭を使ってしまい、コミュニケーションに問題を起こしてしまう」という方もいれば、「人の顔色を気にしすぎて、コミュニケーションそのものの課題は大きくないが健常者より圧倒的に疲れやすい」という方もいます。

一般的にASDはコミュニケーションに障害があり、くだけた言い方をすると、空気が読めない、人の気持ちが分からない、集中しすぎてしまう、といった日常の課題を抱えることが多くあります。

それでも、それぞれの課題がどの程度出るかも全く違いますし、本人がそれに対してどう対処するかも全く違うものになり、結果として周囲からの見え方もまさに十人十色、なのです。

ですから先ほどの例のように、同じASDであっても、コミュニケーションにどの程度課題を抱えているか、そして周囲からどの程度「こいつ障害者だな」と思われやすいか、ということも全く違います。

ちなみに、わたしは発達障害ということをカミングアウトしたときに、「そうは見えない」と言われることの方が多いです。

ですがこれは全く自慢にもならないことで、それだけこの障害を必死こいて隠蔽し、健常者のように擬態して過ごす方法を何とか身につけてきた、ということでもあります。

このように過ごしてきた発達障害者は、生まれてからずっと「人と違うから直せ」というプレッシャーにさらされ続け、しばしば二次障害としてうつ病、愛着障害などの精神疾患を併発しやすくなるリスクもそれだけ大きくなります。

こういった背景の中で、「発達障害」という単語を厄介者のラベルとして気安く用いられる際には、これまで述べてきたような、「発達障害者がそれぞれもつ個別性」が無視されていることは明らかです。

もちろん、「発達障害」という言葉が知られることは素晴らしいことです。

ですが、この言葉の持つ背景を充分に理解せず、時によってはこの言葉の語感のみで、「アイツは発達」という使われ方をすることは、当たり前ですが当事者も医療者も求めていない状況です。

この単語自体はあくまでも疾患の名称ですが、これまで述べてきたようにそれを抱えるのは複雑さを極めた人間という生き物です。

一方で、この「発達障害」という言葉は、本人の特性や性格、そして環境とも相互に関わりながら発現する特性を、非常に簡易的に言い表しているにすぎません。

だからこそ、実際には、その短い単語からは想像のしようもないほどの複雑さをはらんでいるのが、この「発達障害」というものなのだと、当事者として実感を深めています。

そして、これは発達障害というほんの小さな一分野のみに言えることではありません。

普段接している(発達障害がある/なしにかかわらない)あらゆる人との関係構築の上でも大きく関わってくることのように感じます。

確かに、発達障害、ASDといった特性や、わかりやすい例では血液型占い、動物占いのような人にラベルをつけることで相手に対する理解を深めることができるケースも非常にたくさんあります。

ですが、それが行き過ぎてしまい、そのラベルばかりに気をとられて一人一人の特性や感情、そして性格に目を向けることができなければ、本来あるべきコミュニケーションや関係構築は難しくなるはずです。


どんな人も、「理解されたい」「承認されたい」と思うのが人間という生き物。

だからこそ、相手を「理解」するため、そして相手の背景を推察してその努力を「承認」するために、ラベルという便利な手段を使う人が増えていけば、今よりももっと生きやすい人が増えるはずです。

そして、発達障害などのマイノリティの方の理解が深い環境が増えていくことを願ってやみません。

いつでも、なんでも、誰でも肯定するアスペ。Estlaughtive代表。自己肯定感育成スクールを通して「『生きづらい』を乗り越えてありのままに生きる」ための考え方を拡散中。その他にもコーチング、コミュニティ、講演会の出演、経営コンサルを行う。著書2冊はそれぞれAmazon6、7部門ベストセラーとなった。

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