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自分で発達障害当事者会を立ち上げてみた

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2021.12.27

以前のコラムでも少し触れてきたが、今回は自分が発達障害当事者を立ち上げたことについて取り上げてみたいと思う。

僕は2018年12月に発達障害当事者会『発達ワークスぎふ』を立ち上げた。

大体2カ月に1回のペースで、JR岐阜駅直結の公設の会議室を中心にこれまで10回近く細々ながら開催している(うち2回はzoomでの開催)。

執筆:マーチン Martin

そもそも何故自分が発達障害当事者を立ち上げようと思ったか?

社会人2年目に仕事がボロボロな原因に発達障害(ADHD)が関係していると分かり、メンタルクリニックに通う傍ら、社会人でADHDという同じ境遇の人が近くにいないかネットで探していた。

すると、定期的に開催している大人向けの発達障害当事者会なるものを発見し、すぐさま参加表明の連絡を主催者に送った。とにかく藁にもすがる気持ちだった。


一般的には、仕事の悩み相談が出来る相手に職場の同期という存在がいる。

僕の場合は近隣の支店に2人の同期がいた。1回集まってご飯も食べた事もあるが、その2人には仕事の悩みは退職の最後まで打ち明けられなかった。

同期と話したり、支店の先輩から伝わってくる同期の話を聞いているうちに、自分だけ明らかに仕事でのミスのレベルが低すぎるからである。

契約取れなくて…とか、上司からのプレッシャーがキツくて…ならまだしも、

「また、必要かどうかの確認もせずに書類をシュレッダーかけちゃってさー」
「こないだも処理忘れが発覚しちゃってさ、これで5回目かな?そしたら、本店から偉い人が叱りに来てたみたいでさー」

今もこれを書いていて、そりゃ恥ずかしくて同期に言える訳がないと思う(苦笑)。


当事者会で聞きたいことは山ほどあった。

  • ミスを繰り返さないためにはどんな対策をしているの?
  • うっかりミスやタスク漏れの防止策を教えて欲しい
  • ミスを引きずってクヨクヨしてしまうが、どんな心持ちでいるか?
  • みんなどう障害と折り合いを付けながら働いているのか?
  • どんな仕事が向いてるのか?

何より同じ境遇の人たちに苦しさ・働きづらさを肯定して欲しいまでは言わないにしても、否定せず聴いて欲しかった。

発達障害の話は、話す相手を間違えると余計にストレスを抱えしてしまう危険性を孕んでいる。

「気のせいだよ」
「誰にでもあるよ」

これはまだ良い方で、そういうことじゃないんだよなぁ、とモヤモヤ思いながらも、

「そうだねー。聞いてくれてありがとね!」

なんて当たり障りなく返事を返して、話を別の方向へと切り替えられるが、人によっては

「ミスをするのは気持ちが入っていない証拠」
「出来ない事を障害のせいにするなよ」

意を決して話しただけに、その返答が重くのしかかるし、ときにはそれが説教にまで発展してしまうことも。とてつもないカウンター攻撃である。

こんなことなら話さなきゃ良かったよって、そんな事何回でもあった。

自分は、ネットの場では発達障害者であることをオープンにして発信をしているが、リアルでは隠していることの方が多い。

自衛のために発達障害を隠しているのだ。

世の中、みんながみんな発達障害に理解・寛容とは限らない。発達障害に無理解や否定的な人もいる。性善説でいると痛い目をみるから、というか、痛い目に何度もあってきている。

だから、発達障害を恥じるというより、オープンには慎重に慎重を重ねている。

当事者会に話を戻す。参加した当事者会では詳細は思い出せないが、結構しゃべったし、聞いてもらえた。

障害について、否定や非難されずに心置きなく安心して話せたことには満足したが、もちろん1回の参加だけでは全て解決できる訳もなく、その日は終わった。

その後も2、3回ほど参加して、結果として精神保健福祉手帳を取得に踏み切る事ができた。

それは収穫だったと思う。その後は支援者の方との繋がりが本格的に出来たり、当時住んでいた実家から当事者会の会場まで片道車で1時間以上もすることから、次第に参加することが減っていった。

それから、5年以上が経った。

僕は障害者雇用で再就職して5年目に差し掛かり、結婚して父親となっていた。ある程度仕事のペースにも落ち着いてきて、ふと考える。

自分が悩んでいる「発達障害」の当事者への支援や助ける場を作りたい。

初めて参加した時の自分の様に行き詰まっている人の力になりたい。

「今度は自分が助ける番になろう」なんて言うと格好つけすぎだ。

でも、まだまだ自分としては、発達障害について言いたいことも、情報交換したいことも山ほどある。

それに5年経っても、近場に発達障害当事者会が無い。それなら自分で作ろうと決め、発達障害当事者会を立ち上げた。

第一回の当事者会の告知はTwitterを中心に積極的にしたつもりだ。

当事者会当日、開始5分前になっても誰も来る気配もない。それから10分経ち、20分経ち30分経ち…。

いやいや。

まだまだ。

もう少しだよ。

来るよ、必ず。

おーい、誰か来てくれー!!!!

結局2時間の当事者会で参加者は0人という散々なスタートになってしまった。

最悪だ(笑)。

それでも、心折れずに2回目も懲りずに開催したのが良かった。

2回目は5人近く参加してくれて、それ以降はコンスタントに7,8人は開催すれば来てくれるようになった。

参加者からも、発達障害に対しての日常生活や働く上での辛さを心置きなく打ち明けられる場を提供してくれたことに感謝してもらえて、立ち上げた甲斐があった。

自分としても、情報交換や気兼ねなく発達障害について話せる空間が地元に作ることができて本当に良かったと思う。

いつまで続けるかは分からない。でも、気持ちと時間が許す限りは参加してくれた人たちに寄り添いながら続けていきたい。

うな垂れて心身共にボロボロになっていたあの頃の自分と同じような境遇で当事者会に参加した人に、少しでも希望や参考となって欲しいから。

1989年生まれの33歳、生粋の岐阜県民。社会人2年目の時に発達障害(ADHD/ASD)と診断され、障害者雇用にて再就職。8年間勤務後、障害者の就労支援職に従事している。2019年に居場所作りや情報共有の場として岐阜市にて発達障害当事者会「発達ワークスぎふ」を立ち上げ、私生活では二児の父として、色々しくじりながらも奮闘中!!

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