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障害者雇用で働く2つのメリット

合理的配慮と障害者雇用枠(法定雇用率)

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2021.2.17

就職したいと考えている障害者の方にとって、障害者雇用を選ぶ理由とは何でしょうか?障害者雇用のメリット・デメリットを整理しました。ぜひ、これからの就職活動・転職活動にお役立てください。

執筆:佐々木 一成 Kazunari Sasaki

はじめに

企業で働きたいと考えている障害のある方にとって、障害者雇用で企業に就職するのか・障害のない方々と同様に一般枠で就職するのか、その選択に悩まれている方も少なくありません。

見た目だけでは障害者だと分かりづらい方や、障害を負ったばかりで自身の障害を受け入れられなかったり、障害者に関する制度や情報をあまり持っていなかったりという方は、その悩みが大きいものです。

今回は、障害者雇用で働くメリットについてまとめました。シンプルに、メリットは2つあります。

合理的配慮が受けられる

1つ目は、合理的配慮が受けられるということです。

合理的配慮とは、障害のある方が、障害が理由となって起こる困りごとや不便なことなどを企業側ができうる範囲で工夫や改善、配慮していくことをいいます。聞き馴染みがない方もいるかもしれませんが、障害者雇用の観点で必ず知っておきたいことです。

目の不自由な方がパソコンを使うときに音声読み上げソフトを使ったり、車いすの方が出勤時に時差出勤や自動車通勤が認められたり、定期的な通院が必要な方が勤務時間中にその時間を確保してもらったり、これらが合理的配慮の一例です。

現在の障害者雇用促進法では、障害のある方の雇用期間中は合理的配慮の義務が発生することが定められています。つまり、障害のある方が働く場合は、合理的配慮を受けることができ、また合理的配慮を求めることができます。

障害のある方それぞれが、就職する前に自分の障害について振り返り、どのような困りごとや不便なことが発生するのか、どのような配慮やサポートが必要なのかを整理することで、合理的配慮を提案することができます。

自分が働きやすい環境を自分で作ることができるのが、障害者雇用の大きなメリットです。



障害者の雇用枠が明確にある

2つ目は、障害者の雇用枠が明確にあることです。

国や自治体、企業など、障害のある方が働く法人には、法制度によって、障害者を雇わなければならない法定雇用率が存在しています。

2021年2月現在、民間企業の法定雇用率は2.2%(2021年3月から2.3%に引き上げ)となっているので、全従業員数の2.2%となる数の障害者従業員を雇用しなくてはなりません。従業員数1000名の企業であれば、22名の障害者を雇う必要があるのです。

求職中の皆さんが興味があると感じた企業には、障害者を雇うための枠があります。法定雇用率を達成することが企業の社会的責任でもあるため、皆さんの働きたいという気持ちを汲み取り、面談や実習など、接点を作ってくれることがあるでしょう。

自分が働きたいと思った企業の中には、障害者を雇う義務がある企業もあることが、障害者雇用の大きなメリットです。

※法定雇用率の観点から、従業員数45.5名以上の民間企業が障害者雇用を義務付けられているため、それ以下の従業員数の民間企業には該当しないといえます(2021年2月現在)。2021年3月からは法定雇用率の引き上げとともに、従業員数43.5名以上の民間企業となります。

デメリットはあるのか

ここまでは障害者雇用に関するメリットを2つお届けしましたが、反対にデメリットはあるのでしょうか。

明確なデメリットと伝えられるものはなく、個人の価値観や志向、これからのキャリアの考え方、障害をどこまで受け入れられているかなど、それぞれの状況によって捉え方が変わります。

例えば、採用と配属の観点から、障害者雇用枠での募集職種が企業内で設定されている場合があります。自分が志望している職種が障害者雇用枠でないと考えたときに、仕方がないと捉えるのか、一般枠でエントリーしてみようと考えるのか、その選択は働く意欲に委ねられます。

もちろん、障害者を雇用する際には、合理的配慮の義務が発生するので、企業とのコミュニケーションの機会を通じて、障害の説明や配慮項目などを伝えられればいいでしょう。

また、障害のある方を採用したということで、配属された職場で自分のことについて聞かれたり、障害について説明したりという場合が発生するかもしれません。言いづらいこと、聞かれたくないことかもしれませんが、同僚はどうすれば仕事で成果が出やすくなるかという観点から、声をかけることが多いものです。

自分にとって障害がどういうものなのか、人それぞれ意見はあるでしょうが、企業で働くにあたっては、自分の役割や責任を果たし、仕事で結果を出すことが大前提です。この折り合いのつけ方も、人によってはデメリットですし、当然のコミュニケーションだと考える方もいるでしょう。

まとめ

結論から言えば、障害者雇用で就職するかどうかは、ここまで挙げたメリットも含め、一人ひとりが自分なりの結論を出す必要があります。自分のこれからを決めることなので、周囲に相談することも大切でしょう。

ただ、今回、この記事でお伝えした、合理的配慮・法定雇用率といったキーワードについては、働くにあたって忘れないように、ぜひ、その意味まで把握していただきたいです。

1985年生まれ。生きづらさを焦点に当てたコラムサイト「プラスハンディキャップ」の編集長。
生まれつき両足と右手が不自由な義足ユーザー。年間数十校の学校講演、企業セミナーの登壇、障害者雇用コンサルティング、障害者のキャリア支援などを行う。東京2020パラリンピック、シッティングバレーボール日本代表。

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