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「見えない障害」高次脳機能障害とは?リハビリによって回復は可能?

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2022.1.18

私は心臓カテーテル手術の合併症で脳梗塞になり、左半身麻痺の運動障害と同時に、高次脳機能障害を発症しました。ただ「高次脳機能障害」については、どういうものかよくわからない方も多いと思いますので、今回は、その症状や困りごと、リハビリ内容や社会復帰へのヒントなどご紹介していきたいと思います。

執筆:市川 潤一

私は、心臓カテーテル手術の合併症で脳梗塞になり、左半身麻痺の運動障害を負うと同時に、高次脳機能障害も発症しました。

「高次脳機能障害」と漢字で書くと字面が非常に難しく感じられて、どういうものなのかよくわからないという方も多いと思います。そこで、今回は私が経験した高次脳機能障害について紹介していきたいと思います。



高次脳機能障害とは、脳血管疾患など、病気やケガで脳を損傷した人が発症する認知障害全般を指します。高次脳機能障害は、事故や病気などによって脳に損傷が与えられたという原因が明らかな場合の呼び方なので、先天性の高次脳機能障害の人はいません。

右手が動かないなどの運動障害などと違い、見た目にはわからない「見えない障害」でもあり、また、精神障害などとも勘違いされ誤解を招くこともあり、非常にやっかいな症状です。あまり知名度が高くないことも、イメージをしづらい要因の一つかもしれません。

その症状は、いらいらしたり感情のコントロールができなくなるなどの社会的行動障害、新しいことが覚えられなくなったり、物の置き場所を忘れてしまったりする記憶障害、ぼんやりとしていてミスが増えてしまうなどの注意障害、自分で計画を立てて実行することが難しくなる、目的に応じた行動が出来ないなどの遂行機能障害があります。



私の場合は、損傷した脳の反対側に注意が向かない注意障害、その中でも特に半側空間無視という症状がひどくありました。

左前方に何かがあっても、それを気にせず歩き、ぶつかる、車椅子で進んでぶつかる、リハビリの計算問題のプリントで縦に左右に二列問題が並んでいても、左側の問題だけ解かずに提出するということをよく繰り返していました。

視力に影響があったわけではないので、全く見えていない状態とはちがいます。

脳の一部が傷つくと、視界に入っているはずなのに気づけないといいますか、視界の左側にあるものに注意を向けられなくなるのです。ちなみに重度の方だと、注意をされても無視する側を見ることができないようです。人によって、出る症状も程度もちがいます。

その度に、理学療法士(座る、立つ、歩くなどの基本動作の回復を目的として運動療法などを行うリハビリの専門職)や作業療法士(OTとも呼ばれる。食事や入浴、トイレ、家事などの日常生活の動作の回復、社会参加やその人らしい生活に復帰するためのリハビリを行う専門職)、言語聴覚士(STとも呼ばれる。言語や聴覚、音声、呼吸、摂食、嚥下などに関する訓練や指導などのリハビリを行う専門職)らリハビリ職の人の声かけによって、改善していきました。

ただ、この様子を見ていた、当時の会社関係者が「もうこんな状態になっては会社で面倒を見られない」という結論に至り、私は自主退職を促されることになりました。

高次脳機能障害を負ってしまったら、まったく回復しない障害というわけではありません。

早い段階で左半身麻痺の運動障害はもう回復することはないだろうと言われていたこともあってか、(最初の頃は発声もおかしかったので)文章の音読やタイピング、計算問題やクイズ、脳トレ系の訓練など、言語系のリハビリに力をいれてくれたこともあり、急性期病院入院時に、高次脳機能障害はだいぶ回復していました。

記憶の障害もほとんどなく、お見舞いに来てくれる人のこともほぼ全員わかっていましたし、ライターの経験を活かして、リハビリの一環で職員さんなどにインタビューをして、紹介記事を作ったりしていました。徐々に、社会復帰できるようにサポートをしてもらいました。


病院が言語系のリハビリに力を入れてくれたおかげもあり、私の高次脳機能障害はずいぶんと回復しました。回復期病院に転院した際も比較的早い段階から言語系リハビリはなくなり、その時間を歩行訓練、入浴訓練などの運動系リハビリに充てられるようになっていました。

現在も歩行には装具と杖が必要ですし、左上肢は指もピクリとも動かず、運動機能は人並みには戻っていません。それでも、注意障害のリハビリを徹底的にやったおかげで、コミュニケーションには問題もなくなり、在宅で仕事ができるようになっています。

「高次脳機能障害」は、発症当初はまともにコミュニケーションもとれなくなることもあるので絶望する家族や周りの人もいるようですが、変わる可能性がないものではありません。リハビリによって回復していくことは可能なのです。私自身の情報ではありますが、同じような状況で悩んでいる方の参考になれば幸いです。

1975年生まれ。長崎県佐世保市出身・在住。愛媛県でライター・編集者・カメラマンなどとして活動していたときに脳梗塞になり、左半身麻痺の身体障害者となる。取材活動ができなくなり、ライターを廃業。障害者雇用の在宅ワーカーとなり現在に至る。障害者の仕事の仕方や見つけ方など自分の経験を紹介していきたいと思います。

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