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発達障害、オープンにする?クローズにする?私の場合

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2022.2.10

発達障害や自分の困りごとを周りの人にどこまでオープンにして伝えるか。サポートを受けるためには知らせる必要がありますが、上手く伝わらず誤解を招いてしまう場合もあります。今回は、発達障害当事者の私のスタンスや、どう線引きしているかについて考えてみました。

執筆:とくら じゅん

こんにちは、とくらです。

発達障害に限らず、自身の困りごとについて周りに知らせておくことは適切なサポートを受けるために必要な場合もあります。

しかし、様々な工夫をして周囲にはクローズで働いている方、友人には伝えていないという方、家族には伝えづらいという方もいるでしょう。人によって、いろいろな事情と心情があると思います。

周囲から見えにくい困りごとを抱える人にとって、周囲にどこまで伝えるのかは悩みのタネでもあるかもしれません。

そこで、今回は発達障害の当事者でもある私が、どこまで自分の困りごとをオープンにするかのスタンスについて少し書いてみたいと思います。


オープン?クローズ?

私は「基本的に」誰に対しても自分が発達障害者であることをオープンにしています。(例外もありますが、それは後述します。)

診断を受けた直後、職場の人や家族にも私の困りごとと共に、発達障害とは何かという話をしました。

職場ではすんなりと受け入れられた話も、両親は少し戸惑っていたように見えましたが、今ではきちんと伝えることができたのは良かったと感じています。

伝えるべきか、それともこのままクローズで過ごすべきなのか。

診断を受けた際、一瞬迷いましたが、私にとっては伝えないことのデメリットの方が大きいと感じたため、周囲の人にはなるべくオープンにするようにしています。

両親と親族

両親には、診断された病院から帰る道すがらすぐに連絡をしました。

実は、成育歴を調べるための資料を実家で探していた時には「ちょっとIQをテストするから...」と濁して伝えていました。

しかし、診断されたときに、「やはり伝えるべきだ」と感じたのです。

もしかしたら自己満足かもしれませんが、「両親が子育てをする中で抱えていた困難が発達障害に起因するものだったと分かることは、過去の両親を癒してくれるのではないか」と考えたからです。

私はこれまで様々な場面で両親をがっかりさせてきました。

何度言われてもできないこと(部屋の掃除や、電気の消し忘れ、朝起きられない...など細かいことをあげたらきりがありません!)が多くありました。「自分の子育てが間違っていたのではないか?」と思わせることもあったでしょう。

周囲から「変な子供だ」と言われたことや、クラスで浮いていること、いじめられたり、教科によってあまりにも成績に差があったりことなど、きっと両親は悩んでいたと思います。

大人と言われる年齢になってからも、いわゆるきちんとした人間ではありませんでした。

どこまでの範囲か明確には分かりませんが、実際には私の先天的な特性が大きく関わっていたのです。「私の困りごとは、両親の育て方や、接し方によるものではなかった」と伝えられたように感じました。

両親以外の親族には、はっきりと私が発達障害であることを伝えたことはありませんが、このパラちゃんねるカフェで記事を書くようになってから、祖父母には記事をシェアしてそれとなく伝えています。

どうしても「高齢の祖父母にはなんとなく言いづらいな」というのが本音ですが、祖父などは記事を読んでくれているそうなので、おそらく孫の発達障害を受け入れてくれているのではないかと思います。

友人・知人

私の友人には発達障害をオープンにしている人が多く、オープンにしている友人と同じコミュニティに属している人には私も積極的に伝えていくスタンスにしています。

友人に対して障害をオープンにして良かったと感じるのは、「実は私も...」という友人がいたり、相手から困りごとを打ち明けてくれるようになったことです。

友人たちも実に多様な困りごとを抱えていましたが、それを相談しにくい雰囲気なく打ち明けられる場所として機能するようになったのは本当に良かったと思います。

私の中でオープンにするのか、クローズにするのか迷うのは、普段深い話をすることもないけれども、関係上どうしても迷惑をかける可能性がある相手に対してです。

例えば子供の通う保育園の先生です。

はっきりと明言はしていませんが、おそらく私が何かしらの強い特性を持っているだろうと感じてサポートをしてくださっています。いつも様々な気を配ってくださる先生方には本当に感謝してもしきれません。こういった「さりげない環境」はありがたいことだと思います。

職場

診断後、会社にも発達障害であることを伝えました。薬の飲み初めには副作用もあるので、仕事をする上で伝えることが必要だと考えたからです。その影響もあって、両親に伝えると決めた時よりも遥かにハードルは低かったです。

実際に、職場ではいろいろな配慮をしてもらい、私はとても働きやすくなりました。

しかし、しばらくしてから、上司が私の同僚のうちの一人を呼び出して「診断を受けるように」「投薬治療をするように」と面談をしていたことが分かりました。「私が診断結果を公にしたことがよくなかったのでは」と考えるようになりました。

オープンにすることで周囲の人にも興味を持ってもらい、発達障害や、困りごとは人それぞれであることなど、多様な人の在り方について知ってもらえたら、と思い話をしました。

ずいぶん多くの言葉で上司にも伝え、理解してもらったつもりになっていましたが、同僚は「お前は発達障害に違いないから投薬で治せ」というようなことを言われたそうです。同僚には本当に申し訳なく思い、私の言葉が足らなかったのだろうかと随分悩まされました。

現在は退職し、別の会社で働いていますが、今の会社では発達障害について特に触れることなく働いています。働き方が私にあまりにぴったりだったため、あえて発達障害であるということを言う必要を感じなかったからです。

もし、今後何かしらの変更があり、困ったことが生じた際には会社に伝えようと思っていますが、今のところ必要性を感じないため特にその予定はありません。

また、現在の職場では障害者支援などの取り組みにより、社員の多様な生き方に対する理解が深いことも理由の一つです。あえて私が「理解をして欲しい」と働きかける必要もないと考えています。

まとめ

基本的にはオープンというスタンスですが、「配慮をして欲しい」と伝える必要性を感じない環境ではあえて言葉にすることはありません。クローズにしているわけでもありませんが、明言はしなくても困らないのです。

また、もともと多様性を大切にしているような場所では言葉にして理解を求めなくてもサポートを受けられると考えています。

「いろいろな人がいて、それぞれが違った困りごとを抱えているだろう、相手は自分とは違う人間なのだから。」と考えてくれる人がいてくれると、助かります。

他の人とのちがいを認めてくれる人が一人でも増えてくれれば、障害に限らず、自分の困りごとをオープンにするか、クローズにするか、と悩む人も減っていくのではないでしょうか。

1991年生まれ。下町暮らしのフリーライター・イラストレーター。出産後ADHDの診断を受ける。様々な立場の生きづらさを考えていきたい人。

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