人生どん底のASDがスピッツ『スピカ』の歌詞から得たもの
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2022.2.19
私は24歳の時に発達障害の診断をされて、人生のどん底に突き落とされたように感じました。鬱鬱としていた時に、打開するきっかけになったのがスピッツの名曲『スピカ』でした。今回は『スピカ』がどんな救いになったのかについてお話をしていきます。
執筆:月尾 いる
はじめまして。
パラちゃんねるカフェで執筆させていただくことになりました、月尾いると申します。タイトルからご想像されたと思いますが、私はスピッツの大ファンです。
私は17歳の時に軽度のうつ、24歳の時に広汎性発達障害(ASD)、30歳の時に愛着障害と診断されました。
発達障害の診断を受けることで、気持ちがスッキリする方は多いとお聞きします。しかし、私は真逆で人生のどん底に突き落とされたように感じてしまいました。
今回は、発達障害の診断を受けた時に感じたことと、その境地から救ってくれたスピッツの名曲『スピカ』についてお話していこうと思います。
スピッツってこんなバンド!
スピッツは1987年に結成され、1991年にメジャーデビューしたロックバンドです。インディーズ時代は「THE BLUE HEARTS」の影響を受け、パンクロックを志向していました。そのため、バンド名にも「弱いくせによく吠える犬」というパンクバンドらしい意味が込められています。
そんなスピッツでしたが、ライブハウスのマネージャーから、「『THE BLUE HEARTS』のコピーのようだ」と指摘されたことがきっかけで、音楽性を変更します。
現在のスピッツのメロディや歌詞については、爽やかなイメージを持つ方も多いでしょう。
しかし、スピッツのボーカルである草野マサムネさんは、とあるインタビューの中でこう答えています。
歌詞の永遠のテーマは「セックスとデス(死)」である、と。
宗教的とも捉えられるこのテーマですが、スピッツのロック精神も垣間見えます。
『空も飛べるはず』に恋した中学時代
私がスピッツを知ったのは、中学生の時でした。
合唱祭で隣のクラスが歌っていた『空も飛べるはず』を聞き、恋に落ちるかのごとくその曲の虜になりました。あの時確かに、スピッツと出会った奇跡が、私の胸にあふれていました。
大人になってから、「もっとスピッツの曲を知りたい」と思い、レンタルショップで全てのCDを借りたこともあります。メロディも素敵ですが、私は草野マサムネさんが書く詞にとても魅了されています。
草野マサムネさんは「歌詞の解釈は聴き手に任せる」といったスタンスを取っているそうなので、私自身も自由に考察をさせてもらっています。
どん底から救ってくれた『スピカ』の歌詞
私が発達障害の診断を受けた24歳の頃は、働くどころか、外に出るのも億劫な日々を過ごしていました。
「発達障害やったから、みんなに馬鹿にされてきたんか……」
診断を受けて真っ先に襲いかかってきたのは、悔しさと絶望です。しばらくは、そんな鬱々とした日々が続きました。
しかし、何気なく聴いたスピッツの『スピカ』がそんな事態を打開してくれることになります。
個人的にスピッツの歌詞は、2番が印象に残ることが多いのですが、『スピカ』に関しても例外ではありませんでした。
以下、スピッツの『スピカ』の歌詞の一部を抜粋します。
“夢の始まりまだ少し甘い味です
割れ物は手に持って運べばいいでしょう
古い星の光僕たちを照らします
世界中何もなかったそれ以外は”
最初は歌詞の意味がわからず、一瞬『ジョジョの奇妙な冒険』のポルナレフの「な…何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった」という言葉が浮かんできたのも事実です。
当時ヒマを持て余していた私は、この『スピカ』の歌詞をじっくり考察してみようと、思い立ちました。
以下は私なりの『スピカ』の歌詞の解釈です。
「夢に向かって進んでいるのに、あなたはまだ少し甘いところがあると思う。割れ物を手に持って運ぶように、どんなことでもやり方はあるのだから、あなたも努力しなさい。例えば、何億年もかけて地球にたどり着く古い星の光も、僕たちを照らすことでそれを証明している。世界中探してもそういった地道な方法以外はないんだよ」
これはあくまでも、私なりの『スピカ』の解釈なので、 草野マサムネさんの意図とはまったく違うかもしれません。
ですが、私は今まで、「自分は発達障害だから、諦めないといけないことがたくさんある」と思っていた節がありました。
努力すれば何でも叶うとは限りませんが、割れ物を手に持って運ぶ方法があるように、最初から全てのことを諦めなくていいのかもしれない、と思えるようになりました。
だから、私はこれからもスピッツ信者です
スピッツの曲の歌詞には、難解な単語はほとんど出てきません。ですが、「どういう意味だろう」と考えさせられたり、人生観が変わったりすることがよくあります。
勝手に解釈した『スピカ』の歌詞ですが、その一件から私は徐々に前を向くことができました。それ以来、私の中でスピッツの『スピカ』は名曲という立ち位置を超えて、人生の道標のような存在になりました。
人生のどん底に落とされたように感じたときに、何が心の支えになるかは人によってちがいます。私にとっては、それが『スピカ』の歌詞でした。「発達障害なら、色々なことを諦めなければいけない」と感じていたときに、考えを変えるきっかけをくれました。
『スピカ』を生み出してくれた草野マサムネさんには感謝しかありません。それ故に、これからもスピッツのファンで居続けると誓えるのです。