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あなたの「短所」にも、必ず何かの意味がある

~特性を活かした「幸せ」の見つけかた

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2022.2.23

障害者の毎日は、何かとストレスフルです。
普通の人が「できる」ことができず冷たい目線を向けられてストレスを感じる機会も多いだけでなく、普通の人よりもストレスを感じやすい障害特性もあります。そういう人が、このストレスフルな社会を生きていくには。

執筆:いりえ(北橋 玲実)

障害者は、健常者よりもストレスを感じやすい傾向にあります。普通の人が難なく超えていく段差に車いすで四苦八苦したり、仕事で何度も同じミスを繰り返して呆れられてしまったり、相手の意図する答えと違うことを口に出して敬遠されてしまうこともあります。

こういった「できない」ことによる自責や、他人からの厳しい当たり方によるストレスはもちろん大きいです。

一方で、発達障害や、障害には該当しなくても「HSP(Highly Sensitive Personー非常に感受性が強く敏感な人)」といった特性を持つ方は、同じ環境でもストレスを感じやすい傾向があります。

発達障害の特性の中にも、「感覚過敏」というものがあります。これは日光や映像といった視覚への刺激、人の声や物音といった聴覚への刺激、着る服などによる触覚への刺激などに対して極端に過敏な性質です。

たとえば、強い視覚過敏を持つ方は、家の中の蛍光灯の光にも強く反応してしまい、サングラスを手放せないこともあります。一人の時は真っ暗な部屋の中で暮らしていることもあります。

ですが、普通の人からは「真っ暗」と感じさせる部屋の中でも、視覚過敏の方はわずかな光の中でも適切にものを探すことができるため、その空間での暮らしが、彼らなりの心地よい暮らし方でもあります。

ただ、一歩外に出れば空間を満たすのは日光、蛍光灯やモニターの光ですから、色々な防護策を練らなければ、まともに生活を送っていくことは非常に厳しくなります。

私も聴覚と触覚の感覚過敏を持っています。

私の場合は、触覚過敏によって、冬場の寒い時期にごわついた厚着をすることのストレスが非常に強かったり、下着の締め付けが気になって集中できなかったりと、日常生活が送れないほどではありませんが、どうしてもストレスや体調に影響が出ていると感じることはあります。

また、私の場合は聴覚過敏が非常に激しいです。特に小さいときは、やかんの笛の音が非常にストレスで、2、3秒程度鳴り続いているだけで怖がっていたのを思い出します。また、物がきしむ音も非常に苦手で、吊り橋などの「キリキリ」という音や(吊り橋が高所だから、ということよりも音が怖い)、座っている椅子がきしむ音などを聞くたびに落ち着かなさをいつも感じていました。

今となっては「恐怖」を感じることは減ってきましたが、人の声のトーンの変化には非常に敏感で、会話相手からその変化を読み取ったとき、相手の機嫌や感情、本音を言っているかどうかといったことが気になって落ち着かないことも少なくありません。また、物音がしたときもいつも気になって集中が切れやすいことで勉強や仕事に支障が出たり、ミスやトラブルにつながったこともあります。


日常生活が送れないこともないですが、それでも集中力やメンタルの乱れが多く、どうしてもストレスを感じやすいのが感覚過敏を持つ方の特徴です。

また、多様性の叫ばれる社会、様々な日常を送っている人が街にはたくさんいます。

においの強いものをつけている方もいますし、意図せず音を出してしまう障害もあります。そういった社会の中で感覚過敏を持つ人が日々どのようにストレスと付き合っていけばいいのでしょうか。

感覚過敏を持つ方との話の中で感じることは、私たちにとって有効なストレスの対処法は、「感覚過敏だからこそのストレス解消法」を見出すこと、だということです。

服を着ることさえ、物音一つさえストレスに感じてしまう私たちの感覚ですが、逆に言えば、受ける刺激そのものが快適であれば、その刺激から受けられる幸福や快感は人よりも圧倒的に大きくなります。

たとえば、聴覚過敏の強い私は昔から音楽をやっています。親がピアノ講師だったこともあり、今でもオーケストラに所属したりと、趣味としてはかなり熱心にやっています。

そんな私の主観的なイメージの話ですが、聴覚過敏の人にとっては「音楽を聴く」「音楽を演奏する」ことによって得られる快感と不快感の幅は、普通の人よりも非常に大きくなります。

したがって、本当に好きな曲であれば、それを聞くことによって得られる快感は言葉に表せないほど豊かなものになります。たとえば脳味噌がぞわぞわとしたり、背筋から首にかけてのいわゆるチル反応と呼ばれる快楽の感覚が、音楽一つだけで得られます。日常的な物音への反応は避けられませんが、その特性を活用して強い幸福感を得ることも、また可能になるのです。

それから、私なりに見つけた聴覚過敏のもう一つの活用法は、「聴覚刺激でモードを切り替える」ことです。物音一つで集中力が乱されてしまう私ですが、その特性を逆に利用し、雨音などの自然音を集中したいときに聞くことで、普通の人よりも高いパフォーマンスを発揮できます。

人の脳はどうしても不快感やネガティブ感情にばかりフォーカスをしてしまうものですが、意識的に「良かったこと」「幸せを感じた瞬間」に気付こうとするだけで、面倒な脳と感覚過敏の特性も活用することができるのです。

私の感覚過敏も発達障害も、決してなくすことはできません。大切な人に対して意図せず傷つける言葉を口にしてしまったり、空気を読めず相手に不快感を与えることも、物音にびっくりしてミスをすることだってゼロにすることはできません。

でも、それは性格や得手不得手など、あらゆる人のあらゆる特性について言えることでもあります。その特性自体から逃げることはできずとも、その特性との付き合い方を知り、共にかかわる人にきちんと知ってもらい、可能ならば支援をもらうこともできます。

自分を知る。そしてそれを目の前の人に伝える。たったそれだけのことができれば、どんな特性をもっていても、どんなことが「できない」としても、人として当たり前に求める「幸福」を感じることは、決して難しくないのだと思います。

もしかすると、あなたが「短所」や「障害」と思っていることが、誰かの役に立つことさえあるのです。世の中には多様な人がいます。その環境を受け入れて身を置くことで、あなたの特性の捉え方も広がるかもしれないのです。

いつでも、なんでも、誰でも肯定するアスペ。Estlaughtive代表。自己肯定感育成スクールを通して「『生きづらい』を乗り越えてありのままに生きる」ための考え方を拡散中。その他にもコーチング、コミュニティ、講演会の出演、経営コンサルを行う。著書2冊はそれぞれAmazon6、7部門ベストセラーとなった。

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