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電動車いすの身体障がい者にとって働きやすい職場に欠かせないポイント!職場環境編②

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2022.3.3

私は事務職とコールセンターで働いた経験があります。車いすの身体障がい者にとって働きやすい職場環境にするためには、どんな工夫をしたらいいのか。前回は、通路幅の確保とデスクの高さ・幅について、まとめました。今回は、ドア問題と多目的トイレについて書かせていただきます。

執筆:佐々木 美紅 Miku Sasaki

私は脊髄性筋萎縮症という、生まれつきの病気のため、電動車いすで生活しています。

脊髄性筋萎縮症とは、体幹、腕、脚など全身の筋肉を動かす脊髄の細胞に異常があり、筋力が低下していく進行性の難病です。

車いすユーザーが仕事をする上で、職場環境で工夫していただきたい点がいくつかあります。実際に私が働いてみて思った感想をこちらにまとめてみようと思います。

前回は通路幅の確保とデスクの高さと幅について書きました。



今回はドアと多目的トイレについて書かせていただきます。

注意していただきたいのは、車いすユーザーだからといって、すべてが当てはまるわけではないということです。電動か手動式なのかも違ってきますし、体の大きさによって車いすの形も変わってきます。

※私の電動車いすの寸法は(全長×全幅×全高)1,085×650×870mmです。参考になれば幸いです。



ドア問題

まずは、ドアです。車いすユーザーのオフィス問題だと「通路」がよく挙げられますが、実はドアに頭を悩ませることが多いのです。

通常のドアは、健常者が立って開閉することを想定して作られています。そのため、車いすユーザーから見ると、使いづらい点も多くあり、例えば、ドアノブの位置が高すぎたり、車いすに座った状態だと開閉の力を入れづらかったり、スペースが狭く感じたりします。

だからと言って、車いすユーザーを一人雇うためにドアのリフォームをすることは現実的ではないかもしれません。以前、私が勤めていた会社では、ドアに少しだけ工夫をしてもらっていました。

私は筋力がないので、一般的な開き戸(家庭などにもよくあるドアノブを回してから押して開けるドア)と呼ばれるタイプのドアを自力で開けることは難しいです。

また、私は腕をドアノブの高さまで持ち上げることができません。車いすで扉を押すことはできるのですが、一般的なドアにはドアラッチ(ドアのストッパーの役割をしている部品)がついており、これもまた私にとっては障壁になるのです。



ドアノブを回すと引っ込み、元の位置に戻すと出てくるのがドアラッチで、このおかげでドアは閉じた状態を保てるようになっています。

私は会社の上司に頼んでドアラッチをテープで貼って、常に引っ込んでいる状態にさせてもらいました。ドアラッチを引っ込めた状態で固定したことで、自分でも車いすで押してドアを開けられるようになりました。

ドアは様々な部署の人が共同で使っているので、 私の上司が他の課の責任者の方に事情を話してくれてテープを貼ることを許可してもらいました。「ほとんどお金をかけなくても、少しの工夫さえあれば自分でできることが増えるのだな。」と実感した出来事でした。

オフィスによっては、ドアにセキュリティがかかっているものもあります。暗証番号を押したり、カードキーをかざしたり。そういう作業が私には手が届かなくて大変でした。一人で廊下に出ると誰かが通るまで中に入ることができませんでした。

ただ、私の事情をわかってくれている人がたくさんいたので、快くドアを開けてくれて助かった思い出があります。 自分から扉を開けてくださいと言葉を発するのも勇気が必要でしたが、ドアを開けてもらうことが多かったので、オフィスのさまざまな方とコミュニケーションを取れたと今となっては思います。

多目的トイレ

次に、多目的トイレです。駅や商業施設などにも設置されているので、多目的トイレを使った経験がある方は多いかもしれません。それでも、一般用のトイレとどのような違いがあるかは意外と知られていないのではないでしょうか。

多目的トイレには以下のようなポイントがあります。

  • 内法寸法は200cm×200cm(車いすが回転できるようにするため)
  • 入口の有効幅が80cm以上(90cm以上が望ましい)
  • 腰かけ便座の壁側にL字の手すりがある
  • 水平手すりは便座の座面から20~25cmの高さにつける


多目的トイレには、車いすのまま便座の近くまで移動できるだけのスペースが確保されていたり、自分の足の力だけでは立てない人でも腕の力を使って便座に座れるように手すりが設置されていたりと、一般用トイレとはちがう点が多くあるのです。

私は一般用のお手洗いでは扉の幅が狭かったり、空間が狭くて使用することができませんが、多目的トイレのないビルで働いていた経験もあります。その時は、私の職場の隣のビルの多目的トイレを使わせてもらっていました。会社から、そのビルの管理者に会社にお願いをして使用許可をもらい、利用させてもらっていました。(そこまでして私を採用してくれた会社には感謝です)

ところが雨や雪が降った日は、外に出てお手洗いに行くのが大変でした。しかも、正面玄関の入口のスロープの傾斜が大きく、人に頼んで一緒に外までついてきてもらわなければいけなかったので、お手洗いをついつい我慢してしまったのです。

お手洗いを我慢することで仕事に集中できなくなり、大きなストレスにもなりました。その点から言いますと、やはり車いす利用者を雇うためには多目的トイレがあった方がベターだと思います。 車いすユーザーの働いているフロアの近くに多目的トイレがあることがベストですが、そうでない場合も、せめて同じ建物内にあって欲しいなと思います。



まとめ

車いすの身体障がい者にとって働きやすい職場のポイント、ドアと多目的トイレについてご紹介しました。

企業の方は「バリアフリーの環境が整っていないから、車いすユーザーは雇えない」と思われているかもしれません。ただ、今回ご紹介したように、建物のリフォームなどをしなくても、ほんの少し工夫することで劇的に改善することもあります。

振り返ってみると、お金をかけて建物の改修工事をすれば問題が解決するということもありますが、周りの社員の協力で乗り越えられたこともありました。今回挙げた二つの例が、周りの社員の協力でクリアできたことだと感じています。

職場環境編は、エレベーター、スロープ、段差の有無。ファイリングやコピー機操作など、 次回ももう少しお伝えしたいことがあるので、続けて「職場環境編③」を書かせてもらいたいと思っています。

脊髄性筋委縮症のため、電動車椅子。コミュニティFMラジオで番組を担当。十三年務めた旅行会社で、通勤とテレワークを経験。障害者の就労、恋愛、結婚、アルコール依存症の母と過ごした日々などを、発信。体は動かないが世界とつながりたい。NHK障害福祉賞優秀賞。ライターとして執筆にも力を入れている。

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