4歳児と「ちょっと待ってて」について
1 1
2022.3.18
自分でも、「ちょっと」の幅が分からないときがある。
32歳の自分でさえも分からないのに、4歳の子供ならもっと分からないよね。
今回は、そんなお話です。
執筆:マーチン Martin
情けない話だけど、僕は仕事で怒られると、家に帰ってまでクヨクヨした気持ちを引きずってしまう。
自分に対して情けないやら、悔しいやら、怒りが全部混ざったネガティブカクテル。
帰宅すると、リビングでは先日4歳になったばかりの娘が、雑誌の付録についていたトランプをカーペット一面に広げて神経衰弱らしきゲームをしていた。妻は台所で食事の準備中。
「ねぇ、パパ、トランプやろっ!」
帰ってきたばかりで仕事着のまま、カバンも何も片付けてないので、僕は咄嗟に
「ちょっと待ってて!」
しかし、それで「うん!分かった」とすんなり聞いてくれる訳もない4歳児。
「ねぇー、早くやろ!!やろ!!」
「やろうよー!!」
「パーパー!!!や!ろ!」
「パ!!パ!!早くー!!」
矢継ぎ早ってこういうことなんだろうな。と言うくらいの娘からのマシンガン催促。
仕事から育児モードにすぐ切り替わっていればすんなり聞き入れた言葉。でも、まだ仕事のクヨクヨを引きずってて、気持ちを完全に切り替えられてなかったので、すぐ動けなかった。
止まらない娘からのマシンガン催促。
良くないと思いつつ、語気が強くなる。
「ちょっと待っててって言ってるじゃん!!」
娘もヒートアップして、
「もー!!嫌だー!!すぐやろ!すぐ!」
お互い頭に血が上って、一歩も引かない4歳児と32歳児(笑)。
その一部始終を聞いていた妻が、呆れた顔をして僕に問いかける。
「あなただって、曖昧な【ちょっと】という表現を今まで理解できずに苦しんできたのに、それが4歳児に分かるわけないよね?」
図星。反論の余地が全くない。
自分は発達障害があるので、表現は分かりやすく具体的な言葉で伝えて欲しい。と、妻や当事者会等ではこの事はしょっちゅう話をしていた。
なのにも関わらず、自分のことは棚に上げて、娘には語気強く、「ちょっと待ってて!」って怒りだすなんて、とんだ茶番だ。
「ちょっと」「すこし」「すぐ」「ゆっくり」「そのうち」
世の中は曖昧な言葉で溢れている。人によっては10分だって「ちょっと」の人もいれば「だいぶ」の人だっている。
上司から言われた「そのうち」という言葉を鵜呑みにして、仕事を後回しにしてたら怒られたのも一度や二度じゃなかった。
そこでたどり着いた答えとして、「ちょっと」という曖昧な言葉ではなく、具体的な時間や行動を伝えるに限るということだった。
今回の場合であれば、「ちょっと待ってて」ではなく、
「パパは手洗いとうがいが終わって、部屋着に着替えるまで待っててね」
とすれば良かったのだ。
反省した僕はその後、曖昧な言葉ではなく、自分の状況を説明して、「何で待つ必要があるのか?」をキチンと理解してもらうことにした。その作戦はかなり効果的だった。
例えば…
娘に玄関先で外出を急かされたとき、
「ジャンパーを取ってくるから、それまで待っててもらえる?」
娘が片付けもせずに、おやつを食べようとしたとき、
「机が汚れてるから、机をキレイにしてから食べようね。」
「あとちょっとだけ」という言葉も、
「最後の2粒だけ食べたらおやつは終わりね」
スマホのアラームを使って、「これがピピピって鳴ったら、テレビをみるのは終わりね」。こうすると、短時間の設定でもすんなり聞いてくれてる。
もう少し大きくなったら、ゲームをしながら「この対戦が終わったね!」とか、「このミッションクリアしたらね!」とか言うのかな(笑)。
話は逸れるが、僕の親はゲームをしたことない人だったので、「わかったから!セーブしたら、ゲームの電源消すから!」が中々理解してもらえず、子どもの頃は何度か揉めたなー。
僕は、それは理解できているから、娘がデータをセーブするまでは待ってあげようと思う。
Text by
Martin
マーチン
1989年生まれの33歳、生粋の岐阜県民。社会人2年目の時に発達障害(ADHD/ASD)と診断され、障害者雇用にて再就職。8年間勤務後、障害者の就労支援職に従事している。2019年に居場所作りや情報共有の場として岐阜市にて発達障害当事者会「発達ワークスぎふ」を立ち上げ、私生活では二児の父として、色々しくじりながらも奮闘中!!