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約200人の障害者と出会って「障害と個性の境目はどこだろう」と考えた

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2022.3.17

どこまでが障害の話で、どこからが個人の話なのか。発達障害当事者として、自分の経験をもとに書いていると分からなくなります。今回は「障害特性と個性の境目」について考えてみました。

執筆:森本 しおり Morimoto Shiori

私の人生のうち、どこからどこまでが発達障害の人によくある話なのか。また、同じように、どこからどこまでが個人の話なのか。

発達障害当事者として自分の経験談を書いていますが、考えれば考えるほど障害特性と個性の境目はあやふやでよくわからなくなります。そんなときは、私が福祉の仕事で出会ってきた障害のある人達の顔を思い浮かべます。

私は障害福祉の仕事を始めて9年目。ざっと計算をしてみたら、これまでに出会った障害者は約200人でした。身体障害、知的障害、精神障害、ありとあらゆる障害を持つ人達に会いました。中には私と同じ障害を持つ人もたくさんいます。

その人達との共通点を探ったり、ちがいを見つけたりしながら「障害と個性の境目」について考えてきました。


障害のある子どもの中に、過去の自分を見つける

私は放課後等デイサービスという障害のある子ども向けの福祉サービスで働いています。毎日、10人ほどの子ども達が学校帰りに宿題をしたり、遊んだり、療育と呼ばれる将来の自立に向けた個別の支援を受けたりするための場所です。

障害のある子ども達と接していると、「ああ、私の小さいころもこんな感じだったんだろうなぁ。」と思うことがあります。

たとえば、自分の好きな話ばかりしているうちに他のお友達から少し煙たがられていたり、他の子に置いていかれないように焦っているうちに頭が混乱してパニックになったりする子を見ると自分の子ども時代を思い出します。

子どもの頃は、何が起きているのかよく分かりませんでした。よく分からないけれど、上手くいかなかったり、周囲から注意をされたり、トラブルが起きたりしていました。

支援をすると、助けてもらう人とは逆の立場からものを見ることになります。視点が変われば、見えるものもちがいます。当事者の立場では見えなかった周囲の人の動きや、当事者には聞かせられないような声を受け取ることができます。ある意味では、今の自分が出来上がったことの答え合わせをしているような気分です。

当事者の立場だと余裕が無くて気づけなかったようなことも、他の人のことならよく見えるものです。

比べると、障害とは関係ないところもわかる

一方で「自分の困りごとの中でも、ここは障害と関係なかったのか」と発見することもあります。

発達障害の人はコミュニケーションが苦手と言われることがありますが、発達障害のある子ども達も色々です。人なつっこい子もいますし、他の子と遊ぶのが大好きな子もいます。

「一人遊びが好きでマイワールド全開!」という子どもでも、他人を拒絶しているとは限りません。私の知っている子は、誰かが泣いていれば自分なりの方法でなぐさめようとしたり、喧嘩の仲裁に入ろうとしたりします。

一人で行動するよりも、お友達と一緒に遊ぶことが好きな子もいます。同年代の仲良しな子に会えると嬉しそうにして、自分達だけの秘密基地や暗号を作ったりして遊んでいます。

周りの子の遊びの輪にはあまり入らないけれど、寂しがり屋な子もいます。その子は他の子から話しかけられると嬉しそうにして、一日の終わりには先生やお友達の名前を一人ずつ呼んで「楽しかった!また明日!バイバイ!」と、満面の笑みでジャンプしながら手を振ってみんなを見送ります。

私は、たくさんの障害者と接してきて、「自分の他人への不信感は、障害由来のものじゃなかったんだな」と思うようになりました。不信感は、私の困りごとの根っこの部分にありましたが、「発達障害だから」ではありませんでした。

同じ障害を持つ人と比べるからこそ、共通点だけでなく、ちがうところも見えてきます。


どこまでが障害?

一人の人の中には、多くの人に共通する普遍的な要素もあれば、他の人とはちがう自分だけの特徴や個性もあります。

振り返ってみると、これまで自分の物語だと思っていたことの一部は、発達障害の人によくある話でした。自分だけに起きていることではなかったのです。

一方で、「これは障害が原因か?」と疑っていたことの一部は、障害とはあまり関係がなさそうだとわかってきました。同じ障害を持ちながら、自分とはちがう生き方をしている人達がいるからです。

これまでたくさんの人達と関わりながら「自分はどうだろう」と考えたり、話を聞いたり、ただ一緒に過ごしたりしていくうちに、少しずつ障害についての考え方が定まってきました。私の中の障害のイメージは、たくさんの人達との会話や思い出でできています。その人達と比べて、ちがうところが自分の特徴や個性なのだと思っています。

今は、障害のある人達と直接の関わりがない人でも、当事者の声を聞くことができるようになりました。多くの当事者が自分の経験談を話し、障害についての意見を述べています。そんな状況の中で、改めて問いかけてみたいのです。

あなたにとって、障害とは何ですか。自分の個性はどこにありますか。

1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。
就職後1年でパニック障害を発症し、退職。27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。プラスハンディキャップなど各種メディアへ寄稿中。

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