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ADHDの私が、得意なことを活かせる環境を見つけるまで。

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2022.3.24

ADHD当事者だからこそ、発達障害のこども達が何で困っているか感覚的に掴める気がします。自分は何が得意なのか。将来どんな仕事が向いてそうなのか。私自身が少年期に「こんなことを教えて欲しかった」と周囲の大人達に期待していたことの内容をお伝えします。

執筆:池田 誠

皆様初めまして。池田 誠と申します。私はADHD当事者として、障害福祉サービスの仕事に携わっています。

主な仕事として、発達障害児をメインに「放課後等デイサービス」というところで働いています。放課後等デイサービスとは、障害のあるこどもたちが下校後や長期休暇中に通える施設のことです。運動や勉強だけでなく、将来の自立に向けた力を伸ばせるような教育をしています。

私はこの放課後等デイサービスを立ち上げ、私自身が少年期に「こんなことを教えて欲しかった」というようなことを今のこども達に教えています。

・自分の得意なことを見つけて伸ばして欲しかった
・自分の得意な将来の道がどこにあるかを教えて欲しかった

というようなことです。



職場でこども達と接していると、「あ、私と同じようなミスをしている」というようなことがしょっちゅうあります。私も発達障害当事者として身に覚えがあることなので、なぜそうなっているのか、感覚的に理解できます。

しかし、親御さんたちとお話をしていると「どうしてそんなことをしてしまうのか」がわからないという声をよく聞きます。

私たちの脳の中でどのようなことが起こり、なぜそのような失敗をしているか、私たち以外にはなかなか伝わらないのです。

脳を取り替えっこして、私たちの脳を体験してもらえればすぐにわかってもらえるかもしれませんが、現実的にそれは不可能です。

当事者の周囲の人達に理解してもらうために私たちができることは「私たちの脳はこのような考え方をしてしまう癖があり、こうすれば解決できる」という「取扱説明書」を作っておくということです。

そのためには、自分の取扱説明書を持つことが最初のステップになります。

「私は口頭での指示を整理できずに忘れてしまったり抜けてしまうことがあるが、紙やLINEに、箇条書きに指示を書けばそれを実行することができる」
「毎週月曜日は疲れやすいので、その日は仕事を頑張り過ぎない」

こういったレベルでOKです。

その取扱説明書ができれば、自分を客観的に見つめることができます。「できないことはしない」という対処法をとることもできます。トラブルが起きる前に避けることも、苦手をカバーするための方法の一つです。うまく対処できれば自信に繋がり、心の余裕も生まれてきます。

次のステップは「環境を探す」ことです。

仕事に費やす時間は人生の約3割を占めますが、この仕事をする環境が合わないと苦痛を感じやすくなります。

「やりがい」も大きなモチベーションになりますが、実は「環境」の方が大きく人生に影響を与えると私自身は感じています。

ここでいう「環境」は、一般的な職場環境より広い意味で使っています。「そこにどんな人がいるか」「どのような時間配分になっているか」「通勤にどのくらいの時間がかかるか」など、働く上で自分に関わる人、場所、時間などの要素のことを指しています。

私たちが他者に貢献しつつ、自分らしく生活できるかどうかは、この「環境」に大きく左右されています。

仕事を始める前に一度お試しで働くことができれば、「環境」が自分自身に合うかどうか想像しやすくなります。インターンシップや実習などの機会は増えつつありますが、全ての会社に導入されているわけではありません。

面接の時の印象と実際に働いてみてからの印象が異なることもしょっちゅうありますし、少し時間が経った後に環境が変化することもザラにあります。

この繰り返しで、上手くいかない経験が蓄積すると少しずつ自信を無くしてしまいます。「環境」との相性が悪かっただけだとしても、自分のせいだと考えてしまえば、挑戦する前から選択の幅を狭めてしまったり、本当ならばできることであっても過去の出来事に囚われて「できない」と脳が勝手に判断してしまったりすることがあるかもしれません。

働く前にしっかりと「自分」を知り、「環境」がそこに合うのかどうかをしっかり見極めていくことが大切です。私はこの2つが、自分を幸せに導くパターンへ変容していく鍵になりました。



私は大人になってから、ホームレスになるなどさまざまな苦労をしてきましたが、今は「この仕事をずっと続けていたい」という気持ちで、前向きに幸せに働いています。

それは私自身が「得意なことを見つけ、周りのサポートを受けながら、自己実現ができている」という環境を作り出せたからです。これは人との巡り合わせの運もありましたが、まずは「自分を知ることができた」という一歩があったからだと思います。

大変なときは「自分がダメなのかもしれない」と思いがちですが、自分自身の扱い方が見えていない、もしくは環境が合っていない場合もあるのではないでしょうか。

次回は「自分」と「環境」の見極め方について、もう少し具体的な方法をお伝えしていきたいと思います。

Text by
池田 誠 twitter facebook youtube note

ADHD当事者で放課後等デイサービスを運営しています。発達障害児の得意分野を伸ばし、発達障害との付き合い方を身につけていき、将来に活かすための活動を行っています。

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