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自分の障害を子どもにどのように説明するのか。

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2022.3.19

子どもが大きくなってきたことで、私の障害に対する関心が深くなってきました。ちょっとした質問攻めを食らうことも。ただ、当事者である私自身にとって大切なのは、どのような答えを準備するかではなく、どのような態度で、どのような意図をもって、子どもに向き合うか、ということに気づきました。

執筆:佐々木 一成 Kazunari Sasaki

2人の子どもが7歳と3歳になり、私の障害に対する関心が深くなってきたのか、質問が具体的になってきました。

いつからそんな足になったの?
どうしてそんな足になったの?
痛いの?
大変なの?
治るの?

先日の中村珍晴さんの記事にもありましたが、いよいよ、ちゃんと説明しないといけないな、誤魔化したり取り繕ったりは良くないなという状況になってきました。

個人的な感覚としては「逃れられないな」というところ。自分自身の障害理解や障害受容が試されているなという気持ちでもあります。



子どもへの回答準備が、意識的に障害と向き合う機会に

自分の子どもに対して、自分の障害をどのように説明するのか。

子どもからの問いかけは「5W1Hプラスアルファ」なので、

・いつから障害があるのか(→生まれつき)
・どこの障害なのか(→両足と右手)
・何の障害なのか(身体障害&発育不完全)
・どうして障害を負ったのか(→生まれつきだから何とも。事故や病気と言えると楽かも)
・治るのか(→ムリ)
・痛いのか(→最近痛みが出てきたね)
・大変なのか(→最近大変さを感じるようになってきたね)

というような答えを準備していく感覚。

生まれつきの障害者だと「なぜ」がなかなか難しいなとか、今まで困っていなかったことが加齢のせいか困るようになってきたなとか、いろいろな気づきを与えてくれます。

子どもの頃から自身の成長とともに障害理解や障害受容が自然に進んできたせいか、初めて「意識的に障害と向き合う」という経験を積んでいる気がします。

これまで学校や職場、スポーツの場や合コンで聞かれることはあっても、正直に言えば、真剣に答えを考えてはいませんでした。その場の空気感に合わせた回答を整えればよく、大喜利とは言いませんが、うまい切り返しをとっさにできるかどうかという意識が強くありました。

不誠実だと言われたことも、そういう態度をとるということは障害受容できていないのでは?と聞かれたこともありますが、どのような説明をすれば相手が引かずに受け取ってくれるか、会話のやりとりが円滑になるかを常に考えているとすれば、自分で言うのもアレですが誠実だし、障害受容できていなければここまで相手に配慮はできないと思っています。

ただ、自分の子どもに対しては別。あまりに小さければ「うまい切り返し」のほうが状況によっては良かったこともありましたが、いよいよ「正確さと丁寧さ」が重要で、真摯な説明が求められているなと感じます。



「多様性」に触れ合うきっかけであり、原点にならざるをえない

自分の父親が障害者であったならば、自分に障害がない限り、一番身近な障害者であり、「自分とはちょっと違う何か」がある存在です。マイノリティとのファーストコンタクトかもしれません。

自分の存在が障害理解、ひいては多様性理解の原点になるかもしれないと考えると、責任重大なのでは?と感じたことで、真摯に説明しなくては…と思い至りました。

持論を展開するならば、障害理解や多様性理解なんてできないと考えています。自分自身の障害、自分と他者に違いがあることについて理解を深めることはできても、相手のことを理解することはできません。知ることはできても、理解することは無理。

それくらい「理解」という状態は難しく、ちょっとくらいの知識・認知・興味程度で「理解」なんていうのは勘違いも甚だしいし、おこがましいし、安易に使っていい言葉ではないと障害当事者である僕自身は思います。同じ障害者というカテゴリであっても、他の障害に関しては素人同然です。マイノリティの別属性なんて言わずもがな。

ここまで考えてしまう人間だからこそ、説明って難しいなと感じましたし、事実だけを伝えることが大切だなと思いました。

結局のところ、聞かれたら真摯に答えるけれど、わざわざ説明の時間を準備することはないですし、おそらく加齢が原因となりそうですが、今よりも障害の状況が悪化し、日常生活に支障を来すようになったときに説明機会を準備すればいいのかなというのが本音です。

ただ、子どもからの質問が具体的になったからこそ、「意識的に障害と向き合う」ことができ、「障害(理解)に対する意見を再認識できた」ことは有意義でした。

小さい子どもとの接点は、障害者にとって大事な機会かもしれません。

1985年生まれ。生きづらさを焦点に当てたコラムサイト「プラスハンディキャップ」の編集長。
生まれつき両足と右手が不自由な義足ユーザー。年間数十校の学校講演、企業セミナーの登壇、障害者雇用コンサルティング、障害者のキャリア支援などを行う。東京2020パラリンピック、シッティングバレーボール日本代表。

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