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インターセクショナリティとは?女性×障害者の生きづらさを考える②

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2022.4.5

16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車いすに。先日、ゲストとして招かれて「バリバラ」の収録に行ってきた。「女性障害者の恋愛のなやみ」がテーマだったのだが、、実は女性障害当事者同士で恋愛や性の悩みを語らったことがなかった。悩みや考えを共有することで起こった、自分自身の変化についてまとめてみた。

執筆:豆塚 エリ Eri Mametsuka

先日、NHK Eテレで放送されている、生きづらさを抱えるすべての人のためのバリアフリーバラエティー「バリバラ」の収録があった。

※放送は4/8金曜日の22時半から。TVerやNHKプラスなどで見逃し配信もあります。よかったら観てください!



テーマは女性障害者の恋愛や性の悩み。局内のスタジオではなく、少し離れたところにある貸しスタジオで、女性障害当事者のみの座談会という形で収録が行われた。

スタッフもほとんどが女性。何かとタブー視されがちで語りにくいテーマであるために配慮がなされたのだろう。女性ディレクターによる収録前の聞き取り取材の際にも、自身の恋愛や性の話を人前でするのには抵抗はないか、顔出しはしないほうがいいか、など、配慮が感じられる取材の進め方だった。

私の場合、もとは健常者であり、健常者のときにも恋人がおり、障害者になってから結婚をしているので(離婚もだが)、それほど抵抗感がない。全国放送で堂々と本音で語ることで社会に漂う「タブー感」を少しでも減らすことが出来、語ることが当たり前になればいいと思った。

とはいえ、実は女性障害当事者同士で恋愛や性の悩みを語らったことがない。というか、そもそもそんな「悩み」を誰かに打ち明けたことがあっただろうか? 

思えば、すべてが済んでから笑える失敗談として話すとか、ほとんど自分の中で答えが出てから誰かに打ち明け背中を押してもらうことはあったかもしれないが、いわゆる「悩み」の状態で誰かに相談するということをしてこなかったのに気がついた。

悩みを相談して到底わかってもらえるとは思えなかったし、話したところで解決しようがない。なぜなら恋愛や性の話は極めて「個人的な」ものだから…と思っていた。

だから、女性障害当事者と話す必要性を感じてこなかったのだ。恋愛がうまくいかない理由を障害があるせいにしたくない、という気持ちもあったかもしれない。障害のせいにした途端、それは自分の力では解決しようのない問題になってしまう。それではどうしようもない。


photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)


けれども、今回の座談会でその認識は変わった。座談会に参加した当事者はみんな同世代で車いすに乗っていたが、それぞれの障害は違う。

生まれつきだったり中途障害だったり、言語障害があったり、身体に緊張があったり、感覚がなかったり。そういった特性によって困りごとは様々あった。

例えば、生まれつき障害がある場合、プライバシーを確立しにくく、また周囲の偏見から性や恋愛についての情報へのアクセスが難しい。言語障害があると話すこと自体が大変だったり聞き取りにくかったりと、円滑なコミュニケーションが困難だ。

共通の問題もあった。女性は家事・育児や介護など家族のケアをせねばならないというジェンダー規範があり、むしろケアをしてもらわなければ生活をすることが出来ない女性障害者にとって、その規範を守ることは難しい。そのことに罪悪感を覚えたり、出来ない自分自身を否定したり。

婦人科の先生に障害についての知識がなく、希望する薬を処方してもらえなかった、というのもよくある話。障害によってもたらされるバリアが話せば話すほど出てきた。

私自身も、そういえば本当は困っていたけれど言語化する機会がなく、すっかり忘れてしまっていたことをそのときになって思い出し、思い切って口にしてみた。すると「わかる」「大変だよね」とすんなりと受け止めてもらえた。

このときの感覚を言葉で説明することは難しいが、わかってもらえなかったり否定をされたりすることなく、ただ受け止めてもらえただけで気持ちがすっと楽になる感じがあった。その場の空気が濃密になり、連帯感というか、親密さがぐっと増したような気がした。

また、一から説明しなくても、大体をなんとなくわかってもらえているという信頼感があり、こちらが「わかってもらおう」と努める必要がない。それはなんと楽なことか。

もう今更どうこう思うことはないが、普段から自分の障害のことを理解してもらうために意外と労力を割いていることに気づいた。


photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)


何よりも印象に残ったのが、マッチングアプリの話題。4人いたうちの2人がマッチングアプリで出会いを探していることを語ってくれた。

興味はあるものの、地方在住なのもあり、勇気がなくて使えない私は興味津々に聞いたが、自分磨きを頑張っているおしゃれな大学生が、「気になる男性に車いすだと思い切って告げるとその後気まずくなり、去られてしまう」と告白。もうひとりの、話し上手で親しみやすいアラサーの女性も、それに共感する。それも、一度や二度の話ではないようだった。

「障害のある自分自身のことは愛せるけれど、誰かに愛してもらう自信がない」…。そう思ってしまうのも仕方がない。私は、それなりに恋愛はしてきたという自負はあるものの、それでも毎回、障害のある自分を好きになってもらえるかどうかが気になり、自信を喪失する。

彼女たちにはきっとそのうちいい人が現れるはずだと私は勝手に信じているが、障害のせいで恋愛することに困難が生じていると言わざるを得ないだろう。その現実にやはり傷つくし、具体的な解決策も思い浮かばない。

当事者同士で話を聞きあうことによって、私達が引き裂かれ、ひとり陥っていた狭間ーインターセクショナリティが浮き彫りとなり、連帯感を強めることが出来た。私一人だけの悩みではないのだと不安が薄れ、安心と勇気を与えてもらったように思う。

次回の記事では、そのあぶり出された問題のほうに注目したい。

1993年生まれ。詩人。16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車椅子に。障害を負ったことで生きづらさから解放され、今は小さな温泉街で町の人に支えてもらいながら猫と楽しく暮らす。
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