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電動車いすの身体障がい者にとって働きやすい職場に欠かせないポイント!職場環境編③

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2022.4.16

車いすの身体障がい者にとって働きやすい職場環境にするためには、どんな工夫をしたらいいのでしょうか。車いすユーザーの私は建物のどこをチェックして、会社の方達にどのような配慮をお願いしてきたのか。今回はエレベーター、スロープ、段差のこと、ファイリングやコピー機の操作についてまとめます。

執筆:佐々木 美紅 Miku Sasaki

私は脊髄性筋萎縮症という、生まれつきの病気のため、電動車いすで生活しています。

脊髄性筋萎縮症とは、体幹、腕、脚など全身の筋肉を動かす脊髄の細胞に異常があり、筋力が低下していく進行性の難病です。

車いすユーザーが仕事をする上で、職場環境で工夫していただきたい点がいくつかありました。これまでも、通路幅の確保とデスクの高さについてや、ドアと多目的トイレについて書かせていただきました。

今回はエレベーター、スロープ、段差、そして、ファイリングやコピー機の操作についてまとめます。

注意していただきたいのは、車いすユーザーだからといって、すべてが当てはまるわけではないということです。電動か手動式なのかも違ってきますし、体の大きさによって車いすの形も変わってきます。

※私の電動車いすの寸法は(全長×全幅×全高)1,085×650×870mmです。参考になれば幸いです。


エレベーター

エレベーターやスロープは車いすユーザーにとって必要なものです。

日常的に仕事で通う場所にエレベーターがなかったり、段差だらけだったりすると、かなり不便な上に怪我や事故の危険性も高くなってしまいます。できればエレベーターやスロープを設置していただきたいと思います。

私の電動車いすは重さが85 kg あります。かなり重たいので毎回人の手で持ち上げてもらうのは大きな負担にもなりますし、あまり現実的ではありません。

私は面接を受ける上で、建物にエレベーターやスロープがあることを条件としておりました。エレベーターについても、大きく分けて二つのポイントを確認していました。

ポイント1 エレベーターのボタンの位置

以前勤めていた会社が移転したとき、新しいビルには業務用のエレベーターしかありませんでした。
ビル側から使用許可は下りたのですが、筋肉疾患がある私は手がほとんど上がらないため、回数ボタンが高くて押せませんでした。

新しいビルであれば、車いすユーザーでも届きやすい位置にボタンがあることがほとんどなのですが、私の場合は低めのボタンだとしても押すことが大変で、棒を使って押していました。

ポイント2 エレベーターの広さ

ビルによってはエレベーターがあっても、狭くて入れない場合もあります。入社前に、できれば車いすのサイズを確認して、設置されているエレベーターに乗ることができるか確認されることをお勧めします。

スロープ、段差

エレベーターのところと重複する部分もありますが、毎日車いすで通うところですので、段差やスロープの有無も大きなポイントとなってきます。

私が通勤していたビルは、完全バリアフリーではなく、建物が古いためビルの入口には5段の段差がありました。荷物を運ぶ用のスロープはありましたが、かなり急で一人では上ったり下りたりすることができませんでした。

電動車いすはモーターの力があり、自力で上がれると思われやすいのですが、傾斜が急だと坂道を上がれないこともあります。そのビルもスロープが急で後ろにひっくり返りそうになるため、人の手で押さえてもらう必要がありました。

下る時も体が前のめりになって車いすから落ちそうになるため、向きを変えてバックで降りるようにして、他の人に毎回支えてもらっていました。

かなり昔の話になりますが、スロープが急だったことがあり、車いすごとひっくり返り頭を打って怪我をした先輩もいました。 スロープがあればいいというわけではなく、角度も重要になってくるのでその点も確認して頂けたらと思います。

スロープの設置については、バリアフリー法で基準が定められています。詳しくは、そちらを参考にしていただけると助かります。

ファイリングやコピー機の操作

次に、ファイリングやコピー機の操作です。

一般の会社では、ファイルが置かれているロッカーやコピー機の高さは、歩ける人に合わせて作られています。そのため車いすユーザーにとっては利用しにくい環境になっています。

コピー機がオフィスの端に設置されていて、そこまでの通路が確保されておらず、たどり着けないこともありました。もし、車いすユーザーもコピー機を使うのであれば、配置位置を変えたり、通路を確保したりしていただけると助かります。

エレベーターとスロープと来て、コピー機の話題になると「どのようなつながりが?」と思われるかもしれないのですが、私にとっては同列の困りごとなのです。

また、車いすというより、筋力が低下する病気の影響で困ったことなのですが、私は自分の手が上がらないので、事務仕事の中には自分一人だと難しい作業もありました。ファイルや書類などの持ち運びが一例です。

ロッカーから物を取ってきてもらうなどお願いする時は心苦しかったです。相手の仕事の様子を見ながらお願いするしかありませんでした。データで送れるものはなるべくメールで送り、どうしても自分で取りに行けないものは、同僚に取ってきてもらいました。

他にも、ファイリングの作業も穴あけパンチを使って穴を開ける力もなかったですし、ホッチキスで止めることもできなかったので、難しい仕事でした。

初めてそのことを伝える時は緊張しましたが、会社の皆さんは理解してくれ、私はできることを自分でやり、できないことは周りの方にサポートをしてもらっていました。

一般的に「事務仕事なら車いすユーザーでもできるだろう」と思われがちなのですが、このように工夫をしなければいけないことがあるということを理解していただければと思います。


まとめ

建物や環境をすべてバリアフリーにするというのは難しいかもしれません。しかし工夫をしたり、手助けをしていただくことで、クリアすることもあります。

入社する前に環境を見せていただいたことで、実際に働く上でのイメージがしやすくなりました。企業側にとっても「この環境で働けそうか」を見て判断してもらうのは大きなメリットがあるのではないでしょうか。

また会社の都合でビル移転をするときも、職場の方が私の意見も大切に聞いてくださったことがとてもありがたかったです。

同じ車いすユーザーであっても、通路の広さやエレベーターの大きさなど、一人一人条件は違ってきます。車いすユーザーを雇われている会社の方は、本人の口から「どのような環境であれば働きやすいのか」を聞いていただければと思います。

脊髄性筋委縮症のため、電動車椅子。コミュニティFMラジオで番組を担当。十三年務めた旅行会社で、通勤とテレワークを経験。障害者の就労、恋愛、結婚、アルコール依存症の母と過ごした日々などを、発信。体は動かないが世界とつながりたい。NHK障害福祉賞優秀賞。ライターとして執筆にも力を入れている。

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