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上級生に持病をからかわれて…「心臓病がうつる」といじめられたあの日

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2022.4.25

小学1年生の頃、心臓病であることを理由に上級生からいじめられ、一時期、学校に行けなくなった。

病気を理由にいじめが起きた時、私たちは誰にどう助けを求めればいいのか。また、発せられたSOSを周囲は、どう受け止めればいいのだろう。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

上級生から「心臓病がうつる」といじめられた

小学校に入学して、数ヶ月が経った頃。休み時間に校庭で遊んでいると突然、6年生の男子3人組から「お前、心臓病なんだろ?」と声をかけられた。

怖い。反射的にそう思い、黙っていると3人は私を取り囲み、言った。「心臓病がうつるから、遊具を触るな。学校に来るな」と。

私の病気は、うつらないんだよ――。そう伝えたかったけれど、自分より大きな体を前にし、怖くて口が動かなかった。

それを機に、3人組は校内で私を見つけるたびに近寄ってきて、「心臓病がうつる」と、からかうようになった。やがて、自ら、休み時間に私のクラスへ暴言を吐きに来るようになった。

学校に行きたくない。そう思い、仮病を使って休むようになった。「いじめられている」の一言が、親には言えなかった。いじめられている自分が恥ずかしく、情けなく感じられたし、子どもながらに、ずっと迷惑をかけてきたという思いがあったため、打ち明けることができなかった。

たまに登校できても、3人組にまた「学校にくんな、心臓病」と言われ、何も言い返せず、ひとり悩む日々。

やがて、3人組はすれ違うだけで「気持ちわるっ」「悔しかったら運動してみろよ」と笑うようになり、私は本格的に学校へ行けなくなった。

私が来るのを校門で待ってくれた校長先生

異変を察した母は、「いじめられてるの?」と尋ねてきた。けれど、私は「うん」の2文字が言えなかった。いじめられている自分が悪いと、なぜか思えてしまったから。

けれど、母の執拗な問いに耐え切れなくなり、ある日、上級生にいじめられていることを告白。すると、母はすぐ学校に相談。いじめっ子の名前を出していなかったのに、学校側はすぐに動いてくれ、その日のうちに3人を特定。放課後に教室へ呼び出し、「自分が言われたら、どういう気持ちになる?」と指導してくれた。

そして、叱るだけでなく、私の病気がうつらないこともしっかり教えてくれたのだ。

私はその時、学校に通えていなかったので、そうした対処がなされたことを母から聞いた。「これで、もう大丈夫だよ」と言われたが、登校するのは正直、怖かった。

けれど、勇気を振り絞り、恐る恐る学校へ。すると、校長先生が校門の前に立っていた。そして、私に「これから毎朝、ここで会ってお話しようね」と言ってくれた。おそらく、校長先生は、私が相談する機会を持てるよう、自ら校門に立ってくれたのだ。

その言葉通り、校長先生はその日から私を校門で迎え、私が特別に扱われているように見えないよう、他の子にも「おはよう」と声をかけるようになった。怖いと思う日は、一緒に教室へ行ってくれた。

また、全教師と、いじめの件をしっかりと共有してくれたようで、私の担任はいじめっ子が私のクラスに来るたび、目を光らせてくれ、養護教諭は私がひとりでいると、「保健室で一緒に遊ぼう」と言ってくれた。

当時、私は友達がなかなかできなかったので、周囲の大人が話し相手や遊び相手になってくれて嬉しかったし、心強かった。

きっと、田舎の小さな小学校だからできた配慮だったのかもしれない。けれど、こうした大人たちの優しさがあったから、不登校にならずにすんだのだ。

いじめっ子の同級生が味方になってくれた

教師の指導が入ったことにより、3人のうち2人はその後、いじめてこなくなった。けれど、残りのひとりからのいじめはなくならず、「気持ち悪い」「学校くんな」と言われ続けた。

辛かったし、怖かった。けれど、やがて、そのいじめっ子と同じ6年生の女の子が、私を守ってくれるようになった。

例えば、逃げ場だった図書館でいじめっ子と遭遇してしまった時。「そんな本読むの?だせえなあ」と笑われ、何も言い返せない私をかばってくれ、「早くどっか行って」と追い払ってくれた。

おそらく、いじめっ子と女の子はクラス内では比較的、会話を交わす仲だったのだろう。だからこそ、強く言い返せるのだろうなという印象を、幼いながらに私は受けた。

そんな優しくて強いお姉さんの姿を見て、きちんと反論することのかっこよさを学んだように思う。

住んでいる地区が同じで、家が近い。たった、それだけの理由で、女の子は卒業するまで私を守り続けてくれた。

大人ではなく、親しい同級生から注意されるようになったことで、いじめっ子が自ら近寄ってくることはなくなった。結局、いじめが終わったのは、その人が卒業してからだったが、自分を気にかけてくれる存在が周りにたくさんいたから、私はいじめられても死が頭によぎらなかったのだと思う。

差別や偏見をなくす第一歩は「病気を知ってもらうこと」

もしも、最初にいじめられた時に「心臓病はうつらない」と説明できていたら、あのいじめはどうなっていただろう。歳を重ねて、この記憶を振り返った時、そう思うことがある。

「心臓病はうつらない」と、私の障害に関する知識をいじめっ子に教えてくれた先生のように、自分の口で持病を堂々と説明できていたら、どうだっただろう。いじめの後、そう考えることが多々あったから、私は自分の障害を説明し、知ってもらうことを意識するようになった。

障害にまつわるいじめは、障害をよく知らないことから生まれることも少なくないように思う。もしかしたら、あのいじめっ子たちも、本当に心臓病がうつらないことを知らなかった可能性だってある。少なくとも、「心臓病ってなに?」とは思っていたはずだ。

だから、互いの間に溝が生まれたり、憶測で病気を語られたりすることがないよう、まずは伝えること・知ってもらう努力をしていけたらいいなと個人的に思っている。

そして、当事者の口から上手く説明できない時は、当事者の気持ちを聞きながら、「障害を本当に理解する機会」を周りが作ってあげることも大切なのではないかと思う。

けれど、もちろん、それですべてのいじめが解決するとは限らないから、説明をしても状況が変わらない、あまりにもいじめがひどい、SOSを周囲に受け止めてもらえないといった場合、当事者には何よりも自分の命を守ることを最優先に考えてほしい。障害と共に生きてきた自分を責めたり、嫌いになったりしなくてもいいような道を選んでほしい。

偏見や差別、無理解にさらされ続けて心が壊れない人生を、ひとりでも多くの障害者が手に入れられるよう、願う。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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