PARA CHANNEL Cage

全盲の大学4年生の私が音声配信で伝えたいこと

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2022.4.30

私は都内の大学で社会福祉を学んでいます。2週間に1回、Facebookで障害に関する情報や、ゲストの方を招いたトークの音声配信をしています。音声配信と原稿、どちらも先天性の全盲の私の経験を盛り込みながら、社会で問題となっていることについて少しでも関心を持ってもらえるような発信をしていきたいです。

執筆:藤岡 郁弥

「2022年○月○日、こんばんは。みなさんはいかがお過ごしでしょうか。」

2週間に1回、このあいさつから私の音声配信はスタートします。

私は先天性の全盲、現在都内の大学で社会福祉を学んでいる、大学4年生の藤岡郁弥と申します。今回は、自己紹介も兼ねてこれまでの簡単な経歴と、現在私が行っている音声配信についてお伝えさせていただきます。


福岡から上京して考えさせられたこと

出身は福岡ですが、高校生になるタイミングで上京してきて、今に至ります。

小学校から中学校までは福岡にある実家近くの盲学校で過ごしてきました。少人数教育、時には一学年の生徒は私一人だけの時もありました。ところが、東京の盲学校では一クラスが20人と一気に人数が増えました。

特に、高校の3年間では、福岡の盲学校では経験のなかった「自分の存在をアピールする」ということについて考えさせられました。健常者の方々にとっては20人というクラスの人数は多く感じないかもしれませんが、私にとって「20人」はとてつもない数でした。

「自分の存在をアピールする」ために、放課後などに「どこの部活に入ったの?」などの質問をして、自分から積極的に話しかけて、相手との共通点を探るようにしました。

コミュニケーション力を向上させようと努力するうちに、改めて自分から声をかけることは大切だと感じるようになりました。「視覚障害者は街中などで知らない人に手伝ってもらう機会も多いのだから、初対面の人ともコミュニケーションをとれるようになった方がいい」と思うきっかけにもなりました。

高校時代に、自分と向き合ったり、ボランティア活動等の経験を積み重ねていくうちに、福祉に関心を持つようになりました。現在、社会福祉士の国家試験を受けるために大学で学んでいます。

私がこれまで行ってきた音声配信

冒頭に書いたセリフからのスタートで、2週間に1回程度Facebookで障害に関する情報発信やトークセッションを行っています。

私は、2021年5月に企業の方から「やってみなよ!」と勧めていただき、その方と一緒に音声配信を始めました。私の今までの人生を振り返って色々な話をしたり、今まで使ってきた視覚障害者にとって便利なアプリの紹介をしたりしてきました。

回数を重ねていくうちに少しずつ慣れてきて、「もっと他の人の情報も知りたい、発信していきたい」という思いが強くなり、毎回テーマを決めて、私の後輩や同級生にゲストとして登場してもらい、内容をアップデートしました。例えば、これまで行ったテーマには「視覚障害と旅行」・「視覚障害と実習」などがあります。

音声配信を続けるうちに当たった壁の乗り越え方

音声配信をここまで継続することは簡単ではありませんでした。毎回のテーマ選びや、そのテーマについて一緒に話してくれる人を探す必要があります。

その壁を乗り越えるために、私は1日1回はニュースを見るようにしました。「どんなテーマにしようか」と選ぶときに、実体験だけでなく社会の動きを参考にしています。法律の改正や政治・経済のニュースを知っておくと、話す内容が深まっていくことに気づきました。

また、配信を聴いてくださる方の反応が気になってしまうこともありました。配信中のコメントが少ないときには「本当に視聴者さんに伝わっているのかな?」「視聴者さんはどんな思いで聴いてくださっているのかな?」という不安もなかなか消えません。

不安払しょくのためにも、毎回のテーマの中で自分が伝えたいこと、ゲストとともに発信したいことを大枠の部分だけでもあらかじめ明確にしておくようにしました。この準備ひとつで、自分の軸をしっかり持つことができます。ゲストと発信したい内容の軸の部分を共有しておくと、伝えたいことに全力を注げるようになり、コメントの内容や数によって、内容が左右されにくくなりました。

今後は障害という枠にとどまらず、外国人やLGBTQについても触れていきたいです。マイノリティの人たちの抱えている課題や現在、社会で問題となっていることについて身近に感じ、少しでも関心を持ってもらえるような配信にしていきたいです。


まとめ

今回は、自己紹介として私が大学で社会福祉を学ぶまでの経歴と、昨年から取り組んでいる音声配信についてお伝えしてきました。

原稿を書く上で大切にしたいことは、自分の言葉で伝えること、そして、読者にとってわかりやすいように書くことです。1回目でどこまでできたかは分かりませんが、数を重ねることで上手くなるのではないかと自分に期待しています。これは配信でも感じたことです。

わかりやすくするためには、特定のテーマについて客観的、かつ論理的に書いていくことも必要だと思いますが、それだけでは伝わらない部分もあります。自分の実体験を盛り込み、納得感や説得力の強い原稿につなげられればと思っています。

先天性の全盲で現在は大学で社会福祉を学びながら就職活動に奮闘中です。趣味は美味しいものを食べること、人とお話しすることです。ぜひFacebookも覗いてみてください。そのとき、メッセージでパラチャンネルのコラムみた!とお伝えください。

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