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【特別三社対談】インクルーシブな社会の実現に向けて全ての人にできること

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2022.5.19

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする特別対談企画。写真は左からデコボコベース株式会社 松井清貴(まついきよたか)さん、学校法人 柿の実学園 小島澄人(こじますみと)さん、一般社団法人 sukasuka-ippo 五本木愛(ごほんぎあい)さん。今回は三社による特別対談企画を抜粋してお届けします。

執筆:デコボコベース株式会社

はじめに

今回のテーマである「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加ができる環境になかった障害者の方々が積極的に参加貢献していくことのできる社会、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い人々の多様なあり方を相互に認め合える全員参加型の社会です。そうした社会を実現する手段の一つとしてインクルーシブ教育(障害のある者とない者が共に学ぶ仕組み)があります。

しかし、共に生きる上で私たちは障害を特別なものにとらえ過ぎているのではないか、ということに疑問を持ち、今回障害者を取り巻く環境を多くの方に知ってほしいと、この特別三社対談は実現しました。

本イベントの主催であるデコボコベース株式会社は、「発達に凸凹があっても、社会の一員として自然に受け入れられ、活躍できる」社会の実現を目指し、児童発達支援「ハッピーテラスキッズ」、放課後等デイサービス「ハッピーテラス」、就労移行支援「ディーキャリア」など発達の凸凹があるお子さまから大人までを対象に支援しています。

今回登壇いただいた学校法人柿の実学園は、創業60年を迎え、神奈川県川崎市を中心に17の保育園・幼稚園を運営しています。『日本でいちばん大切にしたい会社』大賞の厚生労働大臣賞受賞法人であり、児童1000名(1割以上が障害児)が障害の有無で区別することなく、一緒に歌い、遊びながら生きる力を育んでいます。

同じく登壇いただいた一般社団法人sukasuka-ippoは、神奈川県横須賀市で障害児の母親が中心となり横須賀のバリアフリー子育て情報サイト『sukasuka-ippo』、インクルーシブ学童sukasuka-kids、インクルーシブ託児所sukasuka-nurseryなどを運営しています。学校や放課後にある普通級や支援級のような区切りではなく、障がいの有無ではなく互いが育ちあっていける場所を目指されています。

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする特別三社対談企画。障害のある子どもを抱える保護者の皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。

インクルーシブ教育とはなにか? 事業×インクルーシブな取り組み

文部科学省は、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会を共生社会として位置づけ、解決する手段としてインクルーシブ教育があるとします。インクルーシブな社会の実現に向けて、それぞれの事業運営におけるこだわりを教えてください。


>五本木さん
sukasuka-ippoはインクルーシブを基本的な柱とした5つの事業を展開しています。背景には、私に6人の子どもがいて、6人目の娘に「アンジェルマン症候群」という障害があることがあります。娘を育てる中で必要なもの・ことを、同じように障害児を育てるお母さんたちと解決していくために事業をしています。その1つとして、普通級や支援級といった区切りなく子どもたちが交われる場所があってほしいと考え、インクルーシブ学童を作りました。

インクルーシブ学童では障害の有無ではなく、一緒の時間を過ごすことでお互い育ちあっていける「心」の部分を大事にしていきたいと考えています。年齢も障害も本当に多様な子どもが同じ環境に入るので、最初は「自分と違う」ことに拒否反応を示すなど、かならずトラブルがあります。ただ、そこで辞めるのではなく、半年~1年後の自然な関係性の変化を楽しんでほしいと親御さんにもお伝えしています。


>小島さん
柿の実幼稚園では入園前に必ず園長の私と面接をし、お母さんの気持ちや子どもの様子を把握してどんなケアをしたらいいかを考えます。日本には親の想いや障害の状況をしっかりと把握すれば入園が可能なはずなのに断られてしまう現実があります。30~40の園から断られて最後に柿の実にたどり着き、遠方から引っ越してくる方も多数います。ですが、日本全国どこでもそういう人達が受け入れられる社会になることが本当の願いです。

そのため、私たちは「てくむの会」や「て・くんで歩む会」といったコミュニティを発足し、親同士で話し合い、悩みを共有して支え合える仕組みを職員と共に作っています。


>松井さん
私たちの会社は、お二方のように事業内でインクルーシブな取り組みを行うという形ではなく、インクルーシブ社会の実現に向かって障害のある方が自立していくための専門的な支援を提供しています。

こだわっているのは、凸凹が活きる社会を創るために、支援者として多数派と少数派の間に立って通訳をすることです。支援の世界でも、学校や会社に適応させようとするあまり「凸凹をならそう」という支援をしてしまうことがあります。しかし、本来は少数派を多数派に引きずり寄せるだけでもダメですし、少数派の側に立って多数派とぶつかってもダメです。だからこそ当社のスタッフには、学校機関や企業をはじめとする社会と当事者の間に立ち、相互理解を促進する支援ができるようになるための専門的な知識・スキルを身につけてもらえるよう、質の高い研修にかなりの予算を使っています。

真のインクルーシブ社会の実現に向けて必要なこと

障害児を持つと「すみません」「迷惑かけてごめんなさい」など、保護者の申し訳ないという姿勢が先行する日本人の気質は、インクルーシブ教育を実現するうえでの弊害になっていると五本木さんは話されます。真の意味でのインクルーシブ社会を実現するには、「障害児を持つこと=周囲に迷惑をかけること」という潜在的な固定観念に囚われている社会の意識を少しずつ変えていくことが必要だと訴えます。


>松井さん
少数派だけでなにかを変えるのは難しいので、大多数のいわゆる健常者側もお互いにちゃんと理解をして敬意を示し合わないといけないです。その観点でインクルーシブ教育は、メリット・デメリットではなく必須だと考えています。最近減ったかもしれませんが15年ほど前に発達障害という考え方が日本に入ってきた頃は、親の育て方が悪いなどと言われていました。当事者のお母さんからは祖父母世代の身内から批判を受けてつらい、という話も耳にします。


>小島さん
くわえてインクルーシブ教育は、その目的が子どもの「自活」であることも大切ですね。本来は、何でもしてあげるのがケアではなく、本人が苦手なものを自分で1つ1つクリアすることを目指し、大人になったときに親や兄弟ではなく地域社会のサポートで生きていけるようにすることが重要です。そうでないと、当事者の家族にとって足かせになり続けてしまう。小さいころになんでもやってあげることで本人の自活を妨げてしまうケースもあります。


>五本木さん
あとは障害のことがわからない人は、障害を「理解」をしようとすると難しい専門知識を学ぶ必要があるのでは・・・とハードルが高いと感じてしまうのではないでしょうか。

私は知識や対応は二の次三の次で、「どんな子?どんなことが好きなの?」とまずは1人の子どもとして興味を持ってほしい・好きになってほしいと思います。「あの子かわいいね、好きだよ。」その一言でどれだけ救われるお母さんがいることか。そこから、その次の社会に発展していくんじゃないかと思っています。

真のインクルーシブ社会の実現に向けて、すべての人が豊かに生きるために必要なこと

松井さんは社会福祉を使ってただ生きていることと豊かに生きることは異なると話します。それぞれが豊かになる自立・自活を実現するために私たちは何から始めればよいのでしょうか。


>五本木さん
いろいろなところで断られたり批判されたりしてきて、前向きな心持ちになれないこともわかりつつ、自分も含めた当事者の親自身も自分の中に「勇気」を持つことが必要だと考えています。極端な例ですが、医療ケア児を育てていると「亡くなった次の日に死にたい」と考える母親もいます。

私自身、既存の福祉制度を使い、いろんな人の支援やサポートを受けて今日まできましたけど、心から納得して「大丈夫」と思うことはまだできていません。この先、自分で事業を作り、働ける場所や暮らせる場所ができたとしても不安がなくなることはないのかもしれません。それでも障害児やご家族が豊かに生きていていいんだと心から笑顔でいられるような社会にみんなで変えていきたいです。


>松井さん
「多様性を認める」という表現がありますが、認めるだけではなく、多様な人々に「敬意」を持って接すること。それがインクルーシブな社会においては何よりも重要なことだと思います。

そして、相手に対して敬意をもつには、想像力が必要です。たとえば、発達の凸凹から周りとうまく行かず学校にも行けなかったお子さんが、ハッピーテラスで楽しく過ごせるようになったとしたら、「自分とは違う苦しみや困難を抱えながらも今まで生き抜いてきて、私たちの教室で笑顔を見せてくれている。自分だったらそんなに笑えないかもしれない。強いな、すごいな」と、その子の持つ力に感動できる想像力が必要なんです。そんな想像力を、苦手な人もいるので全ての人にとは言いませんが、なるべく多くの方に持っていてほしいな、と思います。


>小島さん
自分の身近な問題としてそういう施設が必要だと思い、立ち上げ展開してきましたが…複雑ですね。

子供が育ち親は老い、大丈夫かな、という心配は常に付きまとうものです。亡くなる方が出てくると、お母さんが我が子を守れなくて、と自分を責めてしまわれます。だからこそ、孤独感を感じないように周りが互いに「あなたと共に在るよ」という思いだけは持っていてほしいですね。私たちはそのためのサポートを行いますので、子どもを預かっている間は、親も自分の時間を作り、楽しんで生きて強くなってほしいと願います。

取材後記

多様性や共生社会などの言葉が聞かれて久しいですが、表面的・形式的な取り組みもまだまだ少なくありません。

今回の特別三者会談によりインクルーシブ教育の本質を学んでみると、共生することがゴールではなく、その先にある子どもの豊かな自立・自活を目指すことの大切さや、共生することで行き届かなくなる支援の存在にも気づかされます。

共生することと区別された中での専門的な支援を受けること。
そのバランスこそが互いに育ちあえる社会に繋がっていくのでしょう。

デコボコベース株式会社は、発達の凸凹がある子どもから大人を対象に児童発達支援「ハッピーテラスキッズ」、放課後等デイサービス「ハッピーテラス」、就労移行支援「ディーキャリア」などを運営するソーシャルカンパニー。業界初のフランチャイズモデルを確立し、現在は直営16拠点を含め全国186拠点を展開している。
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