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できなくなったことを嘆くよりも新たな趣味や嗜好の発見を楽しむ

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2022.5.3

半身麻痺の障害を負うと、できないことがたくさん出てきます。できなくなってしまった趣味、諦めざるを得なかった嗜好品もあります。今回は、病前とは大きく変化した趣味や余暇の過ごし方についてです。

執筆:市川 潤一

半身麻痺の障害を負うと、できないことがたくさん出てきます。やれなくなってしまったことや、諦めざるを得なかった楽しみもあり、自分が思うように、今までと同じことができなくなってきます。

以前、麻痺の症状があるとどんな場面で困るのかということを書きました。

麻痺があると、生活面だけでなく趣味や余暇の過ごし方も病前とはかなり変わってきます。


私は心筋梗塞の手術の合併症で脳梗塞となり、左半身麻痺の後遺症があります。左の肩から下はまったく動かない全廃という状態で、左足も麻痺があるため歩行をするときには短下肢装具を着け、杖を使っています。

受傷前まで私は仕事が趣味のようなものでしたが、休日にはサッカーやフットサル、ゴルフなどを趣味として楽しんでいました。

さらに冬にはスノーボードやスキーなどもお遊び程度で楽しんでいましたが、片麻痺になって、走れなくなり、ボールも蹴れなくなり、クラブも振れなくなって、雪遊びに関しては転倒すると起き上がれなくなるので、それらを諦めることになりました。

また、1990年代のスニーカーブームの頃に20代前半だった私はスニーカーをはじめ、ブーツなどもよく集めていて、靴道楽をしていました。片麻痺になってからは、装具を付けなくてはならなくなり、履けるものが少なくなってしまいました。

当時の趣味関連のもののうちいくつかは、住んでいた場所を離れるときに、「○○が欲しい」といっていた友人に形見分けのようにあげたりしました。

ゴルフクラブセットやサッカーのユニフォームなどはともかく、靴はやはりサイズの関係で誰にでもあげることはできませんでした。いくつか持って帰ってきたもののなかには、多少、値がつくものもあったので、オークションなどで小遣い稼ぎをするために活用していました。

車やバイクの運転も好きでしたので、休みの日はドライブに出かけたり、近隣の街の美味しいものを食べに行ったりもしていました。車の免許はオートマ限定で更新することができましたが、二輪免許は更新できず、取り消しになってしまいました。

車も、「危ないからもう処分しろ。」と家族や病院などから口うるさく言われていたので、泣く泣く処分しましたが、今思えばオートマ車だったので、免許更新ができるのなら持っておけば良かったと後悔しています。

このように、障害を負うと、こちらのことを思って言ってくれているのでしょうが、周りの人たちの反対もあって、自分が思うように、今までと同じことができないこともたくさん出てきます。

車の運転などについてあれこれ言われるのはわかりますが、私の親類や家族の中には考え方が古い人間もいるので、「障害者になったのだから、危ないし出かけるな」や、「もう余計なことはするな」と言う人も多かったのには本当にうんざりしました。

私はヘビースモーカーで大酒飲みでもあり、飲みの席や場が好きだったこともあり、「タバコはやめても酒はやめないだろうなぁ?」などと仲間内でよく言っていましたが、今は片麻痺で足がおぼつかなくなったこともあり、病院でも「酒は足下が危ないから禁止」と言われたこともあって、すっかりお酒もやめてしまいました。

タバコは入院中に一切吸えなかったこともあり、きっぱりやめることができました。そもそも心筋梗塞を発症したことで、血管と心臓に良くないこともあり、たばこはどちらにしてもやめなければならなかっただろうと思いますが…。


このように病前の趣味や習慣ができなくなって、何か新しい趣味や息抜きなどを見つけようと探していたときに思いついたのが、コーヒーでした。タバコや酒を好んでいただけあり、こういう嗜好品にたどり着いてしまうのでしょうね。

きっかけは入院中にお茶や水以外で許可されていたのがブラックコーヒーだったことと、友人がコーヒー豆の販売を個人で行っていたこともあり、試しに飲んでみようと思ったからでした。

病前は、お客さんのところで出されても手をつけないくらい、コーヒーが苦手でした。しかし、この友人が焙煎したコーヒー豆は不思議と美味しく飲むことができました。

そこからコーヒーの美味しさや魅力にはまっていき、歩行リハビリのために出かけた際には喫茶店探しをするのが楽しみになってきて、今ではリハビリが目的なのか、コーヒーが目的なのかわからなくなってしまっています。

また、病気前から小説をはじめ、仕事柄から雑誌などを読むのが好きでしたが、片手だとページがめくりにくかったりするので、最近では紙よりも電子書籍で買うようになってきました。どうしてもコレクションしておきたいものは紙媒体で買っておきますが。

障害を負ってできなくなったこと、やれなくなったことはたくさんありますが、そのことを嘆くよりも、新たな趣味や嗜好を発見することを楽しんでいたいと思っています。

1975年生まれ。長崎県佐世保市出身・在住。愛媛県でライター・編集者・カメラマンなどとして活動していたときに脳梗塞になり、左半身麻痺の身体障害者となる。取材活動ができなくなり、ライターを廃業。障害者雇用の在宅ワーカーとなり現在に至る。障害者の仕事の仕方や見つけ方など自分の経験を紹介していきたいと思います。

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