3年ぶりの東京レインボープライド(TRP)へ!
~日本最大のLGBTsイベントで感じたこと
1 1
2022.5.11
前回まで、私のカミングアウト体験談をお伝えいたしましたが、今回は、つい最近行われた、日本最大のLGBTsイベント「東京レインボープライド2022」に行ってきた体験談をお伝えいたします。
執筆:瀬名 峻 Shun Sena
3年ぶりの開催!東京レインボープライド(TRP)
東京レインボープライド(略してTRP)は、毎年、ゴールデンウィークの時期に開催されていた日本最大のLGBTsのイベントです。
コロナ前の2019年には、イベントの動員数が約20万人とも言われており、年々参加者が増加。代々木公園一体が、LGBTsの当事者と、アライ(LGBTsの支援者)で埋め尽くされるような一大規模のイベントでした。
野外フェスとカラフルなお祭りを混ぜ合わせたようなイベントでしたので、小さなお子さんを連れた親子の姿を見かけることも珍しくなく、当事者・非当事者関係なく、その場を楽しんでいるような雰囲気でした。
「当事者の権利を主張するだけ」といったようなイベントですと、非当事者との間に分断が起こる可能性もありますが、このTRPは「誰しもが楽しめるような雰囲気作り」というのを主催者は意識している、と聞いたことがあります。
当日代々木公園のイベントブースでは、TRPに協賛をしたさまざまな企業の特設ブースや、当事者団体、当事者支援団体などのブース、そして飲食ブースが入り混じっており、その場は、誰しもが「自分らしくいる」ということを肯定してくれるような場でありました。
同性カップル同士が手をつないでいても、誰1人として、それを物珍しく見る人はおらず、普段、肩身の狭い想いをしているLGBTs当事者も、その場では堂々と自分らしくその場を楽しんでいられるような雰囲気があったのです。
そして、ステージエリアでは、著名人(過去には、浜崎あゆみさん、中島美嘉さん、Charaさんなど)のフリーライブが見られるといった演目もあり、日本中からさまざまな人が集まってきたような感じでした。
また、イベントブースとは別に、もう1つの催し物として、パレードがあります。ブース出展者や来場者の中の希望者が、代々木公園をスタート地点として、渋谷・表参道の公道を歩いて行き、代々木公園に戻ってくるイベントです。
こちらも2019年には、約7000名もの人がパレードに参加し、警察の手を借りて、交通整理のうえ、ずらーーと列になって歩いて行く様は、圧巻の光景でした。当日のメディアにも取り上げられることも多く、もしかしたら、映像でご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、そんなTRPもコロナの影響で2020年、2021年はオンライン開催となり、LGBTsがリアルな場で、一堂に会するイベントは、この2年間、息を潜めていたのでは、と思います。
リアルな場のチカラ
そうして迎えた2022年。感染対策を万全にして、3年ぶりに開催されたTRP。
2日目は、残念ながら午後、悪天候に見舞われたものの、それでも2日間で、かなりの来場者とパレード参加者がいらっしゃったと思います。
私は2日目に参加したのですが、今回、初めてパレードを生で見ることができました。
パレードでは、当事者やアライの人たちが、楽しそうに沿道の人たちに手を振り、車道を警察の手引きによって歩いていらっしゃいました。音楽を大音量で流しながら歩いていく様は、ディズニーランドのパレードを彷彿させるものがありました。
中にはおそらくパートナー同士であろう同性カップルが、手をつなぎながら堂々と公道で歩いていく様子を何組も見ることができました。
「道で手をつなぎながら歩いていく」
当たり前のようにそれをしている男女カップルには、なかなか想像もしづらいと思うのですが、同性カップルでは、その”当たり前”がなかなかできません。
”愛し合う2人が堂々と手を繋いで歩く”
その行為ができることが、その2人の絆をさらに強くし、2人がカップルでいていいのだ、ということを足らしめることにつながるのです。
だから普段はできなくても、TRPの場では、手をつないだり、自分がありたいと思う姿をありのままに見せることによって、LGBTs当事者が自身の「誇り」と「肯定感」を取り戻す場になっているのだと思います。
今までパレードの場を映像で見ることはありましたが、今回、生で見ることによって、その「チカラ」を直に感じることができました。
またパレードに参加していなくても、会場に足を運ぶことによって、「私は生きていてもいいんだ」と、自分を肯定することができる場になっているという参加者の声を聞いたことがあります。
オンラインでもさまざまな得られることがあると思いますが、やはりリアルな場であることによって、より一層多くの得れるものがあるのだと、個人的にも感じることができました。
TRPからみる当事者間の温度差
今回のTRPは、私の友人も多く参加していましたが、反面、当事者の友人の中には、開催していることは知っていたが、特に参加しようという意思がなかった人も多かったです。
コロナ禍のため、人混みを避ける、という意向や、天候が悪かった点もありますが、そこまでTRPという場に足を運ぶ意味を見出せなかった人もいるのかもしれません。
先ほども記載した通り、その場に参加することによって、自身を肯定する実感を持てる人もいれば、すでにある程度、自己を肯定していたり、仲間作りができている人によっては、わざわざ参加しなくても・・・ということになるのかもしれません。
協賛企業においても、今年は、コロナの影響もあって、協賛を見送る企業も多かったと聞いています。
であれば、このコロナが仮におさまった場合、来年以降のTRPで、また多くの企業が協賛したりすることによって、盛り上がりを見せてくれたら、と思うのですが、その反面、一時期に比べて、このLGBTsに関しての課題意識が、企業側で薄まっていないか、というのも危惧しています。
課題は山積みのはずのに、一時期のブームになっていただけなのではないか?そんな温度感も、当事者として感じることもあります。ただの杞憂で終わればいいのですが。。。
何はともあれ、年に1度の一大LGBTsにまつわるイベント。その関係者の方々に厚く御礼申し上げます。
もしこれを読んでいる方で、興味がある方は、来年も開催されるかと思いますので、ぜひ足を運んでみてください。
Text by
Shun Sena
瀬名 峻
誰にも言っていなかったゲイ当事者ということを、32歳の時に周りにカミングアウト。現在は、オープンリーゲイとして、研修講師や取材を受けている。本業のかたわら、ラジオパーソナリティとしても活動中。ネットラジオは毎日配信を380日以上継続中。麺類全般が好きで、毎日食べていても飽きない。流行りものが好きで、現在はサウナにハマり中。