視覚障害とはどのような障害? さまざまな見えにくさについて。
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2022.5.14
視覚障害には大きく分けて、視力障害、視野障害、色覚障害、光覚障害の4つがあります。今回は、病気で弱視から全盲になった私の経験について、そして、自分とは異なる困りごとを抱えた視覚障害者の支援をすることについて書いていきます。
執筆:小川 誠
私は全盲の視覚障害者ですが、視覚障害と一言で言ってもいろいろな症状、そしてそれに伴う様々な見え方があります。
視覚障害には大きく分けて、視力障害、視野障害、色覚障害、光覚障害の4つの種類があります。見ることに対して困難があることは共通していますが、その理由はそれぞれちがいます。
今の私は視力と視野が0の全盲ですが、以前は少し視力のある弱視でした。先天性の緑内障で、視野はほぼ正面しか見えない視野障害と、光の強さを判断する機能の障害である光覚障害も抱えていました。
今回は、視覚障害にはどのような方がいるのか。私の経験してきたことや、周囲の視覚障害の方達のことについてお話をしていきます。
視覚障害にはどのような種類があるのか
視覚障害とは、視力や視野などになんらかの障害があるため、日常生活または就労に著しく制限がかかってしまう状態です。眼鏡やコンタクトレンズなどの矯正機器を使用してもある程度以上の視力が出なかったり、視野が狭かったりします。
身体障害者福祉法で、視覚障害は視力、視野によって等級が定められています。
視覚障害の中でも、身体障害者手帳の交付対象になっているのは、視力障害と視野障害のみです。
視力障害のうち、全く視力がないことを全盲、少しでも視力があることを弱視と言います。あまり知られていないことかもしれませんが、全盲と弱視では弱視の方が圧倒的に数が多いです。私が通っていた盲学校でも、全盲の生徒がいないクラスがありました。
視野障害は、見える範囲が欠けてしまったり狭くなっていたりして、部分的にしか見えない障害のことです。
色覚障害は、赤色が見えづらいなど、色の見え方が異なっていて色の判別がつきにくい状態、光覚障害は、光を感じその強さを区別する機能が、障害により調整できなくなる状態のことです。色覚障害と光覚障害は、視覚障害には含まれていますが、身体障害者手帳の交付の対象にはなっていません。
視覚障害とひとくくりにしても、視野の一部が欠ける、眼球が揺れてものが見えにくい、二重に見える、ぼやけて見える、暗いところでは見えにくいなど、どのような困難を抱えているかは人によってちがうのです。
私が弱視から全盲になるまで
私は先天性の緑内障によって視力が徐々に低下し、視野も狭くなっていきました。緑内障は、眼圧が高くなることで視力が低下したり、見えない部分ができる疾患です。
5歳までは視力が弱かったものの、両目ともに見えていました。5歳で目の手術を行い、左目を失明し、右目の視力が0.03程度になり、視野はほぼまっすぐ前しか見えない状態となりました。小学校三年生の後半に視力が一気に低下して、その後数か月で全盲になりました。
また、弱視の頃には視力や視野の障害だけでなく、光覚障害もありました。そのときの調子によってバラつきはありますが、、暗い所から明るい所、明るい所から暗い所に移動すると目が慣れず、ほとんど何も見えない状態になってしまうのです。
日差しなどの光に敏感になり、目の痛みも感じる日も多くありました。夜になると、電灯を消した後も暫くの間明るく見える状態が続いていました。
視力障害と光覚障害が組み合わさり、複合的に症状が現れることもあるのです。
IT支援の現場で聞く弱視者の困りごと
私は普段、地元の視覚障害者福祉団体でIT支援の仕事をしていますが、この仕事を通じてさまざまな視覚障害者に会いました。
弱視者からよく聞く困りごとは、IT機器を使用するときに、文字が小さくて見えない、文字と背景がぼやけて見づらい、画面を見ていると目が疲労してしまうなどがあります。光覚障害の方は、ディスプレイからの光のまぶしさがつらいようです。
これらの問題が複数ある場合もあり、どうやってIT機器と付き合っていったらいいのか悩む方が多いのです。
弱視の方に対する支援は、利用者の方がどう見えているのか、また、どういった場合には見えづらいのかを聞き出して、使用するアプリや方法を一緒に考える必要があります。
私自身が全盲であることもあり、相手の見え方を理解するのがなかなか難しいので、弱視の方に対する支援は綿密にコミュニケーションを取りながら行っています。
まとめ
ここまで、視覚障害全般について書いてきました。
私は現在全盲ですが、弱視だった経験もあります。視覚障害当事者同士でも、全盲である私が弱視者に対してIT支援を行うことは難しいと感じています。
弱視の利用者の考えていることと、私の頭の中に描くイメージはどうしても違ってきてしまいます。私の中のイメージをなるべく利用者に近づけていくためには、対話を重ねるしかないのです。入念にコミュニケーションをとりながら、支援を進めていくように心がけています。
最近では、テレビ、ラジオ、SNS等で視覚障害に対する話題が多く取り上げられるようになってきましたが、さまざまな見えにくさを抱えている人もいるということはあまり知られていないように感じます。
当事者同士であっても、認識のズレは出てきてしまうものです。おそらく、見ることに困難を抱えていない人との認識のズレはもっと大きいでしょう。
どうすれば、視覚障害支援の活動と世の中の認識のちがいを解消していけるのか、これからもさまざまな方たちと対話をしながら考えていきたいと思っています。