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学校の集団検診で感じた「疎外感」と“子どもらしく”いられない歯がゆさ

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2022.5.23

幼い頃、学校での集団検診で泣いてしまったことがある。
持病をまだ受け入れられず、病状を完全に理解できていない私にとって集団検診は「大人であること」を求められる、苦しいものだった。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

「特別扱い」に思われた、大人たちの気遣い

新学期、学校で行われる集団検診が嫌いだった。出席番号順に並べられるものの、私の番が来ると、教師と医師がコソコソ会話。「あなたは後で」と言われ、最後に検診を受けるのが恒例。

そんな時、周囲から向けられる「あの子だけ、なんで特別扱い?」の視線が痛かった。

学校に入学した時やクラスが変わった時は、私に持病があることを知らない人が多くなる。だから、集団検診の時に刺さる視線が増えて、より痛い。

おそらく、教師たちは、他の子に私の症状が詳しく分からないよう、配慮してくれたのだろう。けれど、周囲から見るとその気遣いは「特別扱い」に映っており、私は集団検診で、いつも“異物”として見られていた。

検診の時だけ病気を隠しても、どうせ、いずれはクラスメイトに知れ渡る。だったら、「なんで、特別扱い?」とザワつかれるより、周りと同じように検診を受けて、「心臓が悪いんだって」と広まるほうが私にとっては良かった。

ひとりの障害児のために、大人たちが対応を絞り出してくれたことは、もちろんありがたい。けれど、あの時、誰かひとりでも「あなたは集団検診をどう受けたい?」と聞いてくれたなら、幼い私は検診の夜に泣かなくても済んだのかもしれないとも思うのだ。

「しっかりした子ども」であることを求められるのが苦しかった

集団検診では周りから浮くだけでなく、検診を担当する医師から怒られることもあった。特に記憶に残っているのが、小学校に入学したばかりの頃の集団検診で医師から言われた言葉だ。

当時、まだ幼くて、自分の病気のことがあまりよく分かっていなかった私は、飲んでいる薬の名前や病状を医師に伝えられなかった。

すると、医師は「そういうことは、自分のことだから知ってないとあかんよ」と半ばあきれながら、半笑いで私に伝えてきた。その言葉を受け、私は「自分のことなのに、何も分からない。なんてダメな子なんだろう」と感じ、その場で泣いてしまった。

たしかに、医師の言うことは正しい。大人になってから、この記憶を振り返ると、「自分のことだから覚えてほしい」と、気遣う気持ちがあって出た言葉だったのではないかと思う。

けれど、その一方で、幼い子どもが完璧に持病を説明するのは不可能に近いのではないかとも思うのだ。そんな「大人っぽい子ども」であることを求められ、苦しんでいる障害児は、きっと多い。

入院生活の中で欲求を我慢したり、食事制限・運動制限を守ったりと、障害児は健常の子どもと比べ、「物分かりのいい子」であることを求められるように思う。けれど、「障害児として生まれた=障害を受け入れている」ではないことも多いから、周囲から求められる「しっかりした子ども」でいることに心がついていかないこともある。

私の場合は、どれくらいの運動ならしてもいいのかを覚えることを面倒に思っていたし、周囲が楽しそうに遊んでいる姿を見るのが苦しくて、本の世界に逃げていた。そして、障害があることを誰かに伝える時は、いつも泣きそうになっていた。

そうした気持ちの障害児は、きっと私だけではない。だから、当人が障害を理解できない・受け入れるのが難しい年齢である場合は障害児がプレッシャーを負いすぎないよう、周囲の大人が配慮していくことが大切なのではないかと思う。

例えば、集団検診において言えば、事前に学校側へ提出する障害児の問診票を、当日に検診を担当する医師と、もっと深く共有し、不明な点があれば、検診前に保護者に確認するなどし、障害児に説明を求めなくてもいいような流れを作ってもらえたらありがたかった。

私が経験した集団検診は今から数十年も前の話であるから、もしかしたら、現在は当時よりも配慮がなされるようになっているかもしれないが、あの頃の私と同じように、幼いながら「病気の説明ができるほどしっかりした子ども」であることを求められている子は、まだ多いと思う。

そうした子たちが、ちゃんと子どもらしく生きられ、障害を自分のペースで受け入れていけるような社会になってほしい。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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