就職活動に正解はない。全盲の大学4年生の私の体験記。
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2022.5.21
私は先天性の全盲で、大学で社会福祉を学んでいます。大学4年生になり、今年の3月から始まった就職活動。どんな仕事に応募をしているのか、どんな媒体を使っているのか。就職活動を通じて経験したことや、考えたことについてお伝えします。
執筆:藤岡 郁弥
「就職活動?どうやるの?なにが正解?」
これは就職活動をする中で私が常に感じていることです。私は先天性の全盲で、社会福祉を学んでいる大学4年生です。今年の3月から就職活動がスタートしました。
今回は視覚障害当事者である私はどんな仕事に応募をしているのか、どんな媒体を使っているのかなど、これまでの就職活動の状況や、就職活動を通じて考えたこと、感じたことについて振り返ります。
就職活動を始めた3月の中旬は「福祉を学んだから、それを生かして相談業務に就くんだ!」と思っていました。
福祉のお仕事という福祉職専門の就職サイトを見ながら応募したり、ときには一般企業のオンラインの会社説明会を視聴したりしていました。現在はほぼ一般企業の障害者枠に絞って応募しています。
福祉業界を志望していた私が、一般企業の障害者枠に絞って就職活動をするようになった理由はいくつかあります。
まず、福祉分野の求人は公開される時期が一般企業よりかなり遅いのです。「福祉の仕事をしたい」と思っていたとしても、内定がもらえるとは限りません。もし、福祉業界で内定がもらえなかった場合、その時期には障害者枠で応募できる一般企業はほとんどないため、就職浪人をすることになる可能性が高くなってしまいます。
また、福祉業界では新卒の相談員の求人がほとんどありません。現場での介護を経験してから相談員へと進んでいくことが大半なので、そもそも応募先の数が少ないのです。
このような現状から、一般企業の障害者枠に応募をするようになりました。
正直に言えば、福祉職を完全に諦めたわけではありません。一般企業での経験をしてから福祉の仕事へ転職するという可能性もあると思います。これは未来の自分が決めることです。
ここからは、実際に私がどのように就活をしているのかを紹介していきます。
私は主に障害者求人を積極的に行っている企業の情報や就職フォーラムの情報が掲載されている、クローバーナビというサイトと、ウェブ・サーナというサイトを使用して求人を探しています。どちらのサイトも障害者の新卒・既卒向け求人が掲載されており、一般求人は記載されていません。
複数のサイトを同時に使うメリットは、幅広く求人を見ることができること、多くの就職セミナーに参加することができることです。
3月と4月はこの二つのサイトをほぼ毎日のように見ながらエントリーしては書類選考で不合格になることの繰り返しでした。
4月に入って友人から「履歴書は必ず他の人に見てもらったほうがいいよ」というアドバイスをもらったので、SNS上での配信や日ごろの活動の中でお世話になっている企業の方に見ていただきました。
「こりゃ、説得力がないから書類で埋没するわ。」と言われてしまいました。
特に学生時代に力を入れたこと、自己PRの部分を数回にわたって書き直しては添削してもらう過程を経て、今の自分がしっくりくる表現でまとめることができました。
就職活動の話をすると「なぜ大学の就職支援室を使わないの?」という質問をよくされます。
大学に何度か相談はしたことがあるものの、大学側はどこの企業が障害者を募集しているのか、あまり知らなかったようで、有益な情報を得ることができずやむなく相談を断念しました。
また、「就職活動は個人でするもの」と認識していることもあり、人に頼りながら就職活動をすることに対して多少抵抗感があるというのも理由の一つかもしれません。
そのような状況で、4月の後半に、ある企業から「ぜひ次の選考に進んでほしい」という連絡をいただきました。ゴールデンウィーク前に一次面接を終え、本原稿が掲載される頃には、うまくいけば最終面接、うまくいかなければすごろくでいう「振出しに戻る」ことになるでしょう。
就職活動を始めたばかりのころは、「大学で福祉を学んだから、それを活かして相談職につきたい」と思っていました。
実際に福祉業界について色々と調べたり、求人を見たり、色々な一般企業の説明会を聞いたりしていくと、少しずつ考えは変わってきました。就職活動は自分とご縁のある会社を探すことではないかと思うようになったのです。
履歴書を他の方に添削してもらいながら書き直すなど、自分について考える時間も長くなりました。自分の大学時代に力を入れたことは何なのか、自分が企業の人に向けてPRできるのはどんなところなのか。
自分にたくさん問いかけることで「自分は心に余裕が無くなるとイライラしてしまうな」などの短所にも気づけました。これまでの自分について考えることは、自分探しの側面もありました。
3月からの就職活動を振り返ってみると、就職活動を始めたばかりのころは、どこかで正解を求めてきた自分がいました。今は、「就職活動に正解なんてないんだ」と、しみじみ思います。