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「物書きになんてなれるわけがない」と言われていた私が仕事で得られた希望

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2022.6.27

私は小さい頃から文章を書くのが好きでした。
それはお絵かきと同じような感覚で、なんとなく日記の延長線上で小説のようなものを書いたり、全くの創作のファンタジーや子どもが思いつくレベルの恋愛小説などいろいろと。

小学生の時にどうしても自分の文章が活字でプリントされたものを見てみたくて、安いワープロを買ってもらいました。それがキーボードで文字を打つ最初の一歩。
年月が経ち今ではライターとして、文章を書くことがメインの仕事をしています。

執筆:和泉屋(いずみや) izumiya

以前のコラムでもお話しましたが、私の父親は私がやること全てを否定して「意味がない」というモラハラをする人で、他にもいろんな要因が重なり虐待から病気を発症しました。

そんな父親から「お前のやることは全て無意味だ」と言われる機会を減らしたくて、絵を描いても文章を書いても、本を読むことすら父親にはなるべく見られないように隠していたんです。

楽しんで書いているものに評価を求めているわけではないのに、いいか悪いかをジャッジされると悲しくなりますよね。

ただ楽しいからやっている、父親はそれもわかっていたと思います。

おそらく私が“何かを楽しんでやっている”、のが嫌だったんだろうな…と今では思うのですが、当時はそこまでは思い至らずとにかく父親には見られないよういろいろと隠していました。

私が小学校の頃に手に入れたワープロは、文字を打ってプリントする。本当にそれだけの機能で、かろうじてフロッピーディスクに保存することができるくらいの簡単な機械。

それでも自分の考えた文章が活字になるのが、本当に嬉しかった。

ある日どういう方法でなのか、父親がそのワープロの中のデータを見たようで「物書きを目指しているのに、こんなものしか書けないなら物書きになんかなれない」というようなことを言ってきました。

それまで私は自分の中でも「将来は文章を書く仕事がしたい!」と思ってもいなかったし、人にも言ったことはありません。勝手に決めつけて言ってきたのでしょうけれど、すごくびっくりしました。

明確な目標なんかないけれど、楽しく書いている。
ただそれだけのことを「将来物書きになりたいくせに」と先回りして打ちのめしてきた…というような感じでしょうか。
それに対してなんと答えていいのかわからず、ぼんやり無言でいたのも覚えています。

そんな過去を経てパニック障害やうつを発症してからも様々な仕事をし、産後は家でできる仕事をしたいという理由で、はからずも父親から話にならないと言われていた物書き(ライター)になりました。

数年経ち細々とですが仕事をこなし、依頼してもらえる件数も安定してきましたが、なぜか父から言われた「物書きを目指しているのに~」という一言はあまり気にしていなかったんです。
ひどいこと言われたなあ…なんて思い出すことはたまにありましたが。

おそらくそれは自分に関わることをダイレクトに書く仕事ではなく、クライアントの意向に沿って原稿を作成していたからなのかなと思います。

エッセイなども執筆していましたが、育児が中心になっていて自分の生い立ちなどに触れることがなかったからというのもあるのかもしれません。

ライター業としてなんとかコツを掴めた頃、こちらのパラちゃんねるさんで「自分の内面について」を書かせてもらうにあたり、ふと父親の言葉が蘇りました。

真っ白い原稿に、自分の生い立ちや障害、内面のことを書く。

そんな仕事に直面し対峙する中で、私は父親の「物書きを目指しているのに~」という言葉にかなり傷ついていたんだなと気づきました。

小学生の頃にはもう何か文章を書く仕事につきたいな、と思うきっかけもあったのかもしれませんが、あの一言で考えないようにしていたのかもとも思います。

パラちゃんねるさんで、「自分」を書き切り、その原稿がメディアリリースされ、報酬を受け取った。

そこで「私のやることには意味があり、物書き(ライター)の仕事を成立させ報酬をもらえた」という事実を、急に深く実感しました。

傷ついていたし、バカにされていた私の文章が誰かの目にとまり、仕事として報酬をもらえる。

意味がなかったわけではない、と思えました。

最初はただ子どものために在宅でできる仕事はなにかな?と、ライターという仕事を選び、次第にやりがいも感じ個人事業主としてやっていくことになり…その流れの中には、父親を見返してやろうとかあの言葉を覆してやろうとは思っていなかった。

でも地道に子どものため、自分のやりがいのために頑張っていたらいつのまにか父親の暴言を覆す結果に。

見返してやるもなにも、もう連絡もとれないけれど、私は父親に今の仕事の成果を知ってもらおうとは思いません。

ただ今まで頭の中にずっと引っかかっていたあの言葉を、自分でひっくり返せたことが、とにかく嬉しい。

今この文章の一文字一文字も、私と同じような経験をされて何かを抱えている方に届いて欲しいと思って一生懸命考えて考えて書いています。

それが意味のないこととは思えない。

私のやっていることには少なからず意味があり、物書き…ライターという職業を営めている。

父親としてはただ私を傷つけようとしてなんとなく言ったことでしょうけれど、ずっとずっと引っかかっていた言葉を自力でねじ伏せられた気がします。

今も不眠や過呼吸、過度の不安などで具合が悪くなることもありますが、私は文章を書くことでお金をもらっています。
小学生の頃、何も言い返せずぼんやりとあの言葉を聞いていた私は、明日もまた一文字一文字仕事として文章を綴ります。

私は、物書きになれました。

フリーランスのWEBライター。父親からの虐待を受けて育ち、パニック障害・鬱・不眠などの精神疾患があり手帳3級所持。現在はワンオペ育児をしながら、在宅ワーク中。23年一緒に暮らした猫を看取ってからは3人暮らし。母親業と仕事と家事でいつも疲労困憊。パンを焼いたりミシンを使ったり、手仕事が好き。「障害がありながら母として働く」ことの現実を綴っていきたい。

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