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“ものづくり”を通じて人間の尊厳を追求する。株式会社TENGA 代表取締役 松本光一さんインタビュー

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2022.6.26

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする障がい者雇用に取り組む企業インタビュー。今回は、障がいのある方々を支援する『able! project(エイブル・プロジェクト)』を展開する株式会社TENGA代表取締役 松本光一(まつもとこういち)さんのこれまでの歩みとable! projectへの想いについてさまざまなお話を伺いました。

執筆:株式会社TENGA

はじめに

株式会社TENGAは、”性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく”をビジョンに掲げ、セクシャル・ウェルネス商品の開発・販売と「性」に関する正しい知識、情報の普及を目指し2005年に設立されました。

人間の根源的な欲求である「性」を誰もが楽しめて、一人ひとりが自分らしく生きられること、その尊厳が守られることを目指す同社は、2022年5月より埼玉県川越市で就労継続支援B型事業所able! FACTORY(エイブル・ファクトリー)を運営しています。

今回は、株式会社TENGA代表取締役 松本光一(まつもとこういち)さんにこれまでの歩みとable! projectへの想いについてお話を伺いました。

『パラちゃんねるカフェ』がお届けする障がい者雇用に取り組む企業インタビュー。障がい者雇用を推進している企業やこれから働こうとしている障がいのある皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。

埼玉県川越市にある就労継続支援B型事業所able! FACTORYとable! CAFE

誰もが分け隔てなくワクワクが繋がる、就労継続支援B型事業所able! FACTORY

創業17年目を迎える株式会社TENGAは、性生活のサポートを目的としたプロダクトが有名です。就労継続支援B型事業所を開設するに至った経緯を教えてください。


私たちの活動は、全てが”性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく”のビジョンに向かっています。TENGA発売当初からLGBTQの方々を応援したり、その後高齢者の性の環境改善や性教育の取り組みを行ってきました。そのような、ビジョンにもとづいた活動の中で、障がいのある方の性の環境改善にも取り組んできました。


食欲、睡眠欲、性欲は、人間の三大欲求と言われますが、社会において「性」だけは特別視されています。そして、人間の根源的欲求であるにも関わらず、年齢や性別、障がいなどの特徴によって、「性」を楽しまないで良いとされる現状があります。これは、人の尊厳に関わる問題であり、able! projectは私たちが目指すビジョンを体現したものと言えます。


TENGAの“ものづくり”は、現状を知る活動から常に始まっているといいます。たとえば手の不自由な方の貴重な意見が、握力が弱くても利用できる補助具「TENGA用カフ」の誕生につながりました。able! projectでは、障がいのある方の「就労」に焦点が当たっています。


「TENGA用カフ」の開発にあたり、就労支援事業所の方々とお話する機会が増えたことで、障がいのある方々の「働く」環境を知るに至り、事業所を見学する中で、私たちの“ものづくり”のノウハウを活かし、私たちならではの価値提供ができるのではないかと考え開設を決意しました。

就労継続支援B型事業所able! FACTORYは、主に衣料品の印刷、able! TENGAの製造、PCのリペア、ECサイトの運営を担い、カフェやドッグランも運営しています。TENGAならではの価値提供とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。


“ものづくり”では、ものにこだわること、良い商品を作ること、そして、ちゃんと売れることが大切です。多くの人が欲しいと思ってくれる商品を作るには、習熟の伴う技術力が必要です。失敗と成功を繰り返しながらチャレンジし、良いモノを作れた時の達成感や自信は、代え難い経験となります。

さらに、able! projectでは売上の一部が特別支援学校や盲導犬協会などに寄付されるため、able! FACTORYで働く人は、誰かの役に立てる誇りや喜びも実感することができます。


障がいの有無、子どもや大人も関係なく、分け隔てない居場所があることで、子どもの意識も変化していくと話す松本さん。障害福祉や制度という枠組みに囚われず、人間の根源的な欲求や尊厳が満たされる居場所を追求していると感じます。


TENGAは創業までの間に、自主制作期間が2年間ありました。社会の評価もなく、前に進んでいる実感もなく、他人に喜ばれることもない。誰からの反応もないということは、取り組む意味や自分自身への存在意義を見出すことさえも難しくなってしまいます。


技術を覚え、少しずつできることが増えていく実感。その技術で完成したものを「欲しい」と言ってもらえる、喜ばれる実感。そして、仲間への貢献を実感することで得られるやりがいや生きがいは、何事にも代えがたい、価値のあるものです。さらに、それはより技術を追求するモチベーションへと繋がっていきます。


2022年4月29 日に、オープンに先駆けて開催されたable! ハローパーティでは、川越市長や川越市議会議員も祝辞を述べられ、高い注目が集まっています。今後のable! projectの展開を教えてください。


ハローパーティでは多くの来場者に恵まれ、すごく大事な一歩が踏み出せた気がしています。キッチンで勤務するスタッフが「こんなに長く厨房に入れたのは初めて。」と話し、スタッフの親御さんは「あの子が私に気づかないくらい一所懸命働いてるのを初めて見た。」と話されていました。

誰もが、自身が働いた先に、喜んでくれる人の姿を肌で感じられることで、働くエネルギーが湧いてきますし、私もその光景によって、働くエネルギーに溢れています。埼玉県川越市から始まった“ものづくり”によるワクワクや喜びを、どんどん広げていきたいと思います。

able! ハローパーティの様子

取材後記

「人としての敬意を持たないといけない。互いに尊重し、尊敬する。それが人と人において大事なことだと思っている。」と熱く語られる松本さんが、強く印象に残るインタビューとなりました。

「障害福祉や制度の枠組み」から始まる仕組み作りではなく、“ものづくり”を通じて人間の尊厳を追求する仕組み作りは、働く環境として本来あるべき姿なのではないかと感じます。制度やルールがあることで、選択肢を自ら狭め、本来あるべき姿から遠くなってしまう現状もあるのではないでしょうか。

株式会社TENGA 代表取締役 松本光一さん

株式会社TENGAは、”性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく”をビジョンに掲げ、セクシャル・ウェルネス商品の開発・販売と「性」に関する正しい知識、情報の普及活動に従事している。2022年5月より埼玉県川越市で就労継続支援B型事業所able! FACTORY(エイブル・ファクトリー)を運営する。

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