全盲の大学4年生が就活をしていて困ったこと
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2022.6.25
全盲の大学4年生の私が就職活動をすると、どんなことで困るのか。企業説明会でなかなか会場に辿り着けなかったり、合同説明会を回り切れなかったり。選考を受ける上で困ることと、どんな風に工夫しているのかについて書きました。
執筆:藤岡 郁弥
「梅雨に入って雨が多くなりましたね。」
こんな会話が日常的に聞こえてくる季節がやってきました。
私は先天性の全盲で、社会福祉を学んでいる大学4年生です。前回の原稿の中で、就職活動の状況について「今2次面接の結果待ちで、残念な結果であれば振り出しに戻り、良い結果であれば前に進む」と書きました。
まずはその報告から。実は振り出しに戻ることになりました。残念ではありますが、もっと自分に合う企業がきっと待っていると信じて、地道に就職活動を続けていきます。
とはいえ、「内定もらった」等の報告が友人からひょっこりと送られてくると、一緒に喜びたい気持ちと焦りの気持ちが混ざった複雑な心情になります。
今回は選考や説明会に焦点を当てて、全盲の私が就職活動をしている中で困ったことについて書いていきます。
私は企業選びの際、障害者求人のみを掲載しているクローバーナビと、ウェブ・サーナというサイトを使っています。また、最近では学生がよく使うマイナビも並行して使用しています。
しかし、三つとも掲載されている求人はほとんどが大手企業のもの。私は中小企業の求人情報も知りたいのですが、なかなか見つけられないのです。そのため、自分から気になっている企業や名前を知っている企業のホームページにアクセスし、新卒障害者採用情報を手に入れています。
全盲の私にとってネックになりやすいのが会社説明会です。説明会に出ないと選考には進めないという企業もあり、オンライン開催であれば助かるのですが、実際に足を運ぶ必要がある場合は会場までの移動で困ることもあります。
先日、ある就職セミナーに参加した際に、最寄り駅までは移動できたのですが、駅から会場までの距離が遠くてなかなか辿り着けませんでした。
視覚障害者は同行援護と呼ばれる、外出支援の福祉サービスを受けることもできるのですが、直前ではなかなか予約がとれないところが多い側面もあり、「この説明会に参加したい」と思って急に予定を立てても、とっさには、同行援護を使えない可能性もあるのです。
また、期待に胸を膨らませて出かけた合同企業説明会や就職セミナーでも、人数が多すぎて思ったように企業のブースを回ることができないこともあります。
私は当日までに会場までのアクセスを複数回調べ、ホームページに記載の駅から徒歩の時間を2,3倍で計算しています。駅から5分の場合、私は10分〜15分を想定しています。
そして、企業研究の仕方も工夫をしています。本来であれば多くの企業に出会える合同企業説明会で直接人事の方からお話を伺ったり、多くの会社説明会に足を運んで実際に働く社員の方たちに質問をしたりしてみたいところです。
ただ、合同企業説明会に行ったとしても思うようにブースを回ることができませんし、足を運べる企業説明会も限りがあります。そのため、いくつかの求人サイトを毎日チェックして、そこから情報をなるべく得るようにしています。
選考について困ることは、いくつかあります。
例えば、適性検査(SPIを含む)が音声読み上げソフトに対応していない場合です。
選考フローに適性検査のある企業には、人事の方にお電話で自分が全盲であることと、適性検査を受けたくても読み上げ対応ソフトが使えず受験できないことをご相談させてもらっていますが、対応の仕方は企業によってさまざまです。
こちらの事情を考慮した上で適性検査を免除していただけることもあれば、パソコンではなく対面で適性検査を実施してくださる企業もあります。「ご家族やご友人の支援を借りて受けていただけませんか。」と聞かれたり、「適性検査の受検をできないと選考は進めません」と断られたり、さまざまです。
あと、これは障害のある学生に限った話ではないかと思いますが、就職活動をしていて強く感じることは「人を見てほしい」ということです。就職活動を通して、地道に自分がしたいことや新たに挑戦したいことを探りながら一社一社と向き合っています。ただ、どうしても「障害」で人を判断されてしまうのは、心苦しいのです。
私は就職活動をしているときに、適性検査が受けられないなど人事の方や周囲の方にお願いをして配慮していただくことが多くなります。企業説明会に行く際も、街中で駅から会場までの誘導を他の方にお願いすることもあります。
障害があってもできることはたくさんあります。応募をする際は「もし、この企業に入社したら、自分は何ができるのか」を、一緒に働いていく方たちと一緒にじっくり考えていきたいと思っています。それが、障害者のいきいきとした社会参加につながるのではないかと信じています。