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障害者手帳と働きやすさ~当事者の体験からわかる吃音当事者が障害者手帳を取得する意義~

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2022.7.10

言語の流暢性に関する発話障害とされる吃音症。吃音の当事者は人口の1%の割合で存在し、日本には約120万人もの吃音当事者がいるとされています。

特定非営利活動法人日本吃音協会は、2021年5月に発足し、メンバー240名を超える当事者団体として活動しています。

執筆:NPO法人日本吃音協会(SCW)

はじめに

特定非営利活動法人日本吃音協会は『心からどもれる』街と人と社会づくりをビジョンに掲げ、吃音の当事者やご家族の包括的な支援や、就業支援、吃音の啓発活動を行う社会貢献団体です。2021年の5月1日に任意団体として発足、その後2021年11月11日にNPO法人として設立し、現在メンバーが240名(事務局、ボランティア)を超える団体となっています。

言語の流暢性に関する発話障害とされる吃音症。吃音の当事者は人口の1%の割合で存在し、日本には約120万人もの吃音当事者がいるとされています。

吃音の症状には、”ああああ”と音を連続する連発、”あーーありがとう”と音を伸ばしてしまう伸発、”…………ありがとう”と音が出せなくなる難発があります。常時、吃音の症状が出るのではなく、話す場面、話す相手、時期や環境に症状が変化するのが吃音症の特徴です。

また一般の人がイメージする吃音症は連発の場合がほとんどです。連発の成人吃音患者は少数のため、ほとんどが 難発タイプであり一層認識がされない現状があります。

本記事では、吃音症・社会不安障害で障害者手帳を取得し、大手ゼネコンで活躍されているT.K.さんに取材し、障害者手帳と生きやすさ・働きやすさというテーマで記事を執筆しました。

障害者手帳を取得するまでの経緯について

T.K.さんが障害者手帳を取得するまでの経緯について教えてください。


吃音の当事者の”あるある”ですが、就活の面接で特性により思うように結果が出ず、苦労して就職したのちに待っていたのは、普通に話せる方と同じ仕事の質が求められるということでした。総合職で給料をもらう以上、労働の対価をきちんと提供しなければいけないと自分を追い込み、結果として社会不安障害を発症しました。社会不安障害がきっかけとなり専門医と相談する中で障害者手帳の取得に至りました。


責任感が強かったり、真面目な人ほど、障害を“克服しよう”と自分を追い込み過ぎてしまうことがあります。障害者手帳を取得したことで働きやすさ生きやすさに変化はあったのでしょうか。


まず、自分自身に吃音の知識が深まり、吃音の症状が出ても”しょうがない”と思えるようになりました。それだけで、だいぶ心が楽になりました。あとは、障害者手帳がお守り(心の支え)になっています。

その次に、“障害者手帳を持つ吃音の当事者”だと社内や周囲に伝えやすくなりました。障害者手帳を取得したことが社内で自己開示のきっかけとなり、以前よりも働きやすくなりました。


とはいえ社内の反応はさまざまだったと話すT.K.さん。障がい者雇用への関心や取り組みが進んでいない企業においては障害や疾病に対する配慮も配属部署や上司、同僚に一任されてしまう場面も少なくありません。合理的配慮など社内倫理の統一は今後の課題になっていくでしょう。

障害者枠で転職活動をすること

T.K.さんは、現在は障害者枠で転職されていますが、人事の方や採用企業の反応はいかがでしょうか。


採用担当者の方の様子は“あれ、普通に話せるじゃん”と拍子抜けをしているかの様子でした。ただ、日常的な環境や状況の変化により症状は異なるため、面接当日の状態を前提とされないためにも“話せないときもあるのでそこは分かって欲しい”とも伝えています。


企業側の理解が十分でない場合、障がい者手帳にある等級の重い、軽いで当事者への対応を恒常的に決定してしまうことがあります。特性が見えづらい障がいにおいては当事者から配慮を求めることが大切になります。また、そのほかに障害者枠で転職して心境の変化などはありますでしょうか。


どもることが一切怖くなくなりました。障害者手帳のない一般枠での就職では、ひたすら吃音の症状をコントロールしようと躍起になっていましたが、手帳を所持してからは自然体で面接に望むことができました。

“吃音の症状が出てはいけない”と自分で自分を追い詰めることもなくなり、必要な配慮も求めることができるので気持ちに余裕が生まれました。


約120万人と言われる吃音当事者のうち障害者手帳の取得者が少数という背景を捉えると吃音の当事者は生きにくさよりも働きにくさで苦労する人が多いのかもしれません。

吃音の当事者として、そして障害者枠で転職活動をしている当事者として企業側に求めることはありますでしょうか。


私個人としては、話しやすくなる環境の整備や配慮をお願いしたいです。吃音症の恐ろしいところは、吃音が原因で社会不安障害や適応障害を発症することにあるからです。社内で、話しやすい環境や合理的配慮があれば、吃音の当事者が社会不安障害や適応障害の症状が出る可能性は非常に低くなるはずです。


まとめ

障害者手帳を取得するのも、障害者手帳を取得しないのも、一つの選択肢に過ぎません。障害者手帳を取得する過程で、または取得したことで、働きにくさが解消され、生き生きと働くことができるようになる、これこそが障害者手帳を取得する意義だと取材を通して痛感しました。

日本吃音協会では、生きづらさや働きづらさを抱えた個々人の声に耳を傾け、暖かい支援の輪を広げ、「吃音でも苦しくない」「言葉が流暢に話せないけど、人生が楽しい」そう心から思える場・街・社会づくりを目指しています。

障害者手帳の取得支援やその後の職業紹介支援を一気通貫で行っています。障害者手帳取得や職業探しで困難に直面している方は、ぜひ当団体にご相談ください。

心から『どもれる』街と人と社会づくりをビジョンに掲げ、吃音当事者やそのご家族の支援のその先を目指して活動中。『人』『街』『社会』という軸でプロジェクトを立ち上げ、様々なプロジェクトを運営中。YouTubeチャンネルやSNSを通した吃音の啓発活動、吃音の子供たちの学習支援、障害者手帳取得支援、就業支援、オンラインサロンの運営など活動は多岐に渡る。

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