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障害のある私が一人暮らしをするということ。

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2022.7.7

私はパニック障害とADHDの当事者ですが、一人暮らしを始めて3年が経ちました。今回は、私の一人暮らしのイメージと現実のギャップについて、振り返っていきます。

執筆:森本 しおり Morimoto Shiori

私はADHDとパニック障害の当事者ですが、30歳のときに一人暮らしを始めました。

一般的に、一人暮らしを始める時期としては遅いかもしれません。ずっと一人暮らしへの憧れはあったものの、障害と持病のある私が一人で暮らしていけるのか、自信がなかったのです。

この生活もようやく3年経ったので、一人暮らしを始める前に不安だった3つのこと、そして実際にはどうだったのかについて、まとめてみようと思います。


①体調を崩すのではないか?

まずは、健康面です。とにかく、体調を崩すのではないかと不安でした。

一人暮らしをしていると、頼れるのは自分。その肝心な自分が倒れてしまうと、立ち行かなくなってしまいます。私は30歳になるまでに体調を崩して仕事を辞めたことが何度もあります。それを繰り返さない保障はどこにもありません。

今のところ、体調を崩すことなく過ごせています。一人暮らしを始めてからは、体調管理にシビアになりました。睡眠、食事、運動などの生活習慣には人一倍気を使っていると思います。一人で寝込むのが嫌なので。

今振り返ると、他の人と一緒に住んでいたころは心のどこかで一緒に住む人に甘えていたと思います。

②お金に困るのでは?

2つ目は経済面です。お金の不安も健康と並んで大きかったです。

一人暮らしだと、お金の問題がより現実的になります。自分で稼いだお金で生活を送るので、稼げなくなれば生活が回らなくなります。

もし、何かしらの理由で収入が減ったり、退職することになったり、支出が極端に増えたりすると経済的に困ります。貯金が尽きれば、家賃も水道代も今日の食事代すら払えなくなります。想像しただけでもおそろしい。

今のところ、どうしても困る場面は訪れていないです。収入と支出を自分でコントロールできているという意味では、実家にいたころより経済的に安定しているように感じます。

③さみしいのでは?

3つ目は、人間関係です。もっとシンプルに言えば、孤独が怖かったです。

一人暮らしがさみしいという話はよく聞きます。困ったときに頼れる人がいない、「ただいま」と言う相手もいない、夜に電気のついていない暗い部屋に帰るのがつらい、誕生日やイベントを一緒に祝えない、などなど。

一人暮らしを始める前は、「一体、どれだけ心が荒れるのだろうか」と心配をしていました。孤独を紛らわすためにお酒に溺れたらどうしよう、行き着く先は孤独死…?とネガティブな想像がどんどん膨らみました。

蓋を開けてみると、予想していたほどはつらくなかったです。今のところ、私にとっては一人暮らしの孤独よりも、人と一緒にいるときの疎外感や分かり合えなさの方が耐え難いです。

一人暮らしを始めて「人がそばにいてくれることは当たり前じゃないんだ。」と知りました。以前よりも周囲に対する感謝の気持ちが出てきました。

この3年間、実際にどんなことで困ったのか

では、実際にどんなことで困ったのか。

小さなトラブルはたくさんありました。急にインターネットがつながらなくなっても誰にも聞けなかったり、どんなに疲れていても自分がやらなければ家事は溜まったり。うんざりする日もあります。

何より、ちょっとした出来事を気軽に話せないのは、やっぱりつまらないものです。会話は大事。

心理的にしんどかったのは、ワクチン接種の副作用がきつかったとき。39度出て節々が痛くて解熱剤を飲んでもあまり熱が下がらず、心細かったです。おそらく、これは一人暮らしじゃなくてもつらいですが。

ちなみに、私はADHD当事者ですが、公共料金の払い忘れとか、片付けができなくて汚部屋、探し物や無くしものだらけ、のような発達障害特有の悩みはあまりなかったです。私は発達障害よりも、精神疾患の悩みの方が大きい人なのかもしれません。


まとめ 

健康、経済、人間関係、ありとあらゆる不安を抱きながら始めた一人暮らしでしたが、蓋を開けてみると想像していたよりもずっと穏やかな生活でした。

「一人暮らしは簡単だ」とか「みんな一人暮らしをした方がいいよ」と言うつもりはありません。私はある程度の条件が整ったときに、自分の力を試してみたくなったのです。もっと、自立をしたかった。

3年経った今は、「一人暮らしは、そんなによくも悪くもないな」と感じています。

「最終的に頼れるのは自分」と思いながら暮らすことは、ピリピリとした緊張感があります。背筋は伸びますが、気を抜けません。

それでも、一から決めて、新しい生活を自分の手で動かしていく経験は自信につながりました。自分ができることは想像していたよりもずっと多く、世の中には私の知らないことがまだまだたくさんあります。

障害や病気は今でも私にとって大きな壁ですが、その理由だけでは色々なことを諦めきれません。

試してダメならその都度、調整をしよう。それでも上手くいかなかったら、仕方がない。トラブルや失敗も、時間がたったら笑い話や話のネタにしちゃえばいい。そう考えれば、このアップダウンの多い人生を面白がっていけるような気がするのです。

1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。
就職後1年でパニック障害を発症し、退職。27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。プラスハンディキャップなど各種メディアへ寄稿中。

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