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がんばりすぎてしまう、休むのがヘタなあなたへ。

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2022.7.29

組織において優秀で必要とされる人ほど「休めない」という言葉を口にします。

実際にその人がいないと回らない仕事も多くあるため、組織としてもその人に仕事を任せ続けるしかないというケースもしばしばあります。

そして、そのがんばり屋さん本人も「しかたない」と誰かに言い訳をしながら日々をやり過ごしているようですが、その問題は「休みを取らない」ことだけではありません。

執筆:いりえ(北橋 玲実)

会社組織や誰かに必要とされる、ということ自体はすばらしいことです。その人が独自に持っているスキルや人格が認められ、誰かに貢献していることにほかならないからです。ただ、そういった立場に置かれるからこそ逃げ場を失い、心身を壊していく人も多くいるのです。

前回のわたしの記事で、「他人やタスクにまみれて自分自身に注意が向かない」というケースを取り上げましたが、優秀ながんばり屋さんはその傾向が顕著だと感じます。

がんばり屋さんは非常に自立心が高く、幼少期から様々な事情によって高いスキルを身につけてきた方も多く、他人にも積極的にサポートをおこない、能力だけでなく優れた人格を持っていることも少なくありません。

一方で、がんばり屋さんが所属する組織は、どうしてもその人を都合よく使ってしまいがちです。人材育成を差し置いてがんばり屋さんにそのまま仕事を振って済ませてしまいます。もちろん緊急性を伴う場合はその対処が適切ですが、その対処をいつまでも続けていいとは限りません。

・・・という事実を頭でわかっていても、がんばり屋さんが他人に仕事を振って休むという決断ができないことの大きな要因の一つとして、「自分に休む許可を与えられていない」ことがあげられます。がんばり屋さんは常に他人のことを気にかける傾向にありますが、これこそが「自分自身に注意が向かない」ことにほかなりません。

この「自分自身に注意が向かない」ことは、言い換えれば他人や外部に関心を向け続けていることであり、「何かのために動いていないと落ち着かない」ということでもあります。

心当たりがある方も多いかもしれませんが、「何かをしていないと落ち着かない」という感覚は、当然ながらその人たちから「何もしないで休む」という選択肢を奪ってしまいます。

もちろん休むことができないことそのものが健康において大きな問題ですが、休むことを放棄してまで何かに必死にならなければならない、という思い込みを持っていることによる弊害はあまりにも大きなものです。

その思い込みは休むことだけを禁じているのではありません。例えば会いたい人に会いに行くことも、食べたいものを食べることも、さらに言えば自分の夢を追いかけることも自分自身から奪っているのです。その生活を長らく送っているために、「休むって…何すればいいの?」「別にやりたいこととかないし…」と自分の欲求に気付かなくなるほどに自身を抑圧しているのです。

だからこそ、がんばり屋さんに対して「ちゃんと休んで!」と伝えたところですんなり休んでくれるとも限りません。「何かをする」ことで生きがいを見出している人に対して生きる理由を奪うことにさえ感じられることがあるからです。

がんばることでしか自分を認められないとしたらそれはとても悲しいことですが、いきなりがんばることをやめさせようとしても、本人が居場所を感じられなくなるのみです。もちろん「がんばらなくてもいい」と思えるようになることが適切に休むために必要な考え方ですが、人の心はそんなに強くありませんし一日で考え方が変わるものでもありません。

このようながんばり屋さんに共通するのは「がんばることで認められたい」という欲求ですから、「休め」という言葉によってその人が認められるチャンスをいきなり奪うのではなく、がんばることのすばらしさを認めつつもがんばらなくてもいい、という今現在の相手も含めて受容することが大事なのです。このことは、がんばり屋さん本人が適切に休みを取るための自分への接し方としても有効です。

まずは、自分のことであれ他人のことであれ、がんばることのすばらしさを認めるという段階を踏むことで安心感を生み、「がんばらなくても十分すばらしい」という一歩進んだ自己受容に進んでいくことができるのです。

特に職場においてはがんばることや仕事が多いことを誇りに思う方も多く、休むことに対して他人の目を気にして遠慮する方も多いかもしれません。もし「休む」ことに後ろ髪を引かれる思いがするなら、今の「がんばっている自分」をもっと明確にほめる、ということから始めてみてください。

がんばることで周りが助かっているのも確かですが、多くの場合、本人はそれでも「まだ足りない、もっと」と感じているものです。

ですから、ささいなタスクや人助けができるたびに「おっけー!」「えらい!」という言葉をかけてみてください。最初はバカバカしいかもしれませんが、バカバカしいと思って避けてきたからこそ苦しい状況になっているのです。

がんばることそのものにも、がんばらないことにもそれぞれ良し悪しがあり、どちらが良いとか悪いということもありません。だからこそ、今すでにできている「がんばっている部分」をまず認めることができれば、同様に「がんばっていない自分」も認め、許すことができるようになるはずです。

とかくわたしたちは「できないこと」や「足りない部分」を補うために何かに没頭することが正しいと強く思いがちですし、できたことをほめられるよりもできないことを叱責される方が圧倒的に多いでしょう。

だからこそ、欠点の修正にエネルギーを使いがちですが、そんなことしなくても、すでにあなたはすばらしいのです。

そのように自己をありのまま認めることが、がんばる方向を誤らずに幸福に近づいていく手立てとなります。

いつでも、なんでも、誰でも肯定するアスペ。Estlaughtive代表。自己肯定感育成スクールを通して「『生きづらい』を乗り越えてありのままに生きる」ための考え方を拡散中。その他にもコーチング、コミュニティ、講演会の出演、経営コンサルを行う。著書2冊はそれぞれAmazon6、7部門ベストセラーとなった。

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