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私を守ってくれる義眼、その大切な役割とは?

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2022.7.23

私の眼は両方とも義眼なのですが、義眼ってどういうものかというのはあまり知られていないのではないでしょうか。今回は、義眼の役割や形、つけているときの感覚やお手入れ方法など、じっくり語ってみようと思います。

執筆:山田 菜深子

義眼。このワードを聞くと、どんなことが思い浮かびますか?

今私の眼は両方とも義眼なのですが、義眼ってどういうものかというのはあまり知られていないのではないでしょうか。

そこで今回は、義眼の役割や形、つけているときの感覚やお手入れ方法など、じっくり語ってみようと思います。私ではなく、義眼の言葉で。


義眼をつけてるときってどんな感じ?

僕の名前は義眼。プラスチックでできた眼球だよ。

僕のパートナーである菜深子と義眼との関わりについて、今からお話しするね。

菜深子がこの世界に誕生したとき、それはもう元気いっぱいの赤ちゃんだったんだ。優しい人に囲まれて、とっても幸せだったみたいだよ。

だけど、1つ大変なことが起きていたんだ。眼球が両方とも、ママのお腹の中でうまく形成されていなかったらしいんだよね。

彼女の目を守らなければいけない。そんなわけで義眼の出番がやってきた。彼女は4歳か5歳くらいのとき、初めて義眼をつけたんだよ。

義眼に対する第一印象を聞いてみたら、彼女はこう答えたよ。
「うーん、この子とは友達にはなれないな、って感じかな。」

最初はものすごく抵抗があったみたいだね。「何か異物が入ってきたぞ、気を付けろ!」って身体が警告を発してきたんだって。

外してしまいたい。不快でしょうがない。それでもママたちからは義眼と仲良くするように言われている。だからとにかく我慢していたらしいよ。

でも、そこを乗り越えればあとは楽なもの。耐えているうちにどんどんなじんでいったんだよね。

「今ではもう、当たり前のように一緒にいる親友ってところかな。」

彼女はそう言ってるよ。自分の身体に合っていないものをつけているともちろん違和感があるけど、きちんと合っているものならつけていることを忘れるくらいなんだって。

どうして義眼をつけるの?

こんなふうに最初は嫌な思いをさせたようだけど、実は義眼には大切な役割があるんだよ。まあ、「見えるようになる機能が搭載されている」なんてことは、まだないんだけどね。

まず、見た目をよくすること。菜深子も「きれいな眼ですね」と褒められることがあるんだけど、そんなとき僕はひそかにガッツポーズしてるよ。ちゃんと仕事をこなせてるな、って。彼女も喜んでくれてるはず。

それから、眼窩(眼の周囲の組織)の成長を促すことというのもあるんだ。菜深子の場合最初は子どもだったこともあって、この役割は特に重要だったんだよね。彼女がそんな事実を知ったのはずいぶん大きくなってからだったようだけど。

コロコロ転がったりしないの?

さて、ここで問題。僕はどんな形をしてると思う?

コロコロ転がりそうな球体を想像する人が多いかな。眼球って丸いものだから。フィクションの世界でも義眼が転がっていく様子が描かれていたりするしね。

でもね、僕は球体じゃないんだよ。半球状になっていて、眼窩に被せる形で使われるんだ。きちんと安定する形になってるんだよね。


お手入れってどうするの?

義眼はね、きちんとお手入れしなくちゃいけないんだよ。優しく、こまめにね。

石鹸でよく手を洗った後、義眼を水で濡らして指先でこすり洗いして、それから汚れを完全に洗い流す。そんなふうにしてきれいにしてくれると嬉しいな。

それとね、2年に1回くらいは義眼を作り替えることも忘れないでほしいんだ。長い間同じものを使い続けるのはよくないからね。

でも困ったことに、菜深子という人はずぼらだから、その辺手を抜きがちなんだよね。お手入れも交換も、先延ばししないほうがいいのになあ。

あ、そうそう。ずぼらといえば昔、驚きの事件を起こしたことがあるんだよね。菜深子は「言わないでー」って言ってるけど、この際だから暴露しちゃうよ。

彼女は寝るときなんかは左の義眼だけ外すんだけど、外した後ティッシュでくるんでその辺にポーンと置いておいたりするんだ。

あるときそうして置いておいて、何時間か経った頃、急に騒ぎ出したんだよね。「ない、ない!」って。

そのときティッシュにくるまれた義眼はどうなってたと思う?ゴミ箱の中にいたんだ。信じられる?

どうにかゴミ箱からは無事救出されたからよかったんだけど、僕としては本当に冷や汗ものの事件だったよ。

菜深子は、「私にとって身体の一部のような存在なのに、いやそういう存在だからこそと言うべきか、どうもぞんざいに扱ってしまうところが……」なんて言い訳してるんだけどね。

さて、そろそろお別れの時間だね。菜深子から最後に一言。

「皆さん、義眼目線の話を聞いてくださってありがとうございました。もう少しお喋りしたいところですが、私は今から義眼をきれいにしに行きます」

うん、そうだね。それがいい。今すぐお手入れしてもらわなくちゃ。気が変わらないうちに。

1987年生まれ。先天性全盲。「必死に頑張らない」がモットーであるが野望は大きく、世界を変えたい思いでライター活動を行っている。Amazon Kindleにてエッセイ集『全力でゆるく生きる~全盲女子のまったりDays~』を配信中。またブログやYouTubeで全盲当事者のリアルな日常を発信中。

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