精神障害者である私の障害年金受給について
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2022.8.10
私には精神障害の一つ、双極性障害という疾患があり、障害年金の厚生2級を事後重症で受給しています。
今回は、障害年金の手続きについて、自分の経験に基づき、覚えている限り書き記します。
また、私の場合の働くことと年金受給との関係についてまとめました。
執筆:藤森 桂 Kei Fujimori
まずおたずねしたい。
「あなたは年金の掛け金を払っていますか?」
厚生年金なら給料から引かれているから問題はない。もし国民年金で未払いだったら、すぐに支払うべきだ。もし経済的に困っていたら、役所で相談したら、減免される可能性が高い。
同じゼロでも、未払いと免除では雲泥の差だ。未払いだと、障害年金がもらえなくなる。私は国民年金免除から就職して厚生年金に変わり、そこで障害を負った。
先に言ってしまえば、下記の規定に当てはまったので、受給資格を得ることが出来た。
「障害基礎年金を受けるためには、初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていること(保険料納付要件)が必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
引用元:日本年金機構
私は国民年金の大半の期間を免除していたので、この規定には問題なく当てはまった。
私は障害のために病気退職を余儀なくされ、しばらく退職金や貯金を切り崩して生活していたが、経済的に不安を感じて仕事に復帰した。
派遣の編集職に就いたが、うつ状態の時ミスをしてクビになり、さらに精神科で双極性障害と診断されて「障害年金を受けたい」という考えが浮かぶようになった。
「いいけど、受けられるとは限りませんよ」私の相談を受けて、主治医が言った。「診断書は書きましょう」申請は「初診」ではなく、「事後重症」で行こう、ということになった。
事後重症となったのは、私をうつ病と診断した初診の診療所が廃院して、私の初診のカルテが入手できない状態だったからである。初診の診療所が今もあれば、「遡及」の対象になった可能性がある。申請時から初診時まで最高5年間年金をさかのぼってもらえるというものだ。
それにしても、私の初診の主治医が廃院を決めたのは、別に私のせいではない。タイミングの良し悪しで多額の受給額の差が出るというのはどうだろう。もっとも、似た状況で、年金自体がもらえない当事者もいるという。
事後重症はもらえる可能性があるだけ良い方なので、ここは割り切ったが、正直、今でも私はこの制度自体に納得がいかない。
とりあえず私の方では、診断書と一緒に提出する「申立書」を書くことにする。申立書とは、当事者自身または当事者の病状をよく知る人が、障害の状況についてまとめるもので、初回のみ必要な書類だ。
私は双極性障害なので「躁のエピソードを中心に書いてくださいね」と主治医から助言を受けた。
申立書を、専門の社労士に有償で依頼して書いてもらったり、アドバイスをもらって書く人も多いらしい。そのほうが通りやすくなるというのだが、状況によってはもちろん通らないこともある。私はその辺の事情を当時全く知らず、申立書は自分で書くしかないと思い、A4の白いコピー用紙に書き始めた。
ライターだから、普通に書くと文章がうますぎて、フルタイムの勤労可能と思われるのではないかと考え(われながら、なんて自信家!)、出来る限り悪文で、しかし押さえるべきところは押さえて書いた。もちろん躁エピソードは外せない。
結果、厚生2級と認定され(主治医は3級だと思っていたそうだ)、月あたり約10万円を受給している。もっとも、一生もらい続けられる決まったものではなく、何年かおきに再認定が必要だ(私の場合、今のところ3年ごと)。この時は、提出するのは医師の診断書のみでいい。
ここまで、私の場合を紹介してきたが、とりあえず「障害年金を受給したい」と思ったら、国民年金または厚生年金を払っているのであれば、主治医にまず相談するのが良いだろう。
その他の書類については、私が年金を申請した時と違って、マイナンバーカードで出来る部分もあるようだ。
今、どういう条件や書類や手続きが必要かは、詳しくはこちらをご覧いただきたい(複雑で使いにくいところもあるが、ここが一番詳しい)。
参照:日本年金機構|障害年金を請求する方の手続き
ところで、私は障害年金を「国からのお小遣い」と表現している双極性障害当事者の手記を読んで(しかも複数)、正直言ってイラっときたことがある。
少なくとも、私にとって障害年金は「血のお金」だ。私が仕事で得られるお金は、正直、大体の月で生活に充分足りるとはいえない。時々大きい仕事はいただけるのでなんとかしているが、双極性障害のうつ病相の時は頭の働きが鈍くなっているし、躁病相の時はおおむね浮かれてしまい、いずれにせよ健常者と全く同じに働くのが難しい現状、その分の生活を補填してくれる、命を繋ぐ年金だ。
ライターの仕事は続けたい。なんといってもやりがいがあるし、年金だけだと微妙に足りないし、どうもそれ以外の仕事にはあまり適性がないようだから。そういういろんな意味を背負って、私は書ける限り書いていきたい。
年金は新しい仕事のリサーチやキャリアアップにも使っている。障害年金を大事に使いつつ、障害が悪化しないように気をつけて、これからもずっとマイペースで仕事を続けていきたい。
Text by
Kei Fujimori
藤森 桂
双極性障害II型と双極性障害急速交代型の間で様子見中のフリーライター。障害者手帳2級、厚生年金2級。仕事で社会参加し、障害の中でも人生を楽しみたい。私の唯一の職能であろう、ライターのお仕事は常時募集中。別ペンネームで書籍、電子書籍、雑誌、新聞、WEBなどで活動中。ここでは自分が当事者である、双極性障害のことを中心に発信していきたいです。