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ADHDにおける「多動力」との向き合い方

~ある1冊の本から考える~

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2022.8.22

少し前に出版された、ある1冊の本を今回のコラムでは紹介しつつ、ADHDの多動性について考えたい。

執筆:マーチン Martin

世の中は様々な誘惑に溢れている。

感情や欲求へのコントロールが苦手なのはADHD(注意欠如・多動症)における多動性の特徴で、例えば多動性が悪く出てしまうと、以下の事例が起きかねない。

・試験勉強の息抜きでゲームを30分だけ遊ぶつもりが、朝方まで遊んでしまっていた。

・損失リスクについて、吟味せずSNSで知った投資情報を鵜呑みにして、多額の損失を抱えてしまう。

・散らかっている自席の書類の山を見て、急に「よーし、片付けるぞー!」とスイッチが入るも、書類の中身をキチンと確認しないまま次々にシュレッダーへ投入して見事に重要書類まで裁断してしまう(実話)。

こういったリスクがある。

じっくりと自分の中で検討・比較しなくてはならないところ、つい、反射的に行動に移してしまう。

そんな多動性のマイナスな部分ばかり目が行ってしまうところに、2017年にとある1冊の本が出版された。

多動力/堀江貴文(幻冬舎)

それがホリエモンこと実業家の堀江貴文氏が執筆した発行部数30万部超えのベストセラー「多動力」

「多動力」は注意欠陥及び『多動性』障害(ADHD)をもつ自分にとっては見逃せない1冊であった。

「三つの肩書きをもてばあなたの価値は1万倍」

「見切り発車は成功のもと」

「サルのようにハマり、鳩のように飽きよ」

今まで"落ち着きがない"に代表されるネガティブな言葉だった多動に力(ちから)がついて、ポジティブな言葉にされたのは僕にとっては衝撃的で、上記のメッセージはとても刺激的だった。

確かに、多動性の強みは思い立ったらGO!の思い切りの良さと、リスクを恐れずに挑戦する姿勢である反面で、

…続かない。

本当に続かない。3日坊主どころか半日坊主だってザラにある。

飽きや他に関心が移るなどして熱が冷めてしまったり、壁にぶつかったりすると途端に継続性という面では脆弱にも程がある。

しかし、堀江氏は好奇心の赴くままに行動する「永遠の3歳児たれ」と推奨しつつも、一度自分が受けた仕事については必ず一定のクオリティで仕上げる責任感を持ち合わせている(服役中の身であるにも関わらず、獄中からの手紙でメルマガの更新をコンスタントに続けた程)。

自分の趣味の範囲でならいざ知らず、金銭の契約や責任が伴う仕事において、自分が本能や好奇心の赴くまま"だけ"に行動して、自他共に納得できる区切りまで責任を持てるか?というと、

僕は正直自信が持てない。

仕事を引き受けるだけ引き受けといて、ある時、「やっぱりこの仕事への熱量があんまり出ないんで、ごめんなさい。中止で」

こんな言い分で済む人なんて日本に何人いるんだろうか。

それにやってみて、自分の知識や能力が全然足りない場合に低いクオリティの仕事で恥をかく恐れだってある。

多動力をビジネスレベルで力を使いこなす為には、責任の取り方や対応力や知識といった能力が必要不可欠になる。

それでも、ホリエモンのようにはなれない不注意や聞き間違いや管理能力に不安がある僕(ら)が多動力を生かすのであれば、

興味関心がある分野でローリスク・ローリターンのチャレンジに照準を合わせて行動に移してみるのはどうだろうか?

興味関心の赴くままに挑戦できて、失敗したとしても、大きな痛手を負うリスクの少ない物にターゲットを定め挑戦してみる。

例えば、
・未経験業種へのアルバイトの募集に応募
・ボランティアやインターンシップに参加
・地元自治体主催のイベントや講座へ参加
・創作物はネット空間にアップしてみる 
(YouTube、アプリ、フリマサイト等)

はじめは挑戦の規模が小さかったり、物足りないかもしれないが、繰り返し続けたり、少しずつチャレンジするターゲットの規模を大きくしていくことで、知識や対応力における経験値を積んでいくことが出来る。

今は退路を断たなければ挑戦できない時代なんかじゃない。

なろうと思えば(大成功するかどうかはおいといて)何にだってなれるし、どこへだって行ける世の中だ。

ただし、ここで注意したいのが、ちょっと自信が付いたからといって、人生オールイン(全賭け)や勢いに任せて退職、移住、離婚等といった重要な決断は避けた方がいい。

(僕がこれまで数多くの失敗を仕事やプライベートで重ねて、30歳過ぎて家庭もあるから、こういうポジショントークで言っているところもあるけど…)

でも、色んな顔、色んな居場所を持つことで、生き甲斐に彩りを飾る可能性が増える。

限られた居場所でつまんない顔をしてたり、今一つな評価しかされてないぐらいだったら、多動を生かしてみるのも一つかな、と。

  • 現場作業員として会社を支える自分
  • 熱烈な地元サッカークラブのサポーターとしてスタジアムに通う自分
  • 発達障害当事者会を主催して、当事者同士で心置き無く話している自分

どれもこれも全部自分。
だけど、全くもってそれぞれの居場所での評価や、自分の立ち位置は異なる。

退路まで断たなくても、小さくとも動けば、動いた分可能性が増え、動いた分人生が変わる。
たとえ、冒頭の多動が悪い方向に出たとしても、小さい失敗であればやり直しは利く。

僕らにとっては多動力は人生のスパイス。

多動力は過信しすぎない程度で利用すれば、人生に必ず彩りを与えてくれるはず。

1989年生まれの33歳、生粋の岐阜県民。社会人2年目の時に発達障害(ADHD/ASD)と診断され、障害者雇用にて再就職。8年間勤務後、障害者の就労支援職に従事している。2019年に居場所作りや情報共有の場として岐阜市にて発達障害当事者会「発達ワークスぎふ」を立ち上げ、私生活では二児の父として、色々しくじりながらも奮闘中!!

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