障害者仲間のデリケートな悩み、どう受け止める?全盲の私が重視する3つのポイント
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2022.9.8
全盲の視覚障害者である私。同じ境遇の方から悩み相談を受ける機会が時々あります。今回は、私が悩みを聞くときに重視していることを紹介します。
執筆:山田 菜深子
全盲の視覚障害者である私。同じ境遇の方から悩み相談を受ける機会が時々あります。
また私自身も、同じ境遇の方に悩みを話して救われたことが何度もあります。共感し合える仲間の存在はとても大きいものです。
ただ、デリケートな悩みを受け止めるのは簡単なことではないんですよね。
ではそういうとき、どんなことを重視すればいいのか。私の考える3つのポイントを紹介します。
悩み相談を受ける際に重視するポイント
私はカウンセリング関連の資格を持っているわけではありませんが、障害当事者仲間として少しでも力になれたらと思い、友人たちの悩みに耳を傾けてきました。その際、特に重視していることは以下の3つです。
①ありのまま包み込む
デリケートな悩みを話す、これはとても勇気の要ること。
ネガティブ発言はよくない。障害があるからといって甘えたりせず強く生きなければいけない。そういった風潮が根付いていることもあり、つらくてもその気持ちはなかなか口に出せないものです。
私自身も、以前はそうでした。素直な気持ちを表現しようものなら「そんなこと言ってもしょうがない、前を向いて歩こう」とたしなめられるだけだからと、本音を隠そうとしていたのです。
ただ、だからといって我慢するばかりでは心がもちません。「障害のせいで生きるの大変すぎ!いろいろ面倒なんですけど!」などと声を上げたいときもある。安心して思いを吐き出せる場が必要なのです。
前向きじゃなくてもいい。強くなくてもいい。甘えてもいい。そんなふうに、相手をありのまま包み込むような姿勢。私はこれを大切にしています。
②じっくり耳を傾ける
コミュニケーションを取る上で、聞くことは話すこと以上に重要です。
相談を受ける際には特に、聞くことがカギとなります。先入観を持たず、余計な口出しをせず、相手の言葉に耳を傾けるのです。
先入観など持っていないつもりでも、最後まで聞かずに「ああ、なるほどね、こういうことか」とつい勝手な解釈をしてしまう。これはよくあることですが絶対NGです。
また、どうやら人には一般的に「話したい欲求」が備わっているようで、まだ相手の話が終わっていなくても「それはちょっと違うんじゃないですか?」「実は私もね……」などと意見を挟みたくなってしまうもの。でも、そこはグッと我慢です。
言いにくい悩みを思い切って打ち明けてくれているのかもしれない。その気持ちに感謝しつつ、丁寧に聞くよう心がけます。そうすると、それだけで一気に悩みが解決する場合も少なくありません。
③無闇にアドバイスしない
悩みを聞いていると、「何か気の利いたアドバイスをしなくては」などと焦りがち。でもその必要はないと私は考えています。無闇にアドバイスすると逆効果になる恐れがあるからです。
私もアドバイスを受けることがあり、ありがたいとは思うのですが、時々「私のことなんて何もわかってないくせに!」と反発心を覚えます。こうなっては意味がありませんよね。
当然誰より近くで自分を見ているのは自分自身。決断を下すのも自分自身。これを忘れずに、「気持ちに寄りそう」ということを大切にしたいものです。
そこで私の場合は、相手が迷っているようなら、一緒に解決方法を考えることから始めます。「自分が相手の立場だったらどうするかな」などと想像してみるのです。
もちろん自分と相手とは違うので、自分にとって適切な方法が相手にとっても適切とは限らない。そのことも考慮しながら、相手に合った方法を探します。
そうして何か思いついたら、柔らかい言葉で伝えます。「こういう方法もあるよね」「私ならこうするかな」と、アドバイスというよりヒントを示すくらいのイメージで。その上でもし私の知識や経験が役に立つようであれば、それも含めてお話しします。
関係性やその場の状況によっては、アドバイスが効果的な場合もあります。ただその際にも、一方的に考えを押し付ける形になることは避けたいところ。相手が不快に感じないよう、十分注意する必要があります。
みんなで意識しよう
普段はあまり話せないデリケートな悩み。それを誰かと共有できる機会は、障害の有無にかかわらず誰にとっても有意義なものですよね。
皆さんも日常のコミュニケーションの中で、ぜひこの3つのポイントを意識してみてください。少し大げさかもしれませんが、そうすれば世界はよりよく変わっていくはずです、きっと!