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まるで見世物みたい…多感な時期に男性医師や実習生に裸を見せなければいけない苦しみ

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2022.10.19

先天性心疾患を抱えていると、検査時や診察時にどうしても胸をさらけ出さなければならない。今でこそ、同性に検査をしてもらえるようになってきたが、10代の頃は男性の検査技師が多く、定期健診のたびに憂鬱な気持ちになった。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

5~6人の実習生が囲む中で上半身裸に

私の病気は珍しいからか、超音波の検査ではいいサンプルになるようで、よく実習生や新米検査技師の勉強対象になる。

今でこそ、仕方がないと割り切れるが、学生時代はそれが苦痛でたまらなかった。中でも、一番嫌だったのが、中学生の頃の体験。検査室に入ると、検査技師から「実習生も立ち会います」と言われ、5~6人の実習生に囲まれながら超音波検査を受けることになった。

当時は男性の検査技師が多く、実習生の中にも男性が数人いた。多感な時期に男性が混じる、大人数の前で胸をさらけ出さなければならないことが、辛かった。

説明を交えながらの超音波は長いと、1時間にも及ぶ。膨らみ始めた胸に全員の視線が注がれているような気がして、怖かった。

まるで、私は見世物みたい。そう感じながら、ただ時が過ぎるのを待った。

そうした経験をしたこともあり、私は自分の体を軽く扱ってしまうところがある。10代の頃は寂しさを埋めるため、どうなってもいいやと出会い系サイトで出会ったメル友に体をゆだねたことが何度もあった。

20代の頃はどうせ、長く生きられないのだから…と、毎日飲むように指示されている薬を気が向いた時にだけ飲んでいた。

病院側からすれば、決してそんな意図はなかったが、私は自分の体をぞんざいに扱われているように感じ、「この体には価値がない」と思うようになった。

正直、今でもその想いは消えない。不特定多数の人に裸を見られてきた自分は、どこか汚れている。そう思えるから、私はこの体が嫌いだ。

男性の主治医に体を見られることも苦しみに…

10代の頃は検査の時だけでなく、診察時もどんよりした気持ちになることが多かった。なぜなら、主治医が男性であったからだ。

30年近く、主治医を務めてくれたT先生は患者の気持ちに寄り添ってくれる、とても信頼できる医師だった。けれど、いくら固い信頼関係があっても、裸を見られることは正直嫌だった。

今でこそ、服の下から聴診器を入れ、体を見ないように診察してくれる医師が大半だが、10代の頃はそこまで配慮がなされない時代。上半身裸になるか、胸の上まで服をまくり上げて診察をしてもらうのが当たり前だった。

私は主治医のことを第2の父親と思うほど慕っていたからこそ、余計に服を脱ぐことが嫌だった。けれど、どんなに不快感を覚えても定期健診は必要なもの。だから、診察時はいつも目を瞑り、言葉では表せないザラっとした感情が心に広がることに耐えていた。

何歳頃から、裸にならなければいけないという患者の苦痛を考慮するべきか。それは医師や検査技師にとって、難しい問題だろう。だが、私は自身の経験を踏まえ、早いに越したことはないと思う。

周囲が「まだ子ども」と思っていても、本人はもしかしたら見られる苦しみと闘っているかもしれない。だからこそ、診察時や検査時には患者の様子や顔色をチェックしたり、「タオルでできる限り、体を隠そうね」と声をかけながら配慮したりして、トラウマにならない定期健診を患者と共に考えてほしいと思う。

また、患者側も裸を見せることに抵抗を感じた場合は主治医に申し出て、診察の仕方を考えてもらったり、検査技師を必ず同性にしてもらったりと、自身が苦痛を感じにくい工夫をしていけたら、病院へ向かう足取りは少し軽くなるはず。

幼かったり、自分の意見を言うのが苦手な子だったりする場合は、親が家庭で本人の気持ちを聞き、できる対策法を主治医と相談し、見つけてほしい。

胸という、1番他人に見られたくない場所に持病を抱えている先天性心疾患の私たちは、どうしても“見せなければいけない苦しみ”にぶつかる。けれど、不快感を覚えた時点で周囲に相談し、納得できる診察法や検査の仕方を話し合えたら、持病との向き合い方にも変化が現れるのではないだろうか。

不快感に蓋をして我慢せず、自分の体を大切に守っていく権利が、あなたにはある。もし、10代の私と同じ思いをしている子がいるのなら、そう背中を押したい。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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