採用企業向けウェビナー第2弾「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーを開催しました。
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2022.9.26
こんにちは。多様性を推進するプロジェクト パラちゃんねる代表の中塚です。
採用企業の皆さまの声をもとに開催された前回の「当事者に聞く、障がい者採用へのホンネ」セミナーに続き、9月7日に開催された第2弾「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーについての活動レポートをお届けします。
執筆:パラちゃんねる運営事務局
はじめに
多様性を推進するプロジェクト パラちゃんねるは、「誰もが特性を活かせる、多様な選択肢がある社会」を目指し、障がい者雇用の活性化を図ることで「働く」側面から社会課題の解決に挑戦しています。
2022年1月からスタートした求人サイトでは、日々、全国の採用企業の皆さまより「当事者のリアルな現状をもっと知りたい」という声が寄せられています。
- 当事者の障がい特性が正直わかっていない
- 当事者が実際にどのようなポイントで求人を見ているのかリアルを知りたい
- どんな働き方をしているのか、直接聞いてみたい
- 今働いている社員には聞けないし、、、
今回は、第2弾となる「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーについての活動レポートをお届けします。
>ファシリテーター
NPO法人Collable(コラブル)の代表理事 山田小百合さん。障がいのある人たちや多様な人との共創の場をつくるCollable(コラブル)は、ワークショップを通じて「インクルーシブデザイン」の普及や、障がいの有無をこえた場作り、それらの啓発活動を行っています。
>登壇者①
身体障がい(脊髄性筋萎縮症)のある、佐々木美紅さん。高校卒業後、障がい者雇用として北海道庁、コールセンターを経て、大手旅行会社で10年間勤めた後に現在はフリーランスとして執筆活動やコミュニティFMでのパーソナリティを勤めています。
>登壇者②
発達障害(ADHD、ASD)のある、マーチンさん。新卒で入社した後に発達障がいの診断を受け、障がい者雇用として卸売業へ転職。その後、営業事務、配送業務、倉庫作業と9年間の就業を経て2022年10月より転職が決定しています。
セミナー当日は匿名開催ということもあり、障がい者雇用に関わるさまざまな方々に参加いただきました。
- はじめて障がい者採用をするので当事者の方の生の声を知りたい
- 求人票や選考プロセスで印象的だった事例を知りたい
- 現場配属後の配慮について質問したい
障がい者雇用を推進している企業の皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。
「できること」「できないこと」が働きやすさに繋がっていく
重度の身体障がいがある佐々木さんは、電動車いすユーザーで1日4回のヘルパーを利用されています。高校卒業後、北海道庁での1年間の就労訓練事業を経て、コールセンターでのインバウンド業務を経験する中で、大変だったこと、困ったことがあれば教えてください。
コールセンターは、営業時間9時~21時でシフト制でした。毎月21日のシフトの確定を待って、ヘルパーの日程調整をしなければならず大変苦労しました。当初、「働けるだけでありがたい」と我慢していましたが、思い切って実情を伝えたところ、勤務時間を固定していただけたので、当事者として相談することの大切さを学ぶことができました。
車いすユーザーの方は、最寄り駅のエレベーターの有無など通勤経路の確認やオフィス内でスムーズな移動の確認が大切だと言われています。実際はどうなのでしょうか?
選考段階で職場見学の許可をいただき、フロア内の移動を確認しており、入社時には席位置を配慮いただきました。また、車いすの事情だけでなく、私の場合はホッチキスが閉じれない、電話の受話器が持てないなど身体的制限もあります。
大手旅行会社では、入社後に「できること」「できないこと」を纏めるように指示があり、「できないことは無理しないで。その代わりできること一所懸命に頑張ろう」と言っていただけたことが今でも印象に残っています。そのほか、電話の受話器はヘッドセットへ移行されるなど物理的に解決可能な「できないこと」についても配慮いただきました。
「できること」「できないこと」が可視化されることで課題が整理されるだけでなく、互いの人間関係を築くきっかけにもなっていると感じます。大手旅行会社に10年間勤める中で、環境の変化はありましたか?
病気が進行性のため入社時より身体機能が落ちてしまったため通勤が難しくなりましたが、テレワークの提案があり長く働くことができました。当時はまだテレワークが珍しく、試験的な運用となりましたが、最終的には子育て中の社員や親の介護を担う社員のきっかけづくりにも繋がっていきました。
原因はマルチタスク。職種や業務内容が苦手なわけではなかった。
マーチンさんは、社会人になってから発達障がいの診断を受け、障がい者雇用での転職活動を経験されています。発達障がいの診断に至ったきっかけを教えて下さい。
新卒で入社した会社では、イレギュラーな電話対応や企業訪問など顧客の要望に柔軟に応えながら事務処理を行う必要がありました。マルチタスクと適切な優先順位付けが求められる中で、結果的にミスが重なり、心身の不調がありメンタルクリニックを受診したのがきっかけです。タスクが積み上がり処理できず、まさにテトリスのゲームオーバーの感覚でした。
障がい者雇用として入社した卸売業の会社では営業事務に従事されています。事務処理が苦手な印象を受けましたが、障がい者雇用として働く環境はどうだったのでしょうか。
障がい特性から視覚優位なので、予めマニュアルを用意していただけことは大変助かりました。また、紙ベースの商品発注書の束を優先順位で並び替えてからデータ入力を行う仕事で外出もなかったため、格段にケアレスミスは減りました。
事務処理や職種が苦手ということではなく、突発的なコントロールできない業務が原因として結果的に事務でミスが誘発されていたと感じました。卸売業の会社で8年間勤める中で環境の変化はありましたか?
営業事務を5年間経験した後に、配送部門へ異動し配送業務や倉庫の入出荷作業を経験しました。配送業務は、荷物を定められた場所に配送するだけと特性の影響もないだろうと安易に捉えていましたが実際は全く違いました。
配送伝票の優先順位付けと併せて最短の配送ルートを検討し選択する。そして、安全運転で時間管理をしながらスムーズに配達を完了することが求められます。頭の中は見えないマルチタスクでぐるぐると思考が巡り、結果的に事故を起こしてしまいそうになったことをきっかけに異動を申し出て倉庫の入出荷作業へ移りました。
採用担当者のぶっちゃけ質問
セミナーでは参加された採用企業の皆さまからも多くの質問がありました。
Q.長く勤務されている中で当事者同士の交流や情報交換は活発にありましたか?
>佐々木さん
1年に1度、グループ全社が東京に集まり、職場の困りごとやコミュニケーションの在り方などを議論する場がありました。また、入社当初より別部署の障がい者雇用で働く先輩の紹介もあったので通院やリハビリの相談方法などについて一人で悩む必要がなかったことが結果的に長く働くことに繋がったと思っています。
>マーチンさん
職場は障がいについてオープンに話せる雰囲気ではなく、障がいを感じさせないようにどうやって頑張るかを常に意識していましたが、その結果として転職を意識することに繋がっていったとも思います。
Q.入社後業務が多岐に渡る場合、募集時や入社前にどのような説明があると嬉しいですか?
>佐々木さん
旅行会社では面接で「電話応対はできる?」「ファイルは持てる?」など細かく質問があり安心できました。また、絶対にお願いしたいメイン業務の質問からしていただくと働くイメージが付きやすいかなと思います。
>マーチンさん
キャリア選択について説明があると嬉しいです。ずっと同じ仕事で同じ給与という安定性も大切ですが、自己成長や家族の将来を考えたときに難しいと感じる場面も多くあります。
Q. 応募検討時や選考プロセスが進む中で、「魅力に感じる」「志望度が高くなる」企業や求人の特徴があれば教えてください。
>佐々木さん
企業ホームページに先輩社員のインタビューや雇用する障がい種別の開示があると魅力を感じます。先輩社員のインタビューは長く働くイメージに繋がり、雇用する障がい種別の幅が広いと受け入れ体制があるのかなと考えます。
>マーチンさん
私も同じで、インタビューは魅力を感じます。自信がないと当事者の声を公に出せないと思うので信頼度が高まります。これから障がい者雇用に取り組んでいく会社であれば支援機関や専門家と一緒にサポートしていくような組織体制が書いてあると安心できるかもしれません。
障がい当事者として登壇を終えた感想
>佐々木さん
私は電動車椅子を使用していて、重度な障がいがあります。そんな私ですが、長い間一般就労で働いていました。自分の働いていた経験を何かに役に立てたいと思っていたところ、今回のお話をいただき参加させてもらいました。本当にありがとうございます。障がい者雇用はだんだんと増えてきましたが、なかなか上手くいかなかったり、これからチャレンジしてみようと思っても簡単なことではないと思います。実際に働いていた経験を話すことで、ヒントになれば嬉しいなと感じていますし、匿名で質問できるというのも素晴らしい企画ですね。積極的に質問してくださったおかげで、充実した時間を過ごせました。このような機会がもっと増えて、障がいがあっても、一般企業で働ける方が一人でも多く増えてくれたら嬉しいです。
>マーチンさん
今回登壇者として参加することで、今まで自分が障害者雇用で働いてきたこれまでを振り返り、就労においての行動や思考を改めて整理する事ができた意味としても本当に貴重な機会でした。今回のウェビナーを通じて、参加された企業様が更に障害者雇用に前向きな行動を起こすきっかけとなれば幸いです。話そうと事前に準備していた内容の半分未満なくらい濃密であっという間な1時間でした。本当にありがとうございました!
セミナー参加者のアンケート結果
■セミナー満足度
「非常に良かった」50%
「良かった」50%
セミナー満足度の理由は以下の通りです。
- 障がいのある当事者が普段どのように感じ、考えているのかを聞くことができたこと
- 当事者の方(身体、発達それぞれ)の率直な意見を聞けたこと
- 障がいのある方々のこれまでのキャリアを聞けたのがとても貴重な経験で良かった
- ラジオのリスナーのような感じで耳を傾けて参加ができること
パラちゃんねるでは、採用企業の皆さまと障がいのある当事者と共により良い障がい者雇用の機会を増やしていきたいと願っています。
困りごとがあればお気軽にご質問ください。当事者の意見をもとに回答をさせていただきます。
質問はこちらのリンクから↓
障がい者採用の困りごとを質問【ロクイチ掲示板】
第3回「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」
障がい者雇用担当とはいえ、十分な知識や経験がある方ばかりではなく、担当になったばかりの方々も多くいます。ネットや参考書にある情報だけにとらわれた雇用促進では、当事者とのミスマッチを助長し兼ねず、働きがいのある雇用促進と本質的な多様性の広がりは実現できません。
次回セミナー(無料)の申込はこちらから
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第3回「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」
日時:2022年10月12日(水)12:00-13:00
ファシリテーター:NPO法人Collable 代表理事 山田小百合
ゲストの障がい種別:視覚障がい、発達障がい(ADHD)・精神障がい(双極性)
参加費用:無料
参加社数:先着30社様
セミナーは匿名・画面表示なしでの参加を推奨しております。
肩書にとらわれず、気軽に自由に質問できる場を提供しています。
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私たちパラちゃんねるは、当事者とのリアルな対話の場を提供することで採用担当者と共に障がい者雇用を促進していきます。ご参加お待ちしております。
Text by
パラちゃんねる運営事務局
多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」は、2020年より「知る」を広げるラジオ・コラムのメディア活動に加え、「自由な出会い」を創出する障がい者雇用特化型の求人サイトを運営しています。