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ライターの私が障害の「がい」をひらがな表記しない理由

~表面的な障害理解で終わってほしくない~

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2022.11.7

障害の「害」を、漢字とひらがなのどちらで表記するか。近年は、そうしたことに重きが置かれがち。
「障がい」という表記で統一するようにとのルールを定める媒体も増えてきている。

だが、当事者の視点から見ると、その風潮には少し違和感を覚えるのだ。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

表面的な配慮よりも“当事者のリアルな声”に目を向けてほしい

近ごろ、「障害」という言葉を使用する時は、「害」をひらがな表記にする人が多くなってきた。表記ルールとして「障がい」とするように定めている媒体もあれば、表記の仕方を巡ってSNS上でしばしば討論が行われることもある。

それは「害」という漢字によいイメージがないことからなされるようになった、優しい配慮だ。だが、その一方で、表記の仕方ばかりに重きが置かれ、本当に大切なことが見過ごされているのではないかと感じることがある。

もちろん、「害」をひらがな表記にすることで救われる人もいるだろうから、こうした風潮が高まっていることは良いことだとは思う。だが、誰かから強制されたり、見えない同調圧力を感じたりすることによって「害」という字がひらがな表記されるようになっても、私たち障害者の暮らしは何も変わらない。

持病を抱えての就職は、やはり困難であるし、障害があることを打ち明けると「可哀想に」「辛かったでしょう」という言葉を向けられ、本当に自分が可哀想な人間であるように思えてしまうことも、まだ多い。

本当に重要視されなければならないのは、当事者の未来に対する不安やリアルな胸のうち。そうしたものに目を向けず、表面的な配慮だけがなされるようになっても障害理解は進まず、社会は変わらないと思う。

表面的な「障害理解」で終わらせないためには?

また、私個人としては「障がい」という表記を用いているという表面的な障害理解で終わってほしくないとも思っている。

障害を理解するには様々な障害の症状や、それと向き合っている人の生の声を知ることが大切だ。そうした根本的なところを理解する人が増えてこそ、社会や私たちの暮らしは初めて変わっていく。

様々な障害を根本から知れば、表記ルールとして統一したり、誰かに押しつけられたりしなくとも「害はひらがな表記にしたほうがいい」や「ハンディキャップという呼び方のほうがよさそう」など、自ずと「障害」という言葉への意識が変わっていき、障害者へ向ける視線も変化していくのではないだろうか。

それこそが、真の障害理解であり、健常者と障害者が共生できる社会の第一歩だと私は思うのだ。

そうした想いがあるから、私は媒体側の規定がない限り、「障害」という言葉を使う時はあえて、「害」をひらがな表記にしないように意識している。表面的なところではなく、根本からあらゆる障害を理解し、「障害」という言葉を用いることを考えてほしいから。

「障害」という表記の仕方に心から違和感を覚える人が増えて社会が変わっていき、私自身が「障害という書き方は、今の時代にそぐわない」と心の底から思えるようになる日まで、このちっぽけなマイルールは貫き通すつもりだ。

あの人が持っているものは「障害」ではなく、別の呼称のほうが適切なのではないだろうか。そんな風に考えながら、様々な障害を持つ当事者の声を受け止める人が増えていき、私たち障害者が必要以上に特別視されない社会が築かれてほしい。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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