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採用企業向けウェビナー第3弾「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーを開催しました。

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2022.11.1

こんにちは。多様性を推進するプロジェクト パラちゃんねる代表の中塚です。
採用企業の皆さまの声をもとに開催された第2弾「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーに続き、10月12日に開催された第3弾「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーについての活動レポートをお届けします。

執筆:パラちゃんねる運営事務局

はじめに

多様性を推進するプロジェクト パラちゃんねるは、「誰もが特性を活かせる、多様な選択肢がある社会」を目指し、障がい者雇用の活性化を図ることで「働く」側面から社会課題の解決に挑戦しています。

2022年1月からスタートした求人サイトでは、日々、全国の採用企業の皆さまより「当事者のリアルな現状をもっと知りたい」という声が寄せられています。

  • 当事者の障がい特性が正直わかっていない
  • 当事者が実際にどのようなポイントで求人を見ているのかリアルを知りたい
  • どんな働き方をしているのか、直接聞いてみたい
  • 今働いている社員には聞けないし、、、

今回は、第3弾となる「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーについての活動レポートをお届けします。

>ファシリテーター
NPO法人Collable(コラブル)の代表理事 山田小百合さん。障がいのある人たちや多様な人との共創の場をつくるCollable(コラブル)は、ワークショップを通じて「インクルーシブデザイン」の普及や、障がいの有無をこえた場作り、それらの啓発活動を行っています。

>登壇者①
視覚障がいのある、愛美テミスさん。14歳で緑内障を発症し、30代半ばで全盲に。短大卒業後、大手小売業に入社し勤続25年。視力の低下に伴い一般事務、総合受付の電話業務へ異動し、現在はフル在宅で業務に従事している。

>登壇者②
発達障がい(ADHD)、精神障がい(双極性)のある、鵜飼洋子さん。大学卒業後、通信端末の企画/販売企業に入社し、営業職と事務職を経験。その後システム会社の企画職に転職、在籍中に発達障がいの診断を受ける。その後、インハウスのWebデザイナーに転身するも組織になじめず退職、現在はフリーランスとして活動している。


セミナー当日は匿名開催ということもあり、障がい者雇用に関わるさまざまな方々に参加いただきました。

  • はじめて障がい者採用をするので当事者の方の生の声を知りたい
  • 求人票や選考プロセスで印象的だった事例を知りたい
  • 現場配属後の配慮について質問したい

障がい者雇用を推進している企業の皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。

障がい者雇用枠を埋めるではなく、働く個人に焦点が当たる雇用の実現を。

愛美さんは、入社して健康保険組合の保険業務に3年間従事した後に、店舗での電話交換オペレーターへと異動しています。異動の経緯を教えてください。


当初は保険証の発行や健康診断、人間ドック、宿泊補助制度などの事務的業務を担当していましたが、緑内障により目の痛みなど症状が悪化したことで退職の相談をしたところ、異動の打診があり挑戦してみようと決意しました。


障がい者雇用において丁寧なコミュニケーションや良好な人間関係があると感じますが、いかがでしょうか?

残念ながら、良好な関係とは言い難いのが現実でした。異動時に人事部門から障がい特性や配慮事項の事前説明もなかったため、受け入れ部署からの反発があり6カ月後に再度、別店舗への異動となりました。その際は事前説明による異動先との合意もあったため、結果的に20年以上の勤務となっています。


障がい者との関りに耐性がなく、本社の丁寧なサポートもなければ、受け入れ部署には漠然とした不安が蔓延し、不満や反発を生むことがあります。事前説明や双方合意という些細な取り組みがあるだけで結果が大きく異なるという典型的な事例と言えます。

店舗では電話交換、全館アナウンス業務、バックオフィスの補助業務に従事されています。事前説明があったことで働きやすさはどのように改善されたのでしょうか?


障がいへの認識や期待値に齟齬がなくスムーズな人間関係に繋がり、業務の協力体制も確立できたと感じています。その一方で部署の協力のもとトラブルなく仕事が回ると判断されたため、本社障がい者雇用担当からの支援はなくなっていきました。

音声パソコンの導入などの依頼も頓挫したまま月日が流れ、最終的に自動応答電話システム(IVR)の導入で業務がなくなり、現在は在宅で簡単な事務作業をしています。在宅時の面談では私が失明していたことを本社障がい者雇用担当が知らなかった事実があり愕然としました。

発達障害特性に合わせたフレキシブルな働き方が生産性を上げる。

鵜飼さんは、社会人になってから発達障がい(ADHD:注意不足、多動)の診断を受けています。診断を受けた経緯を教えてください。


システム会社の事務系総合職で勤務していた時に見積書の作成で複数回チェックしても桁を間違えるなど、常にミスを指摘されていました。それ以外でも「あれやった?これやった?」と言われるタスク漏れが多く、同期と比較しても仕事内容の理解度は高く、能力値も低くないと自負していたのに「なんでだろう?」と自問自答してネットで調べたのがきっかけです。


発達障がいの診断後、会社に適応するのが苦手と気づいて、独立できる職種としてWEBデザイナーを学ばれています。具体的に会社に適応する難しさはどのような部分がありますでしょうか?


発達障がい(ADHD)の方に多いようですが、昔から夜型で日中の活動の生産性が極端に下がってしまいます。定時が9時から18時でフレックス制もない場合、嘘みたいな話ですが通勤の記憶がほとんどなく、頭がぼーっとした中で朝の仕事がスタートしていました。

また、集中力のコントロールも難しく、お昼休憩は集中力が強制的に遮断され、休憩後には集中できずにスムーズに業務に入ることができませんでした。日本にある全体で規則に従い行動を共にする働き方に適応しようとすれば、結果的に疲弊して退職となってしまうと考えています。


発達障がいや精神障がいなどの見えづらい特性への対策が必要な場合、社会適応に過度な労力を費やすことで結果的に疲弊し、障がい特性のコントロールがさらに難しくなるようにも感じます。それぞれが持つ本来の生産性が会社のルールと合致しているかという視点は障がい者雇用のみならず大切と感じました。

採用担当者のぶっちゃけ質問

セミナーでは参加された採用企業の皆さまからも多くの質問がありました。

Q.在宅勤務をするときに心配なことがあれば教えてください。
>愛美さん
視覚障がいの場合、スクリーンリーダーの画面読み上げソフトを組み込んだパソコンを使います。業務用パソコンだと設定が上手くできていないこともあるので、困ったときに相談できるヘルプデスクなどフォロー体制があると嬉しいです。

>鵜飼さん
生産性を上げようと考えると夜型勤務となり、周囲とコミュニケーションの時間が被らない場面が多くあります。SkypeやSlackなどのコミュニケーションツールによりテキストでのやり取りや就業時間ではなくタスクによる業務管理をお願いしたいです。


Q. 本人の体調面をサポートする目的で家族・主治医・支援員のことなど、具体的に仕事以外のサポート体制を聞いても良いのでしょうか?
>愛美さん
障がい種別や障がい度合いにより異なるとは思いますが、前提として企業が丁寧にサポートして働いてもらうではなく、当事者が自ら働くという意志が大切だと思います。そのためには障がいをどのように理解して、どう折り合いをつけながら生活しているかが大切なので当事者自身に興味を持ってもらえると嬉しいです。働くうえでの周囲のサポートが必要な方であれば自ら申し出があるのかなとも思います。

>鵜飼さん
発達障がい(ADHD)の視点で答えると、障がい特性を理解している人は、得手不得手を理解しているので、あまり周囲の視点は必要ないかもしれません。私の場合、ミスが許されない仕事は適性がありませんが、仕事の種類を問わず、ミスをリカバリーできる仕事であれば問題ありません。個人の得意を深堀してもらえると嬉しいです。

障がい当事者として登壇を終えた感想

>愛美さん
私は完全に失明して15年ほどになる中途失明者です。2014年ごろからは転職活動もしつつ、会社員を続けています。採用する側される側、それぞれの理解が、少しでも進むよう、今回このイベントに参加させていただきました。限られた時間内でお伝えできたことは多くはありませんが、今後も機会をいただければありがたく思います。「障がい者雇用=特別扱い」ではなく、働く環境がふつうにインクルーシブになる日を夢見ています。


>鵜飼さん
私はADHDという先天性の発達障がいと、双極性障がいという後天性の精神疾患を持っています。どちらも一言で「精神の病気」とまとめられがちなのですが、少しでも違いを認識いただければと思い、今回のウェビナー登壇を決めました。クローズ就労とオープン就労のどちらも経験したという自分のエピソードを通じて、企業の方に「発達障がいとは?精神疾患とは?その違いとは?」を少しでもご理解いただけたのであれば幸いです。障がいという個々の特性を活かした業務に携わる方が増えていけば、使用者も労働者もWin-Winかと思います。このウェビナーをきっかけに、障がい者雇用を前向きに捉えていただけたのであれば大変嬉しく存じます。

セミナー参加者のアンケート結果

■セミナー満足度
「良かった」75%
「普通」25%

セミナー満足度の理由は以下の通りです。

  • ・弊社でもフリーランスで働いてみたいというスタッフがいるので、今日聞いた内容やコラムを共有しようと考えている
  • ・普段聞けない生の声が聞けたこと
  • ・ご自身の経験を通して、本音を話してくださり分かりやすかった

パラちゃんねるでは、採用企業の皆さまと障がいのある当事者と共により良い障がい者雇用の機会を増やしていきたいと願っています。

困りごとがあればお気軽にご質問ください。当事者の意見をもとに回答をさせていただきます。

質問はこちらのリンクから↓
障がい者採用の困りごとを質問【ロクイチ掲示板】

第4回「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」

障がい者雇用担当とはいえ、十分な知識や経験がある方ばかりではなく、担当になったばかりの方々も多くいます。ネットや参考書にある情報だけにとらわれた雇用促進では、当事者とのミスマッチを助長し兼ねず、働きがいのある雇用促進と本質的な多様性の広がりは実現できません。

次回セミナー(無料)の申込はこちらから
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第4回「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」

日時:2022年11月16日(水)14:00~15:00
ファシリテーター:NPO法人Collable 代表理事 山田小百合
ゲストの障がい種別:聴覚障がい、発達障がい(ADHD)
参加費用:無料
参加社数:先着30社様

セミナーは匿名・画面表示なしでの参加を推奨しております。
肩書にとらわれず、気軽に自由に質問できる場を提供しています。
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私たちパラちゃんねるは、当事者とのリアルな対話の場を提供することで採用担当者と共に障がい者雇用を促進していきます。ご参加お待ちしております。

多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」は、2020年より「知る」を広げるラジオ・コラムのメディア活動に加え、「自由な出会い」を創出する障がい者雇用特化型の求人サイトを運営しています。

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