ゆったりマイペース!働き方を変えた全盲の私がたどり着いた「幸せ」の形
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2022.11.12
思い切って会社員生活にさよならした、全盲の私。夢に向かって働き方をガラリと変えてみたところ、新たな世界が見えてきました。幸せ。どうしてそう感じられるのでしょうか。改めて言葉にしてみようと思います。
執筆:山田 菜深子
思い切って会社員生活にさよならした、全盲の私。夢に向かって働き方をガラリと変えてみたところ、新たな世界が見えてきました。
そうだ、これだ。これこそが幸せってやつかもしれない。そんな気持ちになり、そのありがたみを今しみじみとかみしめているところです。
幸せ。どうしてそう感じられるのでしょうか。改めて言葉にしてみようと思います。
仕事はマイペースに
障害者雇用で働いてきた全盲の私は、あるとき大きな決断をしました。ここらで会社員生活を辞めてみよう、方向転換してしまおうではないか、と。
なぜそう決めたか。それは、「この世界を変えるんだもん」なんてひそかに夢見ているから。
あ、もうちょっとわかりやすく言いましょうか。まあ、「これだ!」と思える仕事がしたかったから、です。
というわけで1歩踏み出すことにした私。選んだのは、超マイペースフリーランス生活でした。
文章を生み出したり、点字の面白さを伝える活動をしたり。それが私の今のお仕事。
決まった時間に出かけていくようなこともありますが、基本的には好きな時間に好きな場所で作業する。そんな日々となったのです。
さて、この生活に突入してもう9ヶ月くらい経つのですが、今特に感じているのは、「とにかく自由だ!」ということ。
お笑いコンビ「サバンナ」の高橋さんが演じるキャラクター、犬井ヒロシを密かに思い出します。懐かしい!
彼のように、かっこいいブルースで自由を叫びたい。「今日はそろそろ締め切りが近いからさすがにあれを仕上げるか、やっぱり気分が乗らないからおやつでも食べてぼーっとするかは、自由だー!!」なんて。
みんなが寝静まった深夜(私の元気とやる気がピークに達する時間)にカタカタと作業に勤しんでも、罪悪感を覚える必要はない。締め切りさえ忘れなければ何の問題もないのです。なんて素晴らしい!
そして今取り組んでいる仕事は、本当にやりがいを感じられるものばかり。やりたかったことができている、という実感があります。
もちろん自由だからこその大変さはあるので、気を付けないと痛い目に合うかもしれない。収入面での安定も捨ててしまったのだから、そこのところはちゃんと考えなければいけない。
それでも今のほうが、こころは確実に安定していると思うんです。いや本当に。
家事もマイペースに
え?自由だって言うけど家事はどうしてるのか、ですって?まあ、それなりにやっていますよ。それなりに!
これに関しても、キーワードはやっぱり「マイペース」。
お料理など一応はするんです。するんですが、最近は冷凍食品に頼りまくり。だってもう、このところよくできてるものがいっぱい出てるでしょ?よくできてるものは使わなきゃ、でしょ?
楽だし、何と言っても美味しいし、夫も喜んでくれるし。一石二鳥ですよね。いや、三鳥?
趣味の時間が充実
自由になった今は、趣味のほうも充実させることができています。
思えば大好きな読書の時間も、なくてはならないぼーっとする時間も、確実に増えているんですよね。
頭の中だけで数分間の宇宙旅行を楽しむ。そんな子どもの頃からの変な趣味も、こうなるとはかどるはかどる!
あ、時間が自由に使えることで、本物のお出かけの機会も増えましたよ。完全お家派の私だったのに、外で過ごすのが楽しくて楽しくて。
苦手な人混みを避けて外出し、美味しいものを食べたり、季節の花々を愛でたり、数少ない友人たちと語り合ったり。そうすると新たな知識がどんどん増えるし、運動不足解消にもつながるし、一石二鳥。いや、三鳥?
私には私の幸せがある
仕事バリバリ、家事もチャキチャキ、週末は友達とワイワイ。そんな生活ができるのを「幸せ」と呼ぶのだと、昔は思っていました。そういう人って妙にかっこよく見えちゃうもので。
ところが、私はそういうのには全く縁がなかった。いくらそれを目指そうとしてもうまくいかない。こんな自分でいいのか、と悩む日々だったのです。
そんな中、働き方を大きく変えて、マイペースを極めてみた私。確信してしまったんです。バリバリもチャキチャキもワイワイも、私には必要なかったんだ、と。ゆったりと自分のペースで進めることが、何よりの幸せだったんだ、と。
幸せにはいろんな形がある。私には私の、誰とも比べられない幸せがある。そう気付けたんです。
かっこいいかどうかは「知らんけど」ですが、私は今ちょうどいい生き方をしている。素朴な幸せを手にしているのだと思います。
ちょっと恥ずかしいけど、今こそ大きな声で歌う時。
幸せのブルース!幸せのブルース!聞いてくれー!!
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Text by
山田 菜深子
1987年生まれ。先天性全盲。「必死に頑張らない」がモットーであるが野望は大きく、世界を変えたい思いでライター活動を行っている。Amazon Kindleにてエッセイ集『全力でゆるく生きる~全盲女子のまったりDays~』を配信中。またブログやYouTubeで全盲当事者のリアルな日常を発信中。