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こんなところでも差別を受けるなんて

頼った心療内科で「先天性心疾患」を理由に傷つけられて

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2022.12.23

これまで障害者として生きてきた中で、様々な差別を目にしてきた。

だが、その中でも一番驚いたのが、限界な心の時に頼った心療内科で受けた差別。私は10代の頃、本来なら、心が軽くなる場所で胸を抉られた。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

家庭環境に耐えられず心療内科を受診

日記を盗み見る過干渉な母親と、家族に罵声を浴びせるアルコール依存症の父親と生活する中で、私の心は限界となった。

母親に見られることを恐れ、日記に書けなくなった親の愚痴や吐き出せない弱音を誰かに聞いてほしくて、当時流行っていたメル友掲示板で話し相手を見つけては夜な夜な電話。睡眠薬を多めに飲み、まともな思考ができない状態で人と関わり、なんとか1日を終えていた。

だが、両親と私の寝室が隣接していたため、「夜に話している声がうるさい」と言われ、夜中に部屋へ入ってこられるように。私は再び、感情のはけ口を失った。

二の腕に増えていくリストカット。それをぼんやり眺めていたある日、もう限界だと思った。心療内科に頼ろう。そう考え、父親代わりの存在となっていた主治医に相談。勧められたメンタルクリニックに通院し始めた。

だが、その病院は投薬治療がメインだった。5分ほどカウンセリングをしてもらい、薬をもらって帰る治療法は私には合わず、気持ちは晴れなかった。

担当医は毎回、「もっと強い薬もあるから、安心してくださいね」と言った。いつしか、私が服用する薬は強いものに。すると、副作用で1日中眠い状態になった。いつの間にか寝てしまい、バイトの時間が過ぎてしまった、恋人との待ち合わせ前に眠ってしまったなど、日常生活に支障が出てきた。

このままではダメだ。ぼんやりした頭でそう思い、ネットでレビューが良かった心療内科に転院した。

精神科医から「そんな心臓でどうやって生きているの?」と言われた

その心療内科はすごく混んでいた。何時間か待った後、院長に診察してもらえることになった。持病のことや抱えている悩みを話すと、院長は「あなた、心臓ひとつしかないの?そんな状態でどうやって生きてるの?不思議だな~」と笑いながら言った。

その言葉に傷ついた私は「そういう言い方は、ないんじゃないですか?」と反論。すると、院長は「だって、普通に考えて変な体でしょ。あなた、そういう風に人の意見に口出しするわがままなところがあるから、ダメなんじゃない?」と言った。

この人には、何を言ってもダメだろうな。そう思い、黙っていると、院長は「彼氏はいるの?僕がもし、あなたの恋人だったら、こんな性格の人は嫌だなあ」と、また笑った。たった数十分のカウンセリングで、私はますます自分を嫌いになった。

そんな思いをした場所へ再び行く気にはなれず、違う心療内科を探した。その頃の私は目を見て話せず、スーパーでレシートを貰おうとすると必ず手が震えてしまうほど、人が怖かった。

ネットのレビューを頼りに、次にかかることにしたのは、自宅から10分ほどの距離にある診療内科。そこは診察をして薬を処方する精神科医とカウンセラーが別であったため、じっくり話を聞いてもらえるのではないかと期待した。

障害があることから生じていた就労の悩みを軽視された

1回目のカウンセリング時、持病のことや就労に対する悩みを話すと、カウンセラーは「それは辛かったね。働くところが見つけられるように、参考になる資料を今度のカウンセリング時に用意するね」と言ってくれた。

初めて持病の悩みに向き合い、助けてくれる人がいた。それが嬉しく、2度目のカウンセリングが待ち遠しかった。

だが、カウンセラーにとって、私との約束は軽いものだったよう。2回目のカウンセリング時、カウンセラーは資料のことなどすっかり忘れており、「その後、どう?」と尋ね、近況を聞いただけで「また今度ね」と言った。

期待していた分、裏切られた気持ちが大きかった。専門家でさえも、障害を持つことで生じる苦しみには目を向けてなんてくれないんだと思い、カウンセリングはやめた。

ただ、その病院で薬を処方してくれた精神科医は優しかった。診療時、「人前で手が震えてしまうのが怖い」と話すと、「次から、診療時に手を10秒間開いて見せて」と言われた。

手を見せるたび、精神科医は「前より震えなくなってきたね」「今日は全然震えてないよ」と褒めてくれた。薬も断ち切れるようにと、症状を見て減らしていってくれた。

その治療法のおかげで、私は再び人と目を合わせて話せ、買い物時、ごく普通にレシートを受け取れるようになった。

だが、本来、心を救ってくれる心療内科という場所で差別的な発言を受けたり、障害にまつわる悩みを軽視されたりした傷は癒えていない。もちろん、すべての心療内科がそうではないとは分かっているが、障害を軽視せず、それから起因する悩みも真摯に受け止め、生きていくための道を一緒に考えてくれる心療内科が増えてほしい。

また、当時の私のように持病に対して心ない言葉を投げかけられたことがある当事者には、必要以上に自分の体や生きていること、産まれたことを責めないでほしいと伝えたい。

悲しいけれど、職業問わず、障害に理解のない人は一定数いる。それは、あなたの問題ではなく、相手の問題だ。だから、誰にどんな差別を向けられても胸を張って生きていていいと、自分を優しく包み込んであげてほしい。

そして、障害を持っていることで悩みが生じている場合は、心療内科以外でも解決できないだろうかと考えてみてほしい。行政に相談したり、当メディアのように当事者の声を救い上げているメディアから解決のヒントを得たりし、ひとりで悩まず、前を向ける道を見つけてほしいと思う。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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