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視覚障碍者が活躍できる社会を目指して、次世代の人たちに伝えたいこと

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2022.12.17

私は全盲の視覚障碍当事者ですが、今回は視覚障碍のことを次世代の人たちにどのように伝えていきたいのか、考えてみました。テーマが大変広い領域になりますので、教育について、そして就労の課題、社会参加について、最後に視覚障碍者について知ってもらう機会について分けて書いていきます。

執筆:小川 誠

私は、先天性の視覚障碍者として生まれ、最初の10年は少しだけ視力のある弱視として過ごし、徐々に視力が失われて全盲になり、現在に至っています。

今回は、視覚障碍のことを次世代の人たちにどのように伝えたいか、改めて考えを整理してみました。

テーマが大変広い領域になりますので、子供達の教育について、そして就労の課題、社会参加について、最後に視覚障碍者について知ってもらう機会について分けて書いていきます。


インクルーシブな子供時代を送らせて欲しい

約40年前、私が子供だったころは、視覚障碍者と健常者との交流がほとんどない時代でした。

私の場合、ありがたいことに健常者と一緒に保育園で過ごすことができました。そのことは今でも大変良い思い出として心に刻まれています。

現在は、私の子供のころに比べると、SNSなどの発展により視覚障碍者について知ることができるようになってきていると思いますが、幼稚園・保育園または、学校に通っているときから、積極的な交流をして、そこから得た事を社会の仕組みの中に溶け込ませていただきたいのです。

柔軟な心や偏見のない子供のころから、健常者と障碍者が接する機会があると、互いに身構えることなく関わることができます。この経験があるだけで、社会生活を送るようになったときに、視覚障碍当事者にとっては、自分ができることとできないことの見極めとどのような配慮を求めるか、健常者にとっては障碍者に対する関わり方がスムーズになるのではないかと考えています。

障碍者と健常者が協力して活動できるインクルーシブな社会の実現のためにも、交流の場が今後増えていくことを希望しています。


就労の機会を増やすために、ICTの支援が必要

最近では小学生にタブレットが配布されるなど、スマホやタブレットなどのICT機器が生活の一部になってきました。一方で、視覚障碍者はICT機器を利用することに困難を抱えている人が多くいます。

スマホやパソコンといった機器を使えないと、どんな困りごとが出てくるのか。それは就労の面で壁に当たることが多いと私は感じています。IT機器が使えないとなると、仕事が制限されてしまうのです。

私はIT支援を通じて、視覚障碍者の活躍できる場を増やすことができるのではないかと感じています。現状では視覚障碍者の選べる仕事は職種が限られてしまいやすいのですが、より多くの職種で就労できる可能性があるのではないでしょうか。

最近の仕事の効率化ツールは、視覚障碍者が使えるような仕様になっているものも増えているように感じており、この流れも就労の幅を広げてくれています。

視覚障碍当事者には自分が身につけたスキルを世の中に向けて積極的に発信していただきたいと思っています。今後私も、IT支援を行って下さる後継者を発掘して、育てていきたいです。

今より社会参加しやすい世の中にするために

「どうやったら視覚障碍者が今よりも、就労に限らず、生活なども含めたより広い意義での社会参加をしやすくなるだろうか。」と考えてみたときに、私が気になるのは情報へのアクセスのしやすさです。

今はありとあらゆる情報がインターネットを通じて発信されています。個人だけでなく、企業のサービスもオンライン上のものが多くあります。ウェブを使って仕事をする人も多く、日常的な買い物や、各種申し込みなど、インターネットでできることは増えてきています。

そのようなインターネット上の情報を視覚障碍者が取得しにくい状況が長年続いていました。スマホやパソコンは視覚情報が多く、未だに使うことに不安を感じる視覚障碍者も多くいるのです。

視覚障碍者のIT機器の利用が進まないのは、当事者の努力や支援が少ないからだけとも言い切れません。私達は、スクリーンリーダーと呼ばれる音声読み上げソフトを使うことで、インターネット上の情報にアクセスできるようになります。

以前から比べると、このスクリーンリーダーに対応しているサイトやアプリは増えてきていますが、全体で考えてみるとまだまだというのが正直な感想です。

次世代の人たちにも、視覚障碍者のウェブの利用から取り残させない活動を積極的に行っていただきたいと思います。


実態を知ってもらう機会を作る

すべての障碍者の中で、視覚障碍者の割合は少数派です。もし、視覚障碍者が今よりも積極的に外に出て人と交流するようになったとしても、直接関わる機会のある人の数は限られてしまいます。

社会にその実態が知られないままだと、差別や偏見により様々な生活の場面で取り残されてしまうことにもつながります。そのため、私は視覚障碍当事者が積極的な発信活動を行っていく必要があると思っています。

現在では、SNSやブログのプラットフォームサービスなどを利用する機会が多くなり、発信する手段が増えてきました。次世代の視覚障碍当事者とその支援者には持続的な発信活動を行っていって欲しいと考えております。


まとめ

私の考えを改めて整理してみますと、次世代の人たちには継続的に情報を発信し、それらを教育現場から社会全体へ広げ、その効果として視覚障碍の認知が浸透していくことを理想としています。

実態を知ってもらえていないと、社会参加が制限されやすくなります。

例えば、視覚障碍者がスクリーンリーダーなどの支援機器を使って作業ができると企業の方が知らなければ、「うちの仕事は視覚障碍者にはできないだろう」と思われてしまうかもしれません。就労がなかなか進まない背景には、情報が伝わっていないこともあるのではないでしょうか。

そのためにも、次世代の人たちには認知度を高める活動を絶やすことなく行っていただきたいと思っています。

私自身も、本格的に活動を始めて間もないですが、視覚障碍者の実態をどのように言葉で伝え、行動して行けたら良いか考えつつ実行に移していきたいです。

最後に、現在そして将来の視覚障碍者の子供たちに好きな事が社会に出て存分に発揮出来るような仕組みを確立出来るよう、今後次世代の人たちにも継続的に活動を行っていただきたいと願っております。

Text by
小川 誠 twitter note

視覚障害者の全盲の男です。趣味は、IT情報機器いじり・スポーツ・読書です。群馬県内、またはオンライン上でITサポートの活動をしています。最近ウェブアクセシビリティ当事者になりました。

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