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愛着障害の診断は「許せないほど大嫌い」な自分を「嫌い」に変えた

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2022.12.22

「愛着障害」という言葉を知ったときに、私には思い当たる節しかなかった。今回は愛着障害の意味や診断を受けての心の変化、思考の悪い癖に対してやっていることなどを書こうと思う。

執筆:月尾 いる

はじめに

「愛着障害」を知ったのは本当に偶然で、当時仕事のスピードを上げるために改善策をネットで調べていたところ、たまたま見つけた言葉だった。数年前までは私自身も存在すら知らなかった言葉だが、今では診断されてよかったと感じている。

今回は愛着障害の意味や診断を受けての心の変化、思考の悪い癖に対してやっていることなどを書こうと思う。

愛着障害とはなんだろう?

元来愛着は「あいじゃく」と読み、仏教用語で「煩悩」を指す言葉だそうだが、現在では心理学用語のアタッチメントという意味で使われる方が一般的だ。

愛着(Attachment)とは、一言でまとめると「母親と子どもの心の結びつき」のことだ。つまり、母親との愛着が希薄であればあるほど、子どもは愛着障害になりやすいとされる。また、個人の性質を愛着の観点から分析して、4つのカテゴリーに分類したものを「愛着スタイル」と呼ぶ。

一般的に、安定型以外の人が愛着障害になりやすいといわれているが、大きな違いは「安全基地」があるかどうかだ。安全基地とは、「不安になったときや辛い思いをしたときに拠り所となれる存在」のことである。

また、愛着障害は、養育者から虐待されたり養育者と早期に離別したりすることで発症しやすいとされているが、私自身はどちらも該当しない。しかし、両親は私の安全基地ではなかった。

「厄介な子」だった私

子どもの頃の私は母親にとって、「厄介な子」だったらしい(というようなことを実際に言われた)。しかし、母がそう感じた理由には私の発達障害とHSPが深く関係していると思う。

発達障害もHSPも対人関係で苦労しやすいとは聞くが、幼少期の私もそうだった。周りの子にどう話しかけていいかわからなかったため、イマジナリーフレンドしか友達がいなかった。寂しい現実よりも空想世界の方が居心地はいい。

しかし、空想世界の滞在時間が長くなるにつれて、リアル世界の私はぼんやりしていることが多くなった。先生の話を全く聞いていない、学校の宿題も手につかない。家だけではなく学校にも頻繁に忘れ物をして、気がついたら学校が閉まった後だったということもある。

「手のかかる子ほどかわいい」という言葉も存在するが、個人的には大嘘だと思っている。私が見てきた大人にかわいがられる子はみな、「手のかからない良い子」ばかりだった。

弟と喧嘩をしたときには母から「あんたよりも優秀やから僻んでいるんやろ!」と言われた。同級生に小馬鹿にされたときには「あんたが悪い」と私に言った。母の言葉が何よりの証拠だと思う。

今なら親や先生・迷惑をかけられた同級生にとって、私は厄介な子以外の何者でもないことはわかる。当時の私の安全基地は空想の世界だけだったし、そこ以外には存在しなかった。

愛着障害の診断を受けて変わったこと

「愛着障害」という言葉を知ったときに、私には思い当たる節しかなかった。過剰に人の目を気にしたり、他人と仲良くなりたいのになれなかったり、心のどこかでずっと理解者を求めていたり、劣等感がハンパなかったり……挙げれば本当にキリがない。

どうしても気になった私は、とある病院と提携しているカウンセリングルームで愛着障害の検査を受けることにした。

愛着障害と発達障害はわりと混同されやすく、発達障害だと思っていたら愛着障害だったというケースも存在するらしい。もちろん、発達障害の人が愛着障害を発症する事例も多くある。そういった背景から、過去に受けたWAIS知能検査を再度受けることになった。

WAISテストとは、医療機関で受けられる知能検査のことで、発達障害の人が自分の得意・不得意を知るためにも使われている。

愛着検査の結果は不安型だった。自尊心が低く、人間関係で心配や不安事が多く、他人に依存しやすい傾向にある。他人と距離を置きたがる回避の傾向も強いそうだが不安型の数値が圧倒的に高いらしく、恐れ回避型ではないそうだ。

一方、WAIS知能検査結果は複数の分野で20~30ほど数値が上昇していた。

臨床心理士さんの話をまとめると、IQの変動は当時と今の体調の差のほかにも、愛着障害が影響を与えた可能性もあるということ。

また、WAISテストの結果は数値の変動があるとは言え、得意な分野と不得意な分野の間で15以上離れているため発達障害だとは思うけども、「自分は価値のない人間だ」と責めなくていいということだった。

そのとき、検査をしてくれた臨床心理士さんには未だにお世話になっている。カウンセリングを通して自分自身を客観的に見られるようになるにつれ、自分の障害も徐々に受け入れられるようになっていった。

「愛着障害かもしれない……」と感じている人へ


愛着障害の人は必要以上に自分を卑下している人が多いように感じる。私もそうだったけれど、それは思考の癖のようなもので、変えていけるものだと思う。

自分を客観視するには、紙に書き出してみるのがいいかもしれない。文章にすると、あとで見返したときに第三者目線で考えられるからだ。

なにか悲しいことがあっても、「もしかしたら、相手はこういう意味で言っていたのに取り違えていたのかもしれない」と気づくこともある。頭の中だけで整理できないことは、一度現実のツールに落とし込むことが有効だと思う。

あとは、どんな感情の自分も否定しないことが大切だ。誰かに腹を立てたときにたとえば、「クソぼけ!いてこますぞワレ!!」という言葉が浮かんできても、そんな自分を酷い人間だと思わないようにしよう。当人に面と向かって言ってはいけないが、心の中では何を思おうと自由だからだ。

過去は変えられないけれど、将来のために変えていけることはたくさんあると思う。心の澱が消え去ることはなくても、少なくなると前が向きやすい。あなたが少しでも自分を愛せますように。

愛着障害持ちのASD。愛着障害ゆえ にHSPのような症状が出ることも。Twitter小説大賞、三木露風賞などの受賞経験有り。スピッツが大好き。

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