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「普通に見えるから気にしない」の言葉にモヤモヤ

~内部疾患者が感じる“見える障害”への無意識な差別意識

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2023.1.16

私は、先天性心疾患という見えない障害を持つ内部疾患者。
だからこそ感じる、見える障害への差別意識が、日常の中には多々ある。

執筆:古川 諭香 Yuka Furukawa

持病告白時の「普通に見えるから気にしないよ」の返答にモヤモヤ

「実は私、心臓が悪くて…」と打ち明けると、よく言われる返答がある。それは、「普通に見えるから気にしないよ」という言葉だ。

相手からしてみれば、おそらくそれは「心配しなくても大丈夫」とか「受け入れるよ」という意志表示なのだろう。けれど、その言葉を聞くたび、心がモヤモヤしてしまう自分がいる。

もし、私に目に見える障害が現れたら、この人はどう思うのだろうか。そして、目に見える障害を持つ人に対して、この人はどんな反応をしているのだろうかと、深く考えてしまうのだ。

内部疾患者は障害が目に見えない分、周囲に持病が理解されにくいが、その一方で、好奇な視線を向けられにくい。健常者と見た目的には違いがない場合が多いからだ。

だが、目で見える障害を持っている人は、心ない視線を受けやすい。特に、顔に障害が現れていると、興味本位な視線を向けられやすく、当人がさらに苦しみを感じてしまうケースもあるだろう。

私はその事実を、顔面神経麻痺になって知った。右側の表情筋が動かず、笑うと顔が左側に引っ張られて歪む自分を見るのも苦痛だったが、それ以上に、人と話している時や通院時に外へ出て、人の視線を浴びなければならない時が辛かった。

発症当時、世間はコロナ禍であったため、外出時にはマスクを着用できたが、それでも自分が周囲にどう見えていて、どんな受け止め方をされているのか想像すると怖かった。

だが、そうした経験は、他人の障害をどう受け止めるかを考えるきっかけになった。私が「普通に見えるから気にしないよ」の言葉にモヤモヤしてしまうように、自分自身も気づかぬうちに、誰かに対して心をえぐる無意識の差別を吐いてはいないだろうかと思い、言動を見直したくなった。

障害があることをフォローするのではなく、「その人自身」への愛を伝えよう

「普通に見えるから気にしない」。優しい人はそうフォローし、私を受け止めてくれる。私以外にも、そんな言葉をかけられたことがある内部疾患者はきっと多いと思う。

だが、普通に見えても決して普通にはなれない苦しみを感じてきた人にとって、そうしたフォローは響きにくく、私のように、見える障害への無意識な差別意識を感じてモヤモヤしてしまう人もいると思う。

では、どうやって内部疾患者の勇気ある告白を受け止めたらいいのだろうか。「こう言われたら嬉しい」と感じる返答は人によって違うため、一概には言えないが、私ならば「そのままのあなたが好きだから気にしない」と言ってもらえたら嬉しい。

勇気を出して持病を打ち明けた時、そんな返答をもし、相手がしてくれたなら、障害があることで劣等感を抱き続けてきた自分のことが少し好きになれるし、障害ごと愛されている気がして安心できる。

この返答は、見える障害を持つ人にも寄り添えるものだと思うので、私も誰かから持病を打ち明けられた時には、こういう愛情表現をし、障害ごと相手を受け止めたい。

些細な言葉で人の心は傷つきもするし、救われもする。自分がなにげなく口に出した言葉は、どんな風に相手に響いているのか…。そう考えることは、優しい社会を築く第一歩になるのではないだろうか。

猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。

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