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【弱視のボクの就活奮闘記~1】「障がい者の就職フェス」初参加で感じた企業側のニーズ

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2023.1.4

こんにちは!ライターの榎戸(えのきど)です。

今回から何回かに分け、私の就活体験記を書かせてもらいます。

障がい当事者の就活では、独特の習慣があったり、社会の「本音/建前」とぶつかることが多かったり・・・様々なことがあると思います。

そんな就活に挑もうとされている障がいのある就活生や、就活生の関係者の参考になればと思い書かせてもらいました。
ぜひご覧ください!

執筆:榎戸 篤 Atsushi Enokido

高速で走る電動車いす、前後に素早く動く松葉づえ、小走りにかける盲導犬・・・

私は、そんな光景に圧倒されていた。

ここは障がい当事者が集まる専門の合同就職面接会。

弱視で大学3年の私は、初めてこの面接会に参加した。

来場前、「障がい者の就職フェス」という言葉の響きから、どこかおっとり、のんびりしたものをイメージしていた私。しかし、道具を使って我先にと急ぐ就活生たちの勢いに、私は気後れしていた。

参加特典のクオカードを受け取り、おそるおそる会場へ。

入ってみると、巨大な空間にずらりと椅子が並べられ、100人を超えるであろう学生たちが座っていた。この一人一人に何かしらの障がいがあると思うと、不思議な感じだ。

私は着席し、出展企業の情報が掲載された冊子をめくる。メガバンク、大手メーカー、マスコミ、役所・・・大企業・官公庁が名前を連ねているのを確認し、私は「やっぱりな。」とほおが緩んだ。

私が就職活動を行った2012年は東日本大震災の直後ということもあり、「自分は、果たして就職できるのだろうか?」と不安を抱える就活生が多かったように思う。しかし私は違った。「障がい者採用枠」があると思っていたからだ―――

企業などは、一定の割合で障がい者を雇用しなければならない(=法定雇用率|厚生労働省)。

そのため、一般的な採用試験とは別に、障がい者だけが応募できる「障がい者採用試験」を実施するところも多い。

障がい当事者は、「一般の採用試験」と「障がい者採用試験」両方に応募でき、かつ「障がい者採用試験」の倍率は一般より低いことも多いため、「一般の受験生よりも就職がラク」というイメージを持つ人も多い。

実際、周りの健常者の友人から「お前は就活ラクでいいよなー」と茶化されることもあった。正直、私自身「なんとかなりそうだな」と、甘く見ていた部分もある。

合同面接会の会場に就活生がそろい、参加者全員に対する各企業のPRタイムが始まった。

人事担当者らの話を聞きつつ、冊子をぼんやり眺めていた私は、ある部分に目がとまった。

企業の概要・初任給・先輩からのメッセージなどお決まりの項目の脇に「障がい種別ごとの受け入れ実績」という欄があった。

「障がい種別」をあえて出す理由は何なのだろう?初参加の私にとって、疑問が浮かんだのだった。

企業のPRが終わり、いよいよ1対1の面談の時間に。就活生は各々好きな企業のブースで面接を行うシステムだ。

私もさっそく、先ほどチェックした企業のブースへ。

待機用の座席に座ると、車いすの女性と面接官のやりとりの声が耳に入ってきた。

「どんな職種を希望されていますか?」という面接官に対し、女性は「私は車いすなので、動くことの少ない事務職が良いと思っています」と返答していた。

私はとっさに、「あれ、ちょっと理由が消極的じゃないかな?」と思ってしまう。

面接官はどんな反応をするだろうか?

耳をすませて観察してみると、「そうですか~うちは車いすの事務職の方も多いですから!」と満足げにうなずいていた。

なんだろうか、言葉にできないが、何か違和感を抱く私。

その女性の面談が終わると、次は、全盲の女性の番だった。

面接官が「どんな職種を希望されていますか?」と先ほどと同じ質問を投げかける。

これに対して女性は、「私は事務職が良いと思っています。特に大学で学んだ○○が生かせそうな、○○部などに関心があります」と熱を持って話していた。


「さっきの女性よりも、だいぶ積極的だな~好評価もらえそう」と私が思ったのもつかの間、面接官は困ったようにこう言った。「うちの事務は活字が多くてね・・・点字だと無理なのよね」

私はそこでハッとなった。

本来合理的な配慮によって、誰もが働ける環境を作らなければならない。

活字が多い職場であっても、点字を使えるようにしたり、仕事の切り出しを行うなどの配慮をしなければいけない。

しかし、環境を整備せずに入ってくれる障がい者がほしい・・・という本音を持つ企業も多いだろう。

「障がい種別ごとの受け入れ実績」は、ひとつの判断の指標になっていたのではないか?私の頭にそのような考えが浮かんだ(もちろん全ての企業が本来の合理的な配慮をしないわけではないし、実績=今後の動向でもない)。

今思うと、これが私と障がい者採用の「本音/建前」との出会いだったのかもしれない。

おわりに

いかがでしたでしょうか?

就活の開始当初、障がい者採用を少し甘く見ていた私でしたが、障がい者採用にも企業のニーズがあり(『うちは視覚障がい者・聴覚障がい者がほしい!』『うちは晴眼の障がい者がほしい』とか)やはり一筋縄ではいかないということがわかりました。

いまの私が当時の私に伝えたいのは、就活生の人間性や能力だけで合否が決まるのではなく、企業のニーズでも決まるため、甘く見すぎず、そして不合格でもあまり気にせず、着々と活動を続けてもらいたいなということです。

一歩一歩やっていけば、必ず良い結果や自分に返ってくるものがあると、私は思っています。

1989年生まれ、東京都青梅市出身。
3歳の時のケガにより弱視に。視力は左0.04、右0。
現在は、テレビ番組の制作会社で働きながら、ライターとして活動中。
▼執筆媒体
当事者向け旅行サイト「COTRAVEL」
障がい者ライフスタイルメディア「Media116」

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