採用企業向けウェビナー第5弾「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい 者採用の知識を深めよう」セミナーを開催しました
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2023.1.6
こんにちは。多様性を推進するプロジェクト パラちゃんねる代表の中塚です。
採用企業の皆さまの声をもとに開催された第4弾 「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーに続き、12月14日に開催された第4弾「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーについての活動レポートをお届けします。
執筆:パラちゃんねる運営事務局
はじめに
多様性を推進するプロジェクト パラちゃんねるは、「誰もが特性を活かせる、多様な選択肢がある社会」を目指し、障がい者雇用の活性化を図ることで「働く」側面から社会課題の解決に挑戦しています。
2022年1月からスタートした求人サイトでは、日々、全国の採用企業の皆さまより「当事者のリアルな現状をもっと知りたい」という声が寄せられています。
- 当事者の障がい特性が正直わかっていない
- 当事者が実際にどのようなポイントで求人を見ているのかリアルを知りたい
- どんな働き方をしているのか、直接聞いてみたい
- 今働いている社員には聞けないし、、、
今回は、第5弾となる「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」セミナーについての活動レポートをお届けします。
>ファシリテーター
NPO法人Collable(コラブル)の代表理事 山田小百合さん。障がいのある人たちや多様な人との共創の場をつくるCollable(コラブル)は、ワークショップを通じて「インクルーシブデザイン」の普及や、障がいの有無をこえた場作り、それらの啓発活動を行っています。
登壇者①
難病(べスレムミオパチー)のある、山口真未さん。商業高校卒業後、障がい者雇用で大手鉄道会社に入社し、経理・人事など10年間在籍。現在はファイナンシャルプランナーとして活動しています。
>登壇者②
視覚障がい(弱視)のある、榎戸篤さん。大学卒業後、テレビ制作会社で4年半勤務した後にディレクターを目指し転職、現在はテレビ制作会社にて映像検索のキーワード設定業務に従事しています。
セミナー当日は匿名開催ということもあり、障がい者雇用に関わるさまざまな方々に参加いただきました。
- はじめて障がい者採用をするので当事者の方の生の声を知りたい
- 求人票や選考プロセスで印象的だった事例を知りたい
- 現場配属後の配慮について質問したい
障がい者雇用を推進している企業の皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです。
障がい者雇用におけるキャリア形成の難しさ
山口さんは、商業高校卒業後、大手鉄道会社にて経理業務に配属されています。配属時のコミュニケーションについて教えてください。
高卒の場合、通常は駅配属となりますが、筋肉の病気があり重いものが持てなかったり、移動に注意が必要だったりと「できる・できない」の確認をする中で面接段階で駅配属ではなく、事務としての仕事を提案されました。職種だけでなく自宅からの通勤経路や職場での移動など環境面のすり合わせの結果として支社での予算・決算対応、予算の振り分け業務やデータ分析、経費削減プロジェクトなどに関わることとなりました。
経理業務に従事した後、電車の設備・メンテナンスの企画部門へ異動し部長秘書や教育・研修、人事関連業務と多岐に渡る仕事を兼務されています。障がい者雇用において職域を広げたり、キャリアアップを目指すことが前提ではないケースも少なくありませんが、当時の状況はいかがでしたでしょうか?
通常3~5年間隔で異動する中で、私は7年間同一業務に従事はしていましたが、私自身に出来ないことも多くあるため、企業にとって異動の判断は簡単ではなかったように思います。私が新たな仕事に挑戦したいと想い数年間異動の希望を出し続けた結果として実現したという感じです。
配属や異動のエピソードから企業側の丁寧かつ真摯な対応が印象に残りますが、入社10年を経て退職を決断された理由について教えていただけますでしょうか?
病気が緩やかな進行性のため入社10年目にして夜間と食事前後に人工呼吸器が必要となったことが退職理由です。筋力の弱い私にとって重さ3キロの人工呼吸器を運ぶことは容易ではなく電動車いすに頼らざるを得ません。ただ、電動車いすに乗ってしまうと1~2ヶ月で歩くことができなくなってしまうため、現時点において歩く選択肢を失いたくないと退職することを選択しました。コロナ前で在宅という選択肢もなく、仮に在宅という選択肢があれば決断もまた変わっていたかもしれせん。
病気や障がいが進行性の場合、企業側も症状の変化に合わせた対応が迫られ、働く当事者も決断を迫られる可能性を常に秘めていることになります。簡単ではないですが、予め未来の選択肢がお互いに共有できていると機会損失をすることなく互いにとっての最善の選択肢が導き出せるのかもしれません。
チャレンジしたくても選べない
榎戸さんは、新聞記者を目指して就職活動をされています。一般的にマスコミは文字や映像を見ることが多くなる印象がありますが、視覚障がいがある中での就職活動はいかがでしたか?
中学の時から新聞記者になるのが夢で大学もメディア専攻でした。ただ、新聞記者は倍率も高いため就活ではマスコミの一般枠や障がい者雇用の事務職なども視野に入れて計100社ほどエントリーしたのを覚えています。結果的には新聞記者は、地方支局でキャリアを積んで本社へという流れがあり、車の運転ができないと難しいと断られてしまい、マスコミ全般においても激務ということで就活はなかなか上手く進みませんでした。
視覚障がいがある中での就活の難しさがありながら、結果的にテレビ制作会社に就職されています。内定の経緯や具体的な業務内容について教えてください。
マスコミへの就職が諦めきれず、人づてに就活を継続していたところ「そんなに報道、報道って言うなら一緒に働いてみる?」と内定をいただきました。入社後はアーカイブ部に所属し、ニュースや番組で利用する過去の映像を扱っており、私は過去の映像にキーワードを選定して検索率を上げる業務に従事しています。
アーカイブ部に約5年間所属した後に転職をされています。転職に至る経緯を教えてください。
働く中でやはり現場に携わりたいと想い、AD職への転職を決意しました。ただ、覚悟はしていましたがAD職はロケ現場の進行や買い出し、掃除など雑用全般が多く、時間勝負、体力勝負の中で物理的に見えないことで周囲に迷惑をかける部分が多かったです。結果的に4ヶ月で継続することは諦めました。他の企業を経験することで、改めて前職の職場の良さに気付き、先輩の協力もあって、以前勤めていた会社に再入社することになりました。
障がい者雇用において視覚障がいがあるというとマッサージや事務など限られた職種に限定される傾向があります。障がいがあってもできる職種も大切ですが、障がいは関係なく、人それぞれに求める職種やキャリアがあるということを認識することが必要と感じました。
採用担当者のぶっちゃけ質問
セミナーでは参加された採用企業の皆さまからも多くの質問がありました。
Q.働く中でどんな環境に働きやすさを感じますか?また、これまで困った、嫌だなと感じた場面があれば教えてください。
>山口さん
私は筋力が弱いため、人とぶつかると踏ん張ることができず転んでしまいます。そのため、満員電車は利用できず、通勤の坂や階段など些細な道路事情にも悩まされますし、トイレの心配も尽きません。フレックス出社も有難かったですが、在宅ワークを経験して言葉以上に心身の負担が解消されて働きやすさを感じています。一方で同じ空間にいないことでコミュニケーションの部分には工夫が求められると感じています。
>榎戸さん
私も同様で在宅ワークには働きやすさを感じます。視覚障がいがあると見えずにぶつかってしまい、怒鳴られたり、殴られたりという経験があるので通勤の不安を常に抱えています。一方で多くの視覚障害者は音声読み上げソフトを利用しながら仕事に従事しますが、音声読み上げソフトの容量が大きくて動きが悪かったり、貸与PCの設定が上手くできていなかったりと機器面での不満も聞こえてきます。また、些細な見えない場面で助けてもらいたくてもお願いし辛いということが増えた気がします。
Q.ミスマッチを生まないために現場にあると嬉しい取り組みがあれば教えてください。
>榎戸さん
ADへの転職がミスマッチの例だと思いますが、互いに目が悪いことは認識していましたが、どの業務はできて、どの業務ができないという具体的なことの共通認識がありませんでした。実際の職場で業務を体感できると諦めや気持ちの切り替えもしやすいので有難いです。
>山口さん
私の場合は洋式トイレと手すりが必要で椅子も高めでないと立てないなど細かい点での確認が必要となるので、会社訪問でヒアリングをしていただけたことは嬉しかったです。障がい者でもインターンやアルバイトなど仕事や職場を見学できる機会があると良いと思います。
Q.障がい者雇用として肩身の狭い思いや転職のきっかけになった出来事はありますか?
>山口さん
入社後に耐震設計上の建て替えが決まっているビルにスロープを付けていただいたことがあり、有難かったのですが心理的な申し訳なさはありました。その他、宿泊研修の機会もありましたが、介助者となる研修生と日程を合わせたりと手間が掛けてしまって申し訳ないと思う場面は多々あります。前提として一緒にというスタンスは感謝しかないですが、一緒に決めるという場面があっても良いのかもしれません。
>榎戸さん
とくに20代の時は昇進の可能性がないというのは辛かったです。例えば出世競争に敗れた後、出社するのはかなり億劫になると思います。視覚障がいがあると、それが新卒で入社した時点で直面するため、20代でやる気はあるのに先がないという現実は厳しいなと思いました。
登壇者からのメッセージ
>山口さん
私自身が通勤が難しくなり退職した、という経緯もあるため、通勤の大変さや在宅勤務の導入に向けた質問等は素直に嬉しかったです。企業様も全ての人が満足するような結果を生み出すことは難しいとは思いますが、はじめの一歩に感じられました。また在宅勤務の導入など、働きやすさや柔軟性は障がい者だけでなく、パパママ、介護をしている人など需要が多いはずです。セミナーでお話したことが障がい者への理解や企業価値が高まること、そして社会をプラスにするヒントになれば幸いです。
>榎戸さん
セミナーに参加させてもらいながら、「よくよく考えてみると、自分もこんなに社内では本音を話せていないかもしれないな」と感じていました。社外だからこそ、クローズドだからこそ話せる本音があって、それこそが当事者のために企業様にお伝えしなければいけないことなんだなぁと改めて感じさせてもらいました。そんな場を作って下さって、また呼んでくださって、本当にありがとうございました。
セミナー参加者のアンケート結果
「非常に良かった」40%
「良かった」60%
セミナー満足度の理由は以下の通りです。
- とてもポジティブな方たちでしたが、反面気を使っているということがわかりました。
- 採用の段階での業務説明の精度、採用後もこちらが気にしていなくても違和感を感じているのだと理解できました。
- 障がい者だから出来ないこととしたい事の難しさが感じられるいい機会でした。
- 実際に感じていることをお聞きできる場面が今までなく、且つ身近にもいなかったためとても興味深いお話でした。
- 受け入れる側の環境や周りの配慮も見直す必要があるんだなと思いました。
パラちゃんねるでは、採用企業の皆さまと障がいのある当事者と共により良い障がい者雇用の機会を増やしていきたいと願っています。
困りごとがあればお気軽にご質問ください。当事者の意見をもとに回答をさせていただきます。
障がい者採用の困りごとを質問【ロクイチ掲示板】
第6回「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」
障がい者雇用担当とはいえ、十分な知識や経験がある方ばかりではなく、担当になったばかりの方々も多くいます。ネットや参考書にある情報だけにとらわれた雇用促進では、当事者とのミスマッチを助長し兼ねず、働きがいのある雇用促進と本質的な多様性の広がりは実現できません。
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第6回「当事者へのぶっちゃけ質問で障がい者採用の知識を深めよう」
日時:2023年1月18日(水)12:00-13:00
ファシリテーター:NPO法人Collable 代表理事 山田小百合
■ゲスト
>豆塚エリさん(身体障害:車いす)
16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷し、以後車椅子に。現在は詩人としての本の出版や介護事業の経営に携わっている。
執筆コラムはこちらをクリック
>佐々木美紅さん(身体障害:電動車いす)
身体障がい(脊髄性筋萎縮症)のある、佐々木美紅さん。高校卒業後、障がい者雇用として北海道庁、コールセンターを経て、大手旅行会社で10年間勤めた後に現在はフリーランスとして執筆活動やコミュニティFMでのパーソナリティを勤めています。
執筆コラムはこちらをクリック
参加費用:無料
参加社数:先着30社様
セミナーは匿名・画面表示なしでの参加を推奨しております。
肩書にとらわれず、気軽に自由に質問できる場を提供しています。
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私たちパラちゃんねるは、当事者とのリアルな対話の場を提供することで採用担当者と共に障がい者雇用を促進していきます。ご参加お待ちしております。
Text by
パラちゃんねる運営事務局
多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」は、2020年より「知る」を広げるラジオ・コラムのメディア活動に加え、「自由な出会い」を創出する障がい者雇用特化型の求人サイトを運営しています。