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気分変調症がひどかったときの付き合い方(後編)

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2023.2.9

前回の記事では、私が気分変調症の症状がひどかったときに、自分なりに生活の中で工夫していたことが5つありました。前回の記事ではそのうち3つをお話させていただきましたが、今回の記事では残り2つの工夫をお話させていただきます。

執筆:中田 るる r.nakata

みなさん、こんにちは。中田るるです。

前回の記事では、私が気分変調症の症状がひどかったときに、自分なりに生活の中で工夫していたことについて、3つお話させていただきました。

今回の記事では前回お話し切れなかった工夫を2つお話させていただきます。今まさに病気の症状がひどくて辛い方や、どうやって病気と付き合って行ったらいいか悩んでいる方の、生活していく上での何かしらのヒントになれば嬉しいです。

第4ステップ 音楽の力を借りる

前回の記事でもお話した通り、私は気分変調症の症状がひどかったときは本当に寝て休んでばかりで、なかなか一般的な生活を送れませんでした。

そして休んでばかりいるとどうしても出てきてしまうのは、将来に対しての焦りや不安な気持ち、病気になった自分への嫌悪感でした。

体はしんどいのに、頭の中ではぐるぐると良くないことや悲観的なことを考えてしまい、なかなか眠れない。休みたいのに心が休まらない。そんな風に苦しくなるときが多々ありました。

そんな苦しくなってどうしようもないとき、助けてくれたのが音楽です。

自分がもともと音楽が好きだったこともありますが、音楽はそのとき、考えすぎてごちゃごちゃになる頭の中や、黒い感情でいっぱいになりそうになる私の心を救ってくれました。

ポイント① 今まで聴いたことのない音楽を聴いてみる

私がそのときやってみたことは、今まで聴いたことがないジャンルの音楽を聴いてみることでした。

これには理由があります。おそらく私だけではないと思いますが、自分の知っている音楽だと、そのとき聴いていた日々の思い出や感情、情景などが蘇ってきてしまうことが多く、当時はそれが辛く感じたのです。

「あのときは楽しかったなぁ…今はこんな状態になってしまって。」
「そういえばこの曲を聴いていたときは、仕事が辛い時期だったな。」

などなど、様々な感情や思い出が次々と蘇り、さらにしんどく感じてしまったのです。

でも、何か気分転換をしたい。そう思っていたときのことです。その当時から音楽のサブスクに入っていたのですが、たまたま「北欧ポップス」というラジオがオススメに表示されたのを発見し、私は何気なく再生してみました。

すると、今までに出会ったことのない新しい音や外国の言葉、日本やアメリカとは違うメロディラインが流れてきました。そのどれもがとても新鮮で、なんだか新しい気持ちになれたのです。

まだ何の思い出や想いが染みついていない曲たちは、私の心や頭の中に新しい風を運んでくれるようで、それが良い意味での刺激にもなりました。

それから、今まで聴いたことのない様々な音楽を聴くようになりました。

「今日はどんな曲に出会えるだろう。」

世界の音楽たちは、当時なかなか外に出ることが出来なかった私の、ひとつの生きる楽しみにもなってくれました。

そして、もうひとつ音楽が気付かせてくれたのは、「まだまだ自分の知らないことが世界には溢れているんだな」ということでした。

私の場合は病気になり家にこもってばかりいると、どうしても見ている世界が狭くなり、今まで生きて経験してきたことが人生のすべてのような気になってしまっていました。

しかし、自分が知っている世界や、今見ている範囲の世界はとても狭くて、まだまだ知らない新しいことが沢山あるんだと、音楽を通して感じられたおかげで、少し視野が広がった気がしたのです。

もし、新しい刺激が欲しいと感じる方は、今まで聴いたことのない音楽を聴いてみると面白いですよ。もちろん、お気に入りの音楽や大好きなアーティストがいる方は、好きな曲を思いっきり聴いて味わうのもオススメです。

なんだかいつも同じ景色を見ているような、同じところで足踏みしているようで歯がゆく感じる方は、日常に少しの変化を取り入れてみるのも良い方法だと思います。

ほんの些細な変化であっても、思わぬ発見や気付きに出会えるかもしれません。


ポイント② 生活シーンに合わせて音楽を活用する

もう一つ音楽で工夫していたことは、生活の様々なシーンでその場面に合った曲をかけて、気分を上げることです。これはすでに実践されている方も沢山いらっしゃると思います。

例えば、掃除をするときはテンポの良い曲をかけて、夜寝る前はゆったり静かな曲をかける、といった方法です。

これは当時から現在も続けている音楽の活用法です。仕事ができるようになった今は、「仕事に取り掛かる準備をしているときに必ずこの曲を聴く」と決めています。その曲を聴いてから仕事をすることを習慣化していると、不思議なことに、その曲を聴いただけで気持ちが仕事モードになるのです。「今から仕事するぞ。」という気分の切り替えにもなり、切り替えが苦手な私にとっては、とても良い方法になっています。

まだまだしんどくて寝てばかりだったときは、次のように音楽を使い分けていました。

  • 朝起きるときや身支度をするときはこのアーティストの曲
  • 少し家事ができそうなときはこのラジオ
  • 寝るときはこのプレイリスト

それを習慣化していると体が覚えていくのか、その音楽のジャンルを聴くとお休みモードになったり、ちょっと動きたいモードになったり、不思議なことになんとなく気分が切り替わっていくようになりました。

仕事中は音楽を聴けなかったり、家では好きに音楽を流せない環境にいるという方は、寝る前だけや掃除をするときだけなど、生活の中のワンシーンだけでも取り入れてみると、気持ちの切り替えになるのでオススメです。

自分の生活にピッタリくるお気に入りの曲を探すのも楽しみのひとつになり、私は今でも、精神的にも生活面でも音楽にサポートしてもらっています。

第5ステップ 自分のリズムで生活する

病気を良くする方法のひとつとして、よくネット記事や本に書いてあることに、「規則正しい生活をしましょう」というのがあります。

「朝は早起きして朝日を浴びましょう。日中はよく体を動かして活動し、夜は日が変わるまでに早く寝ましょう」といったものです。きっと多くの方が、一度は目にしたことがある文章だと思います。

しかし、規則正しい生活が病気を良くするために必要なのは百も承知なのですが、私にはこれがどうしても出来ませんでした。というより、正直今も出来ていません。

これは私が気分変調症の他に発達障害をもっているからという理由もあるかもしれませんが、日によって体調に波があり、一日の中でも体調が悪くなったり良くなったりするので、毎日同じリズムで生活するというのはとても難しいのです。

そして何より子どもの頃から朝起きるのがとても辛く、日中は仮眠を取らないと強烈な眠気に襲われてしまいます。

そんなときに今の主治医にアドバイスしてもらったのが

「自分のリズムで生活したら良いんですよ。朝や昼の時間がしんどいなら、夜に仕事したり、活動したっていいんですよ。」

ということでした。

これは私にとっては目から鱗でした。当時は病気を良くしたくて生活リズムを整えようと必死になってもうまくいかず、なかなか出来ない自分を責めて、悪循環にはまっていました。

主治医にアドバイスをもらってから、規則正しい生活をすることに労力をかけるよりも、自分の体調や体のリズムに合わせて生活することを意識するようになりました。

午前中はあまり活動せず、午後はしんどくなったら仮眠をとったり、横になって休んだりしながら夕方からマシになってきたら、家事やできることをする。今より病気がひどいときは、そんな風に一日を送るようにしていました。

そうすると、不思議と体と心が少しずつ楽になっていきました。そして自分でもびっくりすることに、自分の体のリズムを意識して生活していると、今では朝に活動できる日も出てきたのです。

規則正しい生活をしようと努力していたときは出来なかったのに、無理に理想の生活に自分を当てはめなくなったら、自然とできる日が出てきたのです。

人によっては仕事の勤務時間が決まっていたり、ご家族やお子さんがいて、なかなか自分だけの都合で生活リズムを決められないという方も多いでしょうし、難しい部分もあると思います。

私の場合ですが、現在は仕事も自分で稼働時間を決められる職種に変えて、できるだけ自分に合った生活が送れるようにしています。

生活全体を変えるのは難しくても、自分らしくいられる時間を持てるように工夫してみるのは、心と体が楽になる一歩だと思います。


理想はあくまで理想。自分に合った方法を取り入れよう!

気分変調症がひどかったときの付き合い方について、前編と後編、合わせて5つの方法をお話させていただきました。

補足ですが、これは私流のやり方で、すべての方に良い変化が起こるやり方ではありません。

それと同じで、本やネット記事に書いてある病気を良くする方法も、あくまで理想論だったり、書いた方にとってはその方法が良かったというものだと思います。

大切なのは、「自分に合った方法かどうか」ではないかと私は思います。

どんなに良い方法があったとしても、それで100人の方が病気が良くなったというデータがあったとしても、それが自分に合っていなければあまり効果がない気がします。

自分に合った方法を見つけることはなかなか骨の折れる作業ではありますが、自分をよく知るきっかけにもなるのです。

もし、私の記事の中に、「この方法やってみようかな」と思えるものがありましたら、あなた流に取り入れていただけると嬉しいです。

理想に自分を当てはめるのではなく、自分に合った方法を見つけてくださいね。

それではまた、ここでお会いできますように!

中学生ぐらいから気分変調症になり、30歳のときに発達障害(自閉症スペクトラム)と診断される。自分の障害や病気を知るまでは大変生きづらい人生を送ってきた。考え方の転換や生活の工夫を知ることで、自分らしく生きる練習中。絵を描くこと、文章を書くこと、eスポーツ観戦が好き。

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