趣味は命綱?うつ病になった後も趣味を持つべき理由
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2023.2.20
こんにちは、城崎ミトです。
今回はうつ病×趣味について、自身の体験談を書いていきます。
皆さんはどんな趣味をお持ちでしょうか。自分は一次創作(原作を持たない創作物、オリジナル作品の制作)を行なっており、当時はフリーゲーム制作をしていました。
うつ病の症状が出る頃にはペンも握れなかった記憶があります。懐かしいです。
執筆:城崎ミト
うつ病の治りはじめが試練の始まり
いざうつ病になると、趣味を楽しむ気力なんてないですよね。自分もそうでした。何も考えられないし、立つことも座ることも辛い。
「廃人みたいだなぁ」
と思いながらも、動けないのでずっと寝ています。食事は2日に1回くらい。トイレだけ体を引きずりながら往復する。そんな状態を2週間ほど続けてました。
問題は症状が少し良くなった頃。うつ病の治療をはじめて1ヶ月くらい過ぎると、頭が動くようになります。すると今度は猛烈な自己嫌悪が襲いかかってくるのです。
「世間の人々はみんな学んでいるか働いている」
「自分は20代を無駄に過ごしている」
「何もできない自分は、人間として価値がない」
頭は動くのに体が動かない。でも考え始めると自己嫌悪に陥る。悪魔のループです。家の中を歩くのがやっとで、風呂もドライヤーも疲れるから嫌。ご飯を食べるのもしんどい。
「自分はこのまま死ぬのかもしれない」
鏡に映った自分を見て、確信しました。その時は元の生活を送る自分の姿なんて、ちっとも想像できなかったのです。
きっかけはフォロワーさんの手紙から
ちょうど私がうつ病で倒れた時、SNSのフォロワーさんから手紙が送られてきました。何時に家に届いていつ自分の手元に来たか、意識があやふやで覚えていません。その手紙にはフォロワーさんが作った本やアクリルグッズが入っていました。
文字が読めるくらいに意識がはっきりした時に、布団に入ったままそのフォロワーさんの本を読みました。30ページほどの短編小説でしたが、読むのに何時間もかかったと思います。
それでも夢中で読み込み、何往復もしました。理由もわからずボロ泣きしました。彼女が描いた物語がとても美しく、どんなお話より尊いものに感じたのです。うつ病になってから初めて感動を覚えました。
読み終えて私は自分に問いかけます。
「このまま死んでいいのか?」
何も作れないままくたばるのか。何も残せないまま忘れられていくのか。当時の私は死ぬことよりも、死ぬまでに何もできないことの方がよっぽど恐ろしく感じました。頭の中に描いたお話がそのまま消え去るのが、残酷に感じました。
そこから自分は床を這いつくばり、机によじのぼり、パソコンを開きます。その時はまだ歩くことがロクにできず、参考書レベルの文章を理解できないほど頭の動きは鈍っていました。体はボロボロのはずなのに、ゲームを構築する思考力だけはやけに冴えていたことを覚えています。
こうして私は、プレイに2時間かかるアドベンチャーゲームを2週間ほどで完成させました。その後はまたしばらく寝込みました。
自分がいてもいい場所を見つけた
ゲームを公開してから感想やコメントをいただくようになり、ゲーム投稿サイトのバナーにも表示していただけるようになりました。作品の反応を見るために、私は布団から這いずり出てパソコンを開くようになります。
「遺作」のつもりで奮闘して作った作品ですが、世間から見れば大したことのない、話題にもならない、つまらないものです。それでも完成させた喜びは、私に活力をくれました。今でも特別な作品です。
そして自分がうつ病を発症したことを真っ先に打ち明けたのは、SNSのフォロワーさんでした。友人には後ろめたい気持ちがあって、しばらく隠していたのです。自分の症状や悩みをSNSにつづると、温かい言葉をくださりました。自分はまだこの空間にいても良いのだと思わせてくれました。
「次の作品をいつまでも待ってます」
「楽しみにしています」
こんな惨めな自分に「次」を求めてくれる人がいる。社交辞令でもお世辞でも、その時の私にとっては救いのように感じました。
療養中でも趣味は持ち続けていい
「うつ病のせいで仕事も何もかもできないけど、何かしなくちゃ」
そう焦った時はまず「自分が好きだったもの」を再開してもいいのではないかと思います。気分が乗らない時は、新しい趣味を始めてもいいでしょう。私は自身の経験から、自分の心が少しでも弾むことをやるべきだと感じました。
「働けないのに遊んでるんだ」
「好きなことだけはできるんだね」
そんな言葉は「うつ病って聞いたけど案外元気だね」という言葉と同じくらい価値がないです。
うつ病はマイナスな感情ばかり頭から生み出して積もっていきます。そこからポジティブ思考に切り替えるのは至難の業。だからこそ「楽しい」「嬉しい」と思えることはどんどん摂取していくべきです。これも療養の1つではないでしょうか。
特に私にとって趣味は「もう1つの居場所」です。家族や職場には罪悪感を持ち、友人に打ち明けるのが怖くて孤独だった私には、趣味のつながりは命綱のようでした。もちろん趣味に打ち込みすぎはよくないですが、生きる糧にするのにピッタリだと思います。
おわりに
現在自分はwebライターとシナリオライターをやっています。シナリオライターは趣味がきっかけでいただいた仕事です。趣味の延長でお金をいただくことは想像もしてませんでしたが、そんな縁もあるのだと実感しました。
今でも趣味は自分の原動力です。心の逃げ場として、生きがいとして、人とのつながりとして、趣味を持つことは自分の支えになると思います。もし少しでも興味があることが見つかったら、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。