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第1回「障がい者雇用のあるある座談会」~働く側の悩み、困りごととは~

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2023.2.14

こんにちは!パラちゃんねる運営事務局です。
障がい者雇用担当者交流会「FLAT(ふらっと)」への情報提供として、障がい者雇用で働く当事者の困りごとを集める場として2023年2月5日(日)に第1回「障がい者雇用のあるある座談会」を開催しました。当日は、Twitterスペースに160名の方に参加いただきました。

執筆:パラちゃんねる運営事務局

はじめに

2022年1月にオープンした求人サイト「パラちゃんねる」では、これまで3000社を超える障がい者雇用担当者と対話を続けてきました。

  • 障がい者雇用のはじめ方がわからない
  • 業務の切り出し、受け入れ部署の開拓ができない
  • 相談する場所がない
  • 新卒採用と兼業で手が回らない
  • 社長・役員が障がい者雇用にネガティブである etc

障がい者雇用担当者は、役員と現場の狭間で理想と現実のギャップに日々悪戦苦闘しています。教育課程での構造的分断がある日本においては「働く」を通じた共生社会の実現が求められ、旗振り役となる障がい者雇用担当者の積極的な社内活動が必要不可欠です。

私たちは、障がい者雇用担当者を後押しするチームとして障がい者雇用担当者交流会「FLAT(ふらっと)」を形成し、職場での雇用促進に向けて全面的にサポートすることとしました。

今回は、障がい者雇用で働く当事者の困りごとを集める場として開催された第1回「障がい者雇用のあるある座談会」の活動報告となります。

■スピーカー
>中塚翔大(パラちゃんねる オーナー)
多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」を運営し、障がい者雇用を軸に誰もが特性を活かせる、多様な選択肢のある社会を目指し活動している。

>山田小百合(NPO法人Collable 代表理事)
障がいのある人達の社会参画と、障がいの有無を超えた学びと共創の場づくりを手掛け、インクルーシブデザインの普及や、障がいのある学生のキャリア学習支援事業を運営中。

>豆塚エリ(詩人・エッセイスト 兼 介護事業経営者)
16歳で飛び降り自殺を図り頚髄損傷(車いすユーザー)に。現在は「死にたい気持ちが消えるまで」の書籍を手掛け、詩人・エッセイストとして活動する傍ら介護事業の経営も行う。

当日はTwitterスペースに160名を超える方に集まっていただき、様々なコメントを頂きました。当日の音源はYoutubeでも配信しています。

通勤やトイレの悩み、「働く=職場内」の固定観念

働く環境で困ったなということはありますか?

>豆塚エリ
個人的にはそもそも働く体力がなくて非常にキツイということとトイレの時間が通常よりかかるので1時間の休憩時間がタイトになりゆっくりできず逆に疲労がたまるみたいなことがありますね。あと、マネジメント面だと車いすなので私自身が明らかにできないことがある中で従業員の「できない」に対してどう対応してよいのか難しさは感じています。


>山田小百合
トイレの休憩時間や通院など身体の事情によって職場に配慮を求めなければいけない時に制度がなかったり、制度があっても職場の雰囲気によって頼みづらさが出たりと制度と同様に休みや休憩などへの価値観の共有が大切ですよね。


>中塚翔大
制度面は網羅させようとすると対象者が多すぎて柔軟性が担保できないという壁にぶつかりやすくて、だからこそ、特例子会社を作ったという企業もあるよね。日本では「働く=職場内」と捉えがちで通勤やトイレ休憩は働く一部ではなく、自己管理の領域として個人の問題と捉える傾向があるのかも。


>豆塚エリ
就職しようとしていた時にネックだったのは通勤とトイレでした。頚髄損傷でもそれぞれに筋力の差があって自力で車いすから便座に移乗できる人もいれば設備が整っていないと難しい人もいます。私の場合は難しかったので面接で伝えると断られてしまうケースがほとんどでした。私は業務以外で人に頼ることが増え過ぎて足を引っ張ってしまうのが気まずくて、結果的に人間関係で消耗するのが嫌だったので在宅しか選択できませんでした。


>山田小百合
職場でわざわざトイレを優先順位において議論をすることはないし、個人がどう考えるかまで至らず、制度の有無で判断が下されてしまうことが基本ですよね。


>中塚翔大
障がい者雇用は、障がい種別、度合い、スキル、勤務地などマッチングするうえでの掛け算が多いのが特徴だと思う。業務で言えばマニュアルなど可視化することが働きやすさに繋がるとも言われるが、あくまでも業務の話で本当の働きやすさは一人ひとりと話さないと得ることはできないと気がするね。ただ、それだと工数も掛かるし制度やルールを設定して良し悪しを判断して解決した気になってしまうのも分かる気がする。


>豆塚エリ
私の会社は子どもがいる人も多くて、熱が出て迎えにいくとか授業参観とかもあって業務に支障がなければ良いよとなるけど、私がいるから基準が低いというのはあると思う。


>中塚翔大
多様性や受容性が偶発的に高まっている組織は働きやすいはず。だけど、感覚値の話で組織として組み立てが難しいんですよね。

勤続年数と共に配慮事項は変化していく

■リスナーさんのコメント
勤怠管理マニュアルに生理休暇があったけど、取得しようとしたら有給として消化されてしまったことがあります。

>中塚翔大
制度の承認を誰がするかで180度結果が変わってしまうのが実態ですよね。例えば、障がい者雇用の特徴として年齢と共に通常よりも速いスピードで身体に変化が現れることがあります。結果的に入社段階で設定した配慮事項が数年後にさらに追加の配慮を求めざるを得なくなったり、受入れ側に知識がないと我儘な人と評価を下してしまう場面も少なくないはずだよね。


>豆塚エリ
障がい者は就労経験も乏しかったり、自分の体のことも理解できていなかったり、思いがけず不調が出ることがあると思う。私もまさに今腰痛が酷くて、養命酒とビタミン剤で少し楽になってるし、要するに人より老化が早いんですよね。これって健康な人にはわからない話で配慮してるのにまだやらなきゃいけないのと互いに気持ちがしんどくなってしまうよね。


>山田小百合
職場環境の変化があれば配慮も変わるし、それと同じなんですけどね。障がい者雇用って業務以前の課題で悩む場合が多そうですね。


>中塚翔大
障がいがあると通勤の苦しさがあって出社までに疲れてしまう場合も多いと思う。疲労が溜まればミスは増えるのが当然だけど、「働く=職場内」と捉えてしまえばミスが多い人という評価になってしまって本質的な課題解決には繋がらないんですよね。


>山田小百合
逆に少し仕事がこなせてしまうと配慮が忘れ去られて健常者と同じ業務量になることもありますよね。仕事を渡す側も悪気がなかったり。


>豆塚エリ
私自身がそうですが、自己肯定感が低いと頑張っちゃうんですよね、結果的に消耗してしまうのですが。


>山田小百合
日常的に承認欲求が満たされていないと職場に依存して2次障害になることも珍しくないし、メタ認知が高いかどうかは働くうえで大切ですよね。

人事担当者と受け入れ部署との関係性がミスマッチのきっかけに

■リスナーさんのコメント
人権研修として合理的配慮の研修があっても職場に浸透しておらず、電話業務が難しいと伝えているのに人事からは面接時と約束が違うとなってしまった。

>山田小百合
働く経験が少なくて自己理解ができていない場合や合格したいがために面接ではできると伝えてしまい、実際にやってみたらできなかったということはよく聞きますよね。採用した以上、約束と違うという議論では前に進まないし、生産性があることが会社全体として良いわけだし、仕切り直せると良いんだけど。


>中塚翔大
この問題って人事担当者が受け入れ部署にとって都合の良い人材でないと配属できないという問題が隠れている気がするんだよね。「できると思う」が「絶対にできる」に変換されてしまっていたり、人事担当者も受け入れポジションを増やしていかないと法定雇用率が達成できないし、トップに怒られてしまうから人間心理的にズレが生じやすい構造かも。


>山田小百合
確かに障がい者雇用になった途端に現場に受け入れてもらうというコミュニケーションになりますよね。営業出身だったり、現場と人事の意思疎通が取れていると働きながらの調整もスムーズだったり。


>中塚翔大
聞かれてないから伝えていませんっていう場合が多い気がする。安定して働いているケースを見ていると、面接官が配属先の上長であるケースが多いかも。人事、人事部長、部門長など現場から離れた人だと細かな確認ができず齟齬が生まれやすいよね。現場も不安感を感じてレッテルも貼りやすくなるし。


障がい者雇用代行ビジネスと言われる農園での働き方

■リスナーさんのコメント
知的障がいがあると誰かに困ったことを伝えることが難しいそうです。

>山田小百合
知的障がいの雇用環境って現状はどうなってるんでしょうね?


>中塚翔大
障がい度合いで異なるというのが結論だけど、多くはA型、B型、特例子会社、あとは農園になるんじゃないかな。


>山田小百合
農園は障がい者雇用代行ビジネスって最近話題になっていて、障がい者雇用に自社内で積極的になれず罰金(納付金)も払いたくない企業に農園をレンタルして、そこで障害者雇用を促すというモデルで賛否両論あるんですよね。農園の管理者は専門的知識もあるし、困りごとを伝えやすかったり、働きやすい環境は整備できるんだけどね、倫理観の話も絡みそうですよね。


>豆塚エリ
特別支援学級みたいなイメージなんですかね、根本の問題は何も解決できていないような気がしますけど。障がい者雇用の目的とズレてる気がしますね。


>中塚翔大
個人的には利用する企業側と売り込む業者側の意識の問題な気がしてるんですよね。例えば、B型事業所だと工賃だけど障がい者雇用なら最低賃金だし、大手企業で安定性も保証されるし、全てが悪いというモデルではないと思うんだけど、短絡的に雇用しておけば問題ないよねとなっているのが良くないよね。その後の職種や配置転換とかキャリアまでの広がりを視野に入れて次の選択肢を考えているかどうかが大切だと思う。

>山田小百合
法定雇用率の限界という声もありますが、どうなんでしょう?


>中塚翔大
障がいのある人口が約960万人と言われる中で障がい者雇用で働く人が約60万人弱なので、まだまだ先の話じゃないかな。一歩を踏み出す起爆剤としては一定の役割を果たしているし、議論が必要なのは既に障がい者雇用に取り組む企業が評価や昇進など含めて本質的な雇用機会の提供への思考変容をどう起こすかという点だよね。

まとめ

初となるTwitterスペースを活用した座談会は、さまざまな視点から議論が交わされました。

現在、ハローワークに掲載されている障がい者雇用求人の多くは一般事務、軽作業、製造、清掃などスキル、経験、資格を要さない職種となっています。それゆえに障がい者雇用に取り組む企業の議論として業務上のマニュアルやルールの可視化、フォロー体制、職域の拡大などに焦点が当たりがちですが、働く当事者の悩みの多くは通勤やトイレ、通院など業務に安定的に従事するがための準備段階に潜んでいるのかもしれません。

次回は、今回の議論をもとにトークテーマをカテゴリー分けしてさらに議論を深めていきます。

Twitterのアンケート結果より、働くうえで一番困りごとを抱える場面とされる「上司や職場との人間関係(理解・配慮)」について開催をしますので、ぜひ興味のある方は気軽にご参加ください。

多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」は、2020年より「知る」を広げるラジオ・コラムのメディア活動に加え、「自由な出会い」を創出する障がい者雇用特化型の求人サイトを運営しています。

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